■「日曜バザール」と名付けられたバザールの村
カシュガル滞在2日目。
この日は日曜日。シルクロードの日曜日といえば「日曜バザール」。
オアシスの民が集まり、露天が開かれ、様々な物品が並べられ、買い物客で賑わう。
この日曜バザールを散策するのがシルクロードの旅一番の醍醐味だ。
カシュガル市内にも週末バザールと呼ばれるバザールエリアがあって、ここも日曜日にはかなりの盛り上がりを見せるのだが、
4年前にも訪れた場所だったので、ちょっと違う場所に行きたいと考えていた。
そこでネットで調べて見つけたのが、カシュガル郊外の小さな村のバザール。
その村の名前は「イェキシェンベ・バザール」。
「イェキシェンベ」とはウイグル語で「日曜日」という意味。
村の名前がそのまま「日曜バザール」と名付けられているのだ。
まさに日曜バザールの本場とも言える場所なのではないか。
これは行くしかない!
と、名前だけに惹かれて行ってみることにしたのだが、いかんせん情報が無い。
観光地でもなく、中国人も行かないような田舎村のバザールの情報はネット上でも非常に限られていた。
もちろんガイドブックなどには載っていない。
ネットで収集できたのは、この3つの情報だけだった。
1.イェキシェンベ・バザールへはカシュガル南郊のカシュガル南バスターミナルからバスに乗って行く。
2.カシュガルからバスに乗り1時間ほどで着くが、途中下車しなければならない。(←難易度高い)
3.イェキシェンベ・バザールの人々はめっちゃ陽気。(←これにとても惹かれた)
非常に少ない情報しか無いけども、まあなんとかなるだろうとお気楽な感じで、とりあえずイェキシェンベ・バザールへ行ってみることにした。
■イェキシェンベ・バザールへの道のり
まず、上記ネット情報1.の情報から、カシュガル市中心部から解放南路をひたすら南へ行った町の郊外に位置している
カシュガル南バスターミナルへ向かった。
中国のそれなりに大きな街には、バスターミナルがいくつかあって、それぞれのバスターミナルから出発するバスの行き先が異なるため、
バスターミナルを間違えると大変なことになる。
しかもそれぞれのバスターミナルはかなり離れていてすぐに移動はできない。
カシュガルには、カシュガル地区バスターミナル、国際バスターミナル、そして目指すカシュガル南バスターミナルの3ヶ所がある。
なので、イェキシェンベ・バザール行きバスの出ているバスターミナルがネットで事前に分かっただけでもかなり助かった。
とりあえず解放南路を南へ向かって走る市バスに乗って、バスターミナル方向へ向かう。
が、下車場所を間違えてかなり手前で降りてしまった。。
仕方なくひたすら歩く。カシュガルも日差しが暑い。。汗だくになる。かなり歩いてやっとのことでバスターミナルに到着。
カシュガル南バスターミナルは非常に小さく、カシュガル近郊の町や村へ行くローカルバスのターミナルになっているようだ。
バスターミナルの建物に入って、イェキシェンベ・バザール行きのバスが出ているかどうか壁に貼り出されている行き先表を見てみる。
しかし、イェキシェンベ・バザールらしき行き先の表示は無い。
そもそも、ウイグル語は読めないし、頼みの中国語も「イェキシェンベ・バザール」を漢字でどう書くのかも知らないのだが。。
とりあえず、チケットを売っている窓口に行き、ダメもとでウイグル語っぽく「イェキシェンベ・バザール!」と言ってみた。
すると、窓口のウイグル人女性は「7元!」と言ってきたのでとりあえずお金を出すと、バスのチケットが投げ返ってきた。
チケットには、ウイグル語表記の横に漢字で「下巴扎」と書いてある。
「巴扎」は分かる。バザールの中国語表記だ。
でも「下」って何だ??中国語読みは「Xia(シァ)」だけど、「イェキシェンベ」という発音に被っている感じは無い。。
ちゃんと通じてたのかどうなのか分からないまま、とりあえずバスがたくさん停車している場所へ行き、
「下巴扎」行きのバスを探した。
