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日々触れる情報から様々なことを考え、その共有・一般化を図る

【実験ショートショート第1回】(修正済み) QED(証明終わり)

2005-04-25 23:12:18 | ショートショート
≪前置き≫
「マジメ」は社会に生きる人間にとって基本属性として求められるものだろうが、度が過ぎると害になることもままある。何故なら、「マジメ」は単なる方向性だからで、向いている方向や「マジメ」である・になる対象そのものを誤ればとんでもないところに行ってしまうからだ。
加えて、「マジメ」は線の性質として「一直線」でもあるから、傍目から見れば分かり易いが当人の中では判断停止状態に陥っていることもよくある。心電図なぞが一直線になったら一大事、「おまえは、もう死んでいる」-「ひでぶ!」ってなもんである。(余計だ)

まぁともかく、私は常にフレキシブルな、柔らかいアタマを保っていたいので、笑いは積極的に貪欲に摂取しガス抜きをしている。
そんな訳で、表現手段としては甚だ不利で適さない(需要もないかもしれん)文章という分野で笑いに挑戦してみたいという意欲は前々から私は持っていたゆえ、折角今ブログを持っているんだからやってやろうじゃねぇかと思ったのである。もっとも、ネットの世界ではやってる人結構いるようですけどね。

とりあえず、実験としてはせいぜい中学生の理科レベル程度であろうので、ロト6やtotoでも買う気分でテキトーに読んで頂ければ幸いである。(万一クスッとでも笑ってもらえたのなら、一言コメント投稿でも宣伝でもじゃんじゃんして欲しいですが(笑))

で、タイトルは一応ショートショートにしてますが、ショートショートにしては若干長めの場合(今回もそうですが)も多くなると思うのでご了承下さい。


では早速。


仕事帰りに軽く一杯ひっかけ、帰宅途中の電車の中で酔いを醒ましながらぼうっとしていると、ふと目の端に向かいの右手の座席に座っている一人の若い女性の姿が留まった。

フリルの付いたキャミソール1枚にタイトデニムのスカートにサンダルと夏とはいえラフな恰好、髪は明るいイエローのようで、レイヤーボブ・・と言うのだろうか、はっきりと分かり易い立体的な髪形で毛先もキツめに巻いている。ちょっとOLには・・見えない。
顔の造作は悪くはないが、目は小さいし全体的にのっぺりした印象で好みからはかなり遠い。でもスタイルは、すらりと伸びた小麦色の足、細い二の腕などこちらは好みに合致する点が多い。
(55点ってことかな)
日本女性学会の面々が聞いたら卒倒しそうな心のつぶやきは、罪悪感はあっても男の性である。別に痴漢強姦願望がある訳でも女性蔑視思想を持っている訳でもない。浮気の経験もない。と頭の片隅では毎度の言い訳をやっぱり思い出していたりもする。


実は目の端に留まったのは、彼女の今となっては珍しくもない外見ではなく、彼女が化粧をしていたせいであった。女性の化粧も既に決して車内で珍しい光景ではないが、気にならないと言えば嘘になる。

彼女は化粧を始めたばかりのようで、明らかにスッピンだ。しかもファンデーションのパフを持つ手がやけに忙しない。

(彼氏との待ち合わせに遅刻しそうなのかな)
ぼんやりそんなことを考えていると右わき腹に振動を感じた。電話らしい。携帯を見ると、大学時代からの腐れ縁の悪友からだ。

「悪ぃ、今電車なんだよ」
そう言って直ちに切ろうとしたら、慌てた口調で止められた。
「ちょっと待てってすぐ済むから。いや、今**にいるんだけどな、時間ぽっかり空いちゃってさぁ、先月おまえと一緒に新規で行ったキャバ、あっただろ?おまえケッコーいい感じになってて気に入ったって言ってたコもいたから、良けりゃ今から行かねぇ?」
どうせ今夜は大した予定はないし、ふむ・・・悪くない。
「分かった。じゃあ次で降りてタクシー拾うから、**にいるなら、あそこの大通りの交差点で待っててくれよ・・多分8時くらいだな」
左手で時計を確認しつつ、小声で素早く返し電話を切った。


「すまんすまん、待ったか?」
待ち合わせ場所に着いたのは8時12分だった。
「いや、せいぜい3,4分てとこだな。ともかく早く行こうや」
悪友はそう言いながらタクシーに乗り込んで来た。
「別にそんなに急ぐこたぁないだろう」
「いやいや、すぐ行くってメール入れちまったからな」
・・かと言って運転手に飛ばしてと言う程でもない。
「あぁ、そういやおまえこの前、ソッコーで一人メアドゲットしてたっけ?」
「そうそう、メール自体はたまにしかしてなかったんだけど、先週思い切り営業されてなぁ」
「なんだ、そーゆーことか。先に言えよ」
「おまえ電車で言う暇なかったじゃん。ていうか、おまえがこの前気に入ったって言ってたコ、何てったっけ?」
「ん~~、、確かハルカ、だったよーな」
そんなやくたいもない会話を交わし、メーターが3,000円を超えたあたりでタクシーはお目当ての店に到着した。


「ハルカさん、お願いします」
そうボーイに言って席に付くと、運良く空いていたのか、程なくハルカがやってきた。
「いらっしゃ~い、お久しぶり~」
のっけの挨拶から男心をくすぐる台詞。それにしても一度来ただけで覚えているとは、仕事とはいえかなりの記憶力だし、益々タイプかもしれぬ。
そう思いハルカの顔を今日初めて見つめる。クリっとした目、高くはないが可愛らしい小鼻、整った唇・・・笑顔もいい。顔も結構好みだし、スタイルも文句ないし、もう90点越えそうだからこりゃ今日ダメもとでも口説いてみようか・・
「この前から、どうして今まで来てくれなかったんですかぁ?」
ハルカがそう言ってしなを作って髪を撫でる。髪型もお水系だろうけど悪くは・・・


ん??
なんでこの髪型に見覚えがあるんだろう?彼女いない歴は1年過ぎてしまったしそもそも元カノはそんな髪型してなかったし職場には受付のコだってこんな髪型はいない筈だし・・・あれ!?
「そういえば、今日は大変だったんですよぉ。寝坊しちゃってぇ、もう思いっきり遅刻だったから、電車で化粧済ませたんですよぉ。」


ハルカに(・・・チェンジ)なんて言える筈もなく、自分の目をチェンジする必要性をむざむざと感じさせられる破目に陥ったのだった。

決して、断じて、55点の天罰ではない。


・・いや、ハルカさん、ごめんなさい。そういえば、元カノも化粧で20点くらいは稼いでたしな、君のせいじゃないよ。(いい加減弁えろって)


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