「かおるさん、お世話になりました。お別れの時が来た」
啓二はかおるを見てこう切り出した。
「ひろ子さんを選ぶの」
「いいや・・・・」
「じゃあ、なぜ私と別れるというの」
「記憶が全くないぼくは生きている価値のない男だ」
「何言ってるの。あなたのせいでそうなったんじゃないでしょう。あの事故が」
こう言うとかおるは激しく泣き出した。
そして、
「死なないで、辛い時は私があなたのそばにいてあげる」
啓二も涙をこぼしている。
「記憶が戻った時に二人で乾杯しよう」
かおるは啓二の顔を見た。
啓二は遠くを見たままだ。
*この物語は、中井貴一、薬師丸ひろ子、杉田かおるをイメージして描いています。