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2005-04-23 22:43:04 | 社会
携帯向けTV、利用者特定困難でNHK受信料先送り (読売新聞) - goo ニュース


NHKは、昨年末から制作費着服だの不正経理だのカラ出張だのと次々に不祥事が発覚し、今年になってからはそれらの処分に関するゴタゴタがあって会長も辞任して・・と随分マスコミでも取り上げられていた。

でもって、私はと言えば、NHKは地震があった時以外まず見ないので、一連の細かい流れは全く知らなかったし、受信料不払いが100万件突破!ってニュースも「へ~」だった。
ただまぁ、ホリエモンの一件もあって「放送」自体が問われているタイミングでもあるので、一応NHKについてもちょっと触れておこうかなと。


まず、大前提としてNHKという放送局の確認から。
NHKは、国営放送ではなく「公共」放送(*注1)であり、全体の約0.3%の国際放送と選挙放送の費用を交付金として政府から与えられる以外は、広告を禁止されている(*注2)ことにより受信料によって業務費用をまかなっている放送局である。

そして、その受信料については、放送法第32条(*注3)により、「TVを設置した人は受信契約をしなければならない」。(TVを設置した人て、今の時代家庭持ちならTV複数あるの普通やんけ、ってツッコミに関しては、日本放送協会受信規約(*注4)がある。)

た・だ・し、である。
ダブルスタンダードとでもいうか、画竜点睛を欠くとでもいうか、ちょっと懐かしい明石家さんまの「意味なぁいじゃ~ん」状態とでもいうか。

条文をよく"見る"と、【・・受信についての"契約"をしなければならない。】とある。支払い義務とは書いてない。

契約しちゃったら規約にも従う義務が生じるし払わなくてはいけないが、そもそも民法の解釈からすれば「契約」は売る側と買う側の「両者の合意」に基づくものである。
その契約の条件すら細かいこと書いてないんだから、「そんな契約呑めません」って主張も十分成り立つし、それ以前に契約すべしと言っておいて、「契約しないこと(違反)」に対する罰則規定もない。

「何じゃそりゃ」としか言いようがない。これだけ前提が穴だらけの割には、NHKの集金人は、ややもすると新団(新聞拡張団=新聞勧誘員の略)より強気だったりするし。


さて、次に考えるべきは、NHKという公共放送自体の存在意義についてである。
「国営≠公共」であるにしても、公共という以上は「大多数の国民」を相手にしている。相手にしていて、そういう番組作りをし、流している。

とはいえ、現在はNHKが放送開始した1953年ではない。個人・一般庶民が視聴できる「映像」など腐るほどある。NHK、民法、BS、CS、ビデオ、DVD、PV・・・etc., エンエン映画やアニメのDVDだけ見続けることだって可能な時代であって、「大多数」はとっくに把握しきれない状態である。
(放送と、商品としての映像作品は一緒にしてはいけないかもしれないが、衛星放送は「売って」いるんだし、視聴者の立場からすればいずれも恣意的に「選択可能」なんだからこのテーマでは同じであると見做してよいだろう)


確かに報道とかジャーナリズムという視点に立てば、広告を財源とする民放は、広告収入が視聴率に左右されるから売れる番組一辺倒になりがちだったり、広告主への配慮も縛りとなったりってことで「不偏不党や言論の自由を保つ」のが難しい、だから公共放送は必要なんだという論はあろう。

でもねぇ。

NHKがどの程度「不偏不党や言論の自由を保っ」て番組流しているかは見てない故にちっとも判断できないけれども、「不偏」なんてのはハナっから机上の空論に過ぎない。

誰だって何らかの世界観価値観持って生きてるんだし、報道する「事実」にしたって、ある一つの出来事について「関係するありとあらゆる場所と一部始終全て」をそのまま流せることなんてせいぜい特定のイベントやスポーツぐらいだ。
当たり前だが、事件や事故の映像なんてのは殆ど「終わった後」であり(だからこそたまたまビデオカメラ持ってる人が目撃者で現場にいた場合は『カメラは見た!衝撃の決定的瞬間』なんて特番が組める訳で)、仮に偶さか事件の最中・事後を撮れていたとしても放送時間が物理的に限られている以上は「編集」しなければいけない。で、「編集=取捨選択」する以上は必ずその人間の価値判断は入らざるを得ないのだ。(ついでに言えば、イラク戦争では思い切り政府によって報道規制かけられたんだから、こういう暴挙があれば自由も偏りもクソもない)