が、バスには不親切なことに行き先などまったく書かれていない。どのバスかまったく分からない。
でもここでチケットにバスの車番らしきものが書いてあったので、それをもとにバスを探してみると、その車番のバスがあった。
バスの運転手に、「イェキシェンベ・バザール?」と聞くと、うなずいて「そうだ!」的なウイグル語を言っている。
なんとかイェキシェンベ・バザール行きのバスに乗ることができたようだ。
バスはマイクロバスぐらいの大きさで、何人かのウイグル人たちが乗っていた。
しばらく待って乗客が程よく集まってきたところでバスは出発。
バスはターミナルの出口を出てノロノロ運転で進む。
運転手は窓の外に向かって「ヨプルカ!ヨプルカ!」と叫んで客を集めていた。
「ヨプルカ」って何だ?と暇つぶしにiPhoneを使ってgoogleマップで調べてみると、ヨプルカという町がカシュガルの南東にあった。
ここでなんとなく理解した。
このバスはヨプルカという町行きのバスなのだ。
ネット情報2.によるとイェキシェンベ・バザールはバスを途中下車するので、このバスの通り道にあるということになる。
ある程度乗客を集めたバスはスピードを上げ、カシュガルの大通りを南へ進んでいった。
その後、疏勒などのカシュガル郊外の小さな町にいくつか寄って客を集めた後、バスは大通りから外れて田舎道を進んでいった。
ポプラ並木が延々続く一本道。
路肩にロバ車が行き交う、のどかな農村の景色が続く。
ウイグル人だらけのバスの乗客で、一人モンゴロイド顔の僕はバスの中でかなり浮いていた。
僕がカメラで外の景色の写真を撮っていたら、「何を撮っているんだ?」と隣のウイグル人のおじさんが声をかけてきた。
ウイグル語まじりの中国語で半分何言ってるか分からなかったけど、僕が「イェキシェンベ・バザールに行く」と言うと、
おじさんは「イェキシェンベ・バザールに着いたら俺が教えてやる!」と言ってくれ、親切なおじさんだった。
カシュガルを出発して1時間が過ぎ、通りに多くの人やロバ車や羊たちで溢れる場所でバスは停車した。
ボーっと外の景色を眺めていたら、ウイグル人のおじさんが急に「おっ、イェキシェンベ・バザールに着いたぞ!早く降りな!」と言った。
バスを降りる心の準備をまったくしていなかったので、ふいに言われて言われるがまま急いでバスを降りた。
バスを降りて、「あれ、ここで本当に合ってるのか??」と一瞬不安になったが、それも杞憂に終わった。
バスを降りた目の前には、どーんと看板が立っていた。
間違いなくイェキシェンベ・バザールに着いたのだ。
バザールのシンボルとなっているモスクの門。
■イェキシェンベ・バザールへ突入
来たことも無い場所でのバスを途中下車するという難関をクリアして、改めて周囲を歩いて観察してみた。
イェキシェンベ・バザールはカシュガルと違い、田舎ののどかな雰囲気が漂っていたが、それでもバザール特有の熱気を感じる。
バスを降りた通りから一本別の道に入った奥に、ひときわ人がたくさん集まっている場所があり、まずはそこへ行ってみることに。
ワイワイ・ガヤガヤすごい人が集まっている。
そして人間以上に羊がたくさんいる。
どうやらここは、羊が売買される、ドナドナ・エリアだった。
ドナドナされるのを待つ羊。
言う事聞かない羊たちに手を焼く兄ちゃん。
羊の力は強く、数の上でも1対3では勝てない。。この兄ちゃんはしばらく羊たちと格闘してた。
こちらはキレイに毛が刈られた羊たち。お尻の部分だけ刈り残されてる。
写真を撮っていると、一人のおじさん登場。
カメラを指差し自分を指差し、ウイグル語で「俺を撮れ撮れ」と言っている。たぶん。
そしてこの一枚。
それを見ていた少年が「撮って撮って」とせかす。
その隣で怒鳴り声を上げて真剣に売買の駆け引きをしている人たち。
こちらのように和気あいあい楽しそうにしている人たちもいる。
おれの自慢の羊たち。
きれいに並べられた羊たち。お尻が可愛い。
またまたカメラを指差して「撮って!」アピールする少年登場。
嫌がる羊を無理矢理ねじ伏せて羊さんとツーショット写真。
