ズコズコズコ。と低音のベースかドラムかわからない音がして宇多田ヒカルのAutomaticは始まった。It's automatic! そばにいるだけで… ♪
はい。ただ今お聞きいただいたのは宇多田ヒカルさん。オートマティックでした…。とカーラジオが私に語りかける。随分と昔のことだが、私は疲れ切った頭を持て余し国道16号を当てもなく東へと車を走らせていた。
この宇多田さん。実は有名な演歌歌手のお嬢さんなんですよ。
へー、そうなんですかあ…。お母さん、誰かわかりますかあ?うーん。誰かなあ?と番組の司会者が取り止めのない会話をしている。
へー、あの藤圭子さんのお嬢さんですか。やはり蛙の子は蛙。声質と言い歌い方といい…。
最近、お母さんの圭子さんの話題はあまり聞かれませんが、芸能活動はまだされているのですか?はい。されているようですよ。演歌ばかりじゃなくポップ系のジャンルにも挑戦したいと言われているようですよ。そうですか、お嬢さんがレッスンしているかもしれませんねえ。そうかもしれませんねえ…。
それから半年ほど経ち、その日も私は車を走らせていた。何気なくラジオをつけると♪最後の~♪と歌う声が聞こえた。おー。娘の七光りじゃあないが、圭子が再デビューだ。♪立ちどまるう…。圭子が唄っている。私は急いでラジオのスイッチを切った。圭子の歌をこんな音質の悪いラジオの音で聞きたくなかったのだ。これはレコード店へ行かねば…。それとステレオも買い換えよう。久しぶりに心が高揚する。若い頃の圭子が私の音楽シーンに帰ってくる。ただそれだけでうれしかった。
つづく
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