妙なバイアスがかかり易い民放のスタイルにも問題はあるかもしれないが、「偏り」は避けられない命題なんだから、「偏らない」を意識し過ぎると、単に「八方美人の無味乾燥」に陥り易いのも間違いないところだろう。NHKのニュースのセットとかアナウンサーの服装がそれを証明してるってもんである。

視聴者の側からしても、そんな「偏り」は常識的に理解していることだから、変に中庸を目指されるよりは立場をはっきりと示してくれた方が自分の中で修正し易いんだし。


とまれ、NHKが今後マトモにやっていきたいんなら、PPVをさっさと導入した方がよい、と私は思う。災害放送とか手話ニュース・文字放送の部分だけは国から補助金もらって、後は全部PPVにして、分野ごとの集金の偏り(やっぱり娯楽番組が一番集客するんなら)は内部で調整すりゃいいだけの話だ。金持ってない人と持ってる人で「情報格差」が出るってんなら、最初の金額を少し高めに設定しておいて、持ってない人は当人の申告で安くできるようにすればいい。今だって一部の事情がある人達はそうやって受信料免除されてるんだから。

できない話じゃぁない。大体、「これまで見てない&今後見る気もないのに契約させられる(或いはそれでもう幾らかでも金払ってしまった)」不公平とか理不尽自体何にも解決してないんだからさ。冒頭のニュースの「携帯向けTV」のことだって、利用者特定困難などと愚痴言ってる暇があんなら、各携帯会社と連携して、各携帯会社がパケ代のような形の利用料・視聴料として代わりに徴収して手数料だけ抜いて残りもらうようなシステムとか考えろよって話でして。



*注:
(1)
放送法
(目的)第7条 協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内放送を行い又は当該放送番組を委託して放送させるとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び委託協会国際放送業務を行うことを目的とする。
(2)
同放送法
(広告放送等の禁止)第46条 協会は、他人の営業に関する広告の放送をしてはならない。2 前項の規定は、放送番組編集上必要であつて、且つ、他人の営業に関する広告のためにするものでないと認められる場合において、著作者又は営業者の氏名又は名称等を放送することを妨げるものではない。3 前2項の規定は、協会が委託国内放送業務又は委託協会国際放送業務を行う場合に準用する。この場合において、第1項中「放送」とあるのは「放送の委託」と、前項中「名称等を放送する」とあるのは「名称等の放送を委託して行わせる」と読み替えるものとする。
(3)
同放送法
(受信契約及び受信料)第32条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
(4)
日本放送協会受信規約
(放送受信契約の単位)第2条 放送受信契約は,世帯ごとに行なうものとする。ただし,同一の世帯に属する2以上の住居に設置する受信機については,その受信機を設置する住居ごととする。
2)事業所等住居以外の場所に設置する受信機についての放送受信契約は,前項本文の規定にかかわらず,受信機の設置場所ごとに行なうものとする。
3)第1項に規定する世帯とは,住居および生計をともにする者の集まりまたは独立して住居もしくは生計を維持する単身者をいい,世帯構成員の自家用自動車等営業用以外の移動体については住居の一部とみなす。
4)第2項に規定する受信機の設置場所の単位は,部屋,自動車またはこれらに準ずるものの単位による。
5)同一の世帯に属する1の住居または住居以外の同一の場所に2以上の受信機が設置される場合においては,その数にかかわらず,1の放送受信契約とする。この場合において,種類の異なる2以上のテレビジョン受信機を設置した者は,次の順位で適用した種別の放送受信契約を締結するものとする。(1)衛星カラー契約(2)衛星普通契約(3)カラー契約(4)特別契約