ドナドナ・エリアは予想以上の盛り上がり。
というか、イェキシェンベ・バザールの人たちは写真好きだ。正確に言うと写真に写るのが好き。
次々と「俺の写真を撮ってくれ!」と声をかけてくる。
撮影をした後にカメラの液晶画面で自分の写った写真を見せると、満面の笑み。
言葉は通じないけど、写真で会話が出来るのだ。
デジタルカメラに感謝。
でも残念なことに撮った写真をその場で現像できないのであげることが出来ない。
チェキでも持っていけばもっと盛り上がったかもしれない。
ひと通りドナドナ・エリアを堪能したので、次の場所に行くことに。
人々が歩いていく方向についていってみる。
その先にあったのが、これぞバザールといった雰囲気の露店が並ぶエリアだ。
至る所からウイグル語でお客を呼び込む声や、お店と値段交渉する活気ある声が聞こえてくる。
カシュガルやトルファンなどの都会のバザールとはどこか違う。
田舎くさい感じが古き良きシルクロードのバザールが残っているという感じだ。
食べ物もおいしそう。
そしてみんな陽気で人懐っこい。カメラを向けると良い笑顔。
上記3.のネット情報は正しかった。
イェキシェンベ・バザールの人たちは明るく陽気で、その上写真好きという、カメラを持って旅している僕としては
素晴らしく理想的な良い場所に来ることができたようだ。
少年たちはカメラを見つけると、サングラスをかけてポーズ。
ウイグルの町角には必ずテレビが置いてあって、上映会が始まる。
香港?のコミカル・カンフー映画を大人から子どもまでみんなで大笑いしながら観ている。
めっちゃウケてる少年。
ウイグル定番のキモ怖い歯医者の看板。バザールでも青空歯医者が営業してる。
こちらは青空髭剃り。
お菓子売りの女の子に「私を撮って!」と声をかけれらる。
カメラを向けるとすまし顔。
さらに奥へと進んでいく。
歩いているとイケメン兄ちゃんに声をかけられた。カメラを向けるとちょっと恥ずかしがった表情。
液晶画面を見せて、写りに納得いかなかったのか、「もう一枚とってくれ!」と帽子を被りなおして顔をキメる。
隣でイケメン兄ちゃんのお母さんがスイカを売っていた。
このお母さん写真をイケメン兄ちゃんに見せるとなぜか大爆笑。
お母さん「なにが可笑しいの!」と怒る。
鮮やかな色とりどりの野菜が並んでいた。
砂漠のイメージが強いシルクロードだが、一方でオアシスの豊富な水資源によってたくさんの野菜や果物が作られている。
野菜売りのさわやか少年も良い笑顔。
さわやか少年のお母さん。
なんだか真剣にお話し中。
ちょっと雰囲気が変わって、職人さん向けの工具などの品物を扱っているエリアにたどり着いた。
青空の下、鍛冶屋から「カン!カン!」といい音が聞こえてくる。
巻尺を伸ばして「どーだ」としたり顔のオヤジ。
こちらは手作りホウキを持ち上げ笑顔。
オヤジ3人組。
刃物を削っている職人さん。
青空散髪屋さん。というか剃っている。
ウイグル人の男性老人たちは見事に皆坊主にしている。
しかも常にウイグル帽を被っているので、頭のてっぺんの帽子を被っている部分だけ肌が白い。
そして立派な髭を蓄えているのも特徴だ。
ドナドナ・エリアで会った少年が再び登場。またまた羊と一緒に。
相変わらずみんないい笑顔だ。
イェキシェンベ・バザールをひと通りぐるっと回って、バスを降りた辺りにまた戻ってきた。
数時間滞在して写真もいっぱい撮ったので、日が暮れる前にカシュガル市内へ戻ることにした。
■カシュガルで一番高級なウイグル料理を食べる
来た時にバスを降りた「イェキシェンベ・バザール」の看板が立っている場所辺りで、カシュガル行きバスが来るのを気長に待つ。
30分ほど待って、一台のバスがやって来た。
バスから「カシュガル!カシュガル!」と呼び込みをする声が聞こえてきた。
すかさずバスに乗り込んだ。
バスはほぼ満員で、空いてる座席は運転手の隣の一番前の席だけだった。
運良く眺めの良い席に座ることが出来て、しばらくポプラ並木が続く美しい田舎の景色を堪能した。
