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12月21日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
信用は得難く失いやすい
われわれが何か事を成していく場合、信用というものはきわめて大事である。いわば無形の力、無形の富と言うことができよう。
けれどもそれは一朝一夕で得られるものではない。長年にわたるあやまりのない、誠実な行ないの積み重ねがあってはじめて、しだいしだいに養われていくものであろう。
しかしそうして得られた信用も失われるときは早いものである。昔であれば、少々のあやまちがあっても、過去に培われた信用によって、ただちに信用の失墜とはならなかったかも知れない。しかしちよっとした失敗でも致命的になりかねないのが、情報が一瞬にして世界のすみずみまで届く今日という時代である。
【コラム】筆洗
2013年12月20日東京新聞TOKYOWeb
▼香りのプロともなると、天然と人工合成の香料を、二千五百種ほどもかぎ分け、記憶しているという
▼そういう鼻の持ち主だから、こんなことも起こる。通勤電車でよく会う知人の息に妙な臭いが潜んでいるのに気づく。一種の腐敗臭だ。気になったまま別れ、二度と会うことはなかった。胃がんで間もなく亡くなった。練達の嗅覚は、死期をもかぎ分けてしまったのだ
▼猪瀬直樹さんのインタビュー集『日本凡人伝』に出てくる化粧品会社の調香師の体験談だ。その道のプロの技の妙を伝える本は少なくない。だが、この本ほど、語り手の息遣い、その人に染み込んだ時代の空気までをも活写している本は、そうない
▼猪瀬さんの作家としての嗅覚は脱帽ものだ。『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』…。近現代史の急所をかぎ分け、鮮やかに切り取る手腕で読者を魅了してきた
▼政治をめぐるカネの腐敗臭は、それほど優れた嗅覚をも狂わせてしまうのか。「徳洲会」グループから五千万円を受け取った疑惑で、猪瀬さんが都知事の座を降りた
▼すべて疑うのが、作家。自分自身を疑うだけでは、十分ではない。権力機構までをも抱え込みつつ、自分自身を疑えば、感性が研ぎ澄まされる-とは、猪瀬さんが『東京の副知事になってみたら』に記した言葉。作家猪瀬直樹はいま、政治家猪瀬直樹をどう見ているのだろう。
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