ウイグル人の運ちゃんは、鼻歌を歌いながら陽気に運転。
イェキシェンベ・バザールを出発して約1時間後、カシュガル市内に戻ってきた。
バスはなぜかバスターミナルへ向かわず、市内の中心部へとどんどん進んでいく。
そしてさらになぜか町中の団地の一角へ入って行きそこに停車。乗客はみんな降りていった。
よく分からない場所で降ろされて戸惑うが、そこからしばらく歩くと週末バザールと呼ばれるカシュガルのバザールエリアに着いた。
せっかくなので、ついでにカシュガルの日曜バザールも見ていくことにした。
ものすごい人とバイクと車の量。
カシュガルの日曜バザールは、イェキシェンベ・バザールとは比べ物にならないくらいの規模で、人もめちゃくちゃ多い。
人の多さに疲れてしまって、少し覗いただけだったけど帰ることにした。
バザールエリアから見た、カシュガル中心部。
取り壊されつつある土色のウイグル旧市街(老城)が見える。その奥には新しく建てられた高層ビルが。
今や世界経済を牽引するぐらいの発展を成し遂げた中国。
その発展の波は、かつては中国人(漢族)も近づかなかったシルクロードの辺境の町にも確実に押し寄せいている。
エイティガール寺院を中心としたカシュガルの中心部は、ウイグル旧市街「老城」をはじめ、古くからウイグル人たちの住むエリアだが、
最近、それを取り囲むように移住してきた漢族たちが新市街を形成している。
その漢族たちの勢いは旧市街の古い町並みを押しつぶし、カシュガルの町の姿はここ数年で大幅に変わった。
前日に訪れた老城でも、古い建物はことごとく壊され新しい建物への建て替え工事が至る所で行われていた。
基本的に老城の建物は、ウイグル伝統様式の建物に建て替えられるようだが、一部では住民のウイグル人たちが追い出され、
ウイグル人とまったく関係の無い無意味な中華風の公園が出来てしまった場所もある。
文化を壊し、漢族との混血・同化を進めて民族アイデンティティを失くすことで独立志向を失わせ、その民族を支配する方法は中国の常套手段。
最近、中国政府はそれら批判を受けてか少数民族保護政策を打ち出して、様々な少数民族優遇政策を行っている。
逆にそれが漢族たちの不公平感を高め、圧倒的マジョリティの漢族(人口の94%を占める)とマイノリティの少数民族との軋轢を
さらに高めることとなっている。
新疆ウイグル自治区は、かつては人口のほとんどがウイグル人だったが、現在は人口に占める割合は45%ほどに落ちている。
逆に漢族は人口の40%を占めるほど急激に増えており、近いうちに人口比率が逆転すると言われている。
中国からの独立運動も起きているウイグル人だが、残念ながら彼らの故郷であるこの地でも、漢族に対してマイノリティになってしまう日も近い。
そうなると、ここカシュガルの町も今よりもっと変わっていくことになるだろう。
カシュガルの夕日。
さて、日も沈んできて夕食を食べに行くことに。
翌日はカシュガルを離れてタシュクルガンへ向かう予定だ。
カシュガル最後の夜は豪華にしようと思い、カシュガルで一番高級だと言われている「ORDA」というウイグル料理レストランへ行くことに。
羊肉串、ラグメンなどウイグル料理を食べて30元(400円弱)。
高級と言われているが値段的には意外と安い。その辺の安食堂と比べると高いのだけど。
まあ、味は普通かな。。
コストパフォーマンス的には安食堂のウイグル料理の方がいいかも。
ただ、羊肉はその辺の安食堂よりいい肉を使っている気がした。羊肉串の肉もデカくてボリュームがあった。
高級なだけあって、ウイグル民族音楽の生演奏も始まる。
ウイグル民族音楽を聴きながらウイグル料理を食べて、シルクロードの雰囲気をしっかり堪能。
次の日は、カシュガルよりももっと中国の果てのパミール高原に位置し、パキスタン国境にも近いタシュクルガンという町を目指す。
今回の旅もいよいよ山場を迎えてきた。
(つづく)
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