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狗肉でも○○ブランドならいいのかもしれない

2005-04-15 22:15:57 | 社会
北朝鮮産アサリ、5業者転々「国産」に…適正表示要請 (読売新聞) - goo ニュース


前日のブログと同種のニュースではあるが。(相変わらず、道徳とか倫理とか偽善臭い方向に持って行く気はないけれども。宗教法人立ち上げるつもりはないし)


それにしても、日本というのも不可思議な国ではある。
各国各地方これだけ食材・料理が氾濫し、食料自給率のうち6割を海外から輸入しまくり、雑誌・TV等マスメディアに料理が取り上げられないことはないほど「グルメ」な国のくせに、一方で食料廃棄率は2002年時点で25%(!)に達し、今回のニュースのような不正表示も一向に止む気配がない。

国民生活センターが毎年実施している「国民生活動向調査」で、昨年のものを見ると、『食品の表示に対する信頼』は、「信頼できない」「どちらかと言えば信頼できない」を合わせると6割を超えたという驚くべきデータもある。


まぁ「地理的表示」(*注1)に関しては、実はEU対アメリカ・南ア大陸の国々で世界的に揉めていることではある。例えばイタリアのパルマ市は「パルマハム」で有名で「パルマで作ったハム」は世界的に高い評価受けてるのだが、カナダではカナダの会社のハムが同名で商標登録されてるために、その「パルマで作ったハム」が「パルマハム」として売ることができないのはおかしいじゃないかって類のことをEUが文句言ってて、アメリカなどは「そんなもんこっちは長いことそれで売ってしまっている既成事実があるんだから今更彼らの商売妨害するようなことできるか」と反論している訳だ。(ちなみに、ワインとスピリッツ(蒸留酒)に関しては、1994年のウルグアイ・ラウンドで地理的表示は認められている)

これだけ不正や不正チック(*注2)な表示が横行している日本にEUから矛先が向いてないのは、日本の美食家達がそれなりにEUのワインとか肉とかチーズ買ったりお店で食っているからだろうか?クイーンズ伊勢丹とかキッチンコート(*注3)なんて私は行ったこたぁありませんが。


・・ってそれはさておき、国民の半分以上が不信感を持つような食料品を提供している先進国って一体何なんだ?ってなるとどうしても「行政の責任」にしたくなるところではあるけど、実際、私達消費者側の原因だってやっぱり考えなくちゃいけない。

4/12のブログでエンゲル係数が家計支出の1/4を切っていることには触れたが、いくら通信費だ教育費だ被服費だガソリン代だと固定費がかさむとは言っても、総じて食費「削り過ぎ」ではあるのだ。

節約するとなると真っ先に食費に手がつけられるのは、「思考の罠」のようなもので、飯を食うのは最も「頻度の高い」支出だから、1ヶ月1年のトータルに関係なく、心理的には影響が大きいと錯覚してケチり出すんですね。
計算すれば容易に分かるけど、例えば主婦が毎日300円スーパーでの買い物を節約したら月に浮くのは9,000円。しかし、服、電化製品、化粧品などなど、「本当に必要なものだけ買って、しかも本当に適正な価格で買ってるのか?」って考えてみて下さい。2万の服を1万のものにするだけで、或いは1万の服1度諦めるだけで、そっちの方が節約になってるんです。

「子沢山で子供の給食費もロクに払えません」ぐらいの状況であれば、子沢山=当然飯を食う頭数自体も多いから食費を削らざるを得ませんが、そうでもない限り、大抵他に「単価が高くてまだ費用を抑えれる余地のあるもの」はある筈なんです。
ましてや、食費削りすぎて病気になって医療費かさむなんてことになったら正に本末転倒。「絶対に避けられない出費」を必要以上に切り詰めるのは最終手段であってしかるべきです。無論、「外食でご馳走食い過ぎ」を減らすってだけなら話は違いますが。


でもって、食費の10円100円に拘り過ぎる人が多いから、生産者や小売業者が無理してでもコスト減らさざるを得なくなる→生産者は手間かけずに大量に出荷しなければいけないから危険な農薬や飼料を効率のために使わざるを得なくなる、小売業者は安かろう悪かろうでは買ってくれないから苦しくなれば偽装だってしたくなるってことだ。

その偽装の多さは、「それだけ名前だけで判断する人も多い」からでもある。もっとも、安全性やある程度の品質という要件さえ満たされれば、実際にはどこで作られたものであろうと拘らず有難く頂戴すべきって考え方もありますが。表示に嘘をつくことで、安全性や品質も急に疑わしくなる、そういうものが作られ出回ってしまうから「問題」な訳で。


日本には禅宗があった(*注4)んだから、本来食に関してこんな妙ちくりんな状況になる筈はないんだが・・・。(って宗教のお話じゃないですよ、禅宗は、宗教としてというより人生観や考え方って意味で学ぶべきところが多いってことですから)

まぁ現代人にとって、「食」は生きるためだけじゃなくて好奇心や快感を満たすものにもなってしまってるから、一元的に解釈するのは難しいってことなんだろう。





*注:
(1)
地理的表示・・WTO(世界貿易機関)のTRIPs協定(知的所有権の貿易的側面に関する協定)の条文によれば、「ある商品に関し、その確立した品質、社会的評価その他の特性が、当該商品の地理的原産地に主として帰せられる場合において、当該商品が加盟国の領域又はその領域内の地域若しくは地方を原産地とするものであることを特定する表示」である。・・であるが、お馬鹿な官僚は日本の法律全般においてもそうだが、日本語とは思えないような悪文しか書けない(この場合訳せない)ようなので、私が勝手に意訳すると、「例えばシャンパーニュ地方のシャンパンのように、原産地の名前そのものが一つの"ブランド"として社会的に認められている場合、例外をなくすために、原産地で生産された商品だけにその名前を付けようという表示」のことである。これでも分かりにくかったらごめんなさい。要は「同じようなものでも、わざわざ原産地の名前で売ってんだから勝手にその名前使っちゃダメ」っていうことである。

(2)
不正チックというのは、日本の場合、他県産牛肉を「松坂牛」で売るような完全な偽装(=詐欺)だけでなく、本物の宍道湖のしじみに中国産を一部混ぜて「宍道湖しじみ」で売るようなセコいパターンもあるという意味。

(3)
東京の高級(高品質・高級食材を揃えている)スーパー。

(4)
日常のあらゆる行為を修行の一貫と捉え差別化しない禅宗においては、料理や食事も当然重要な行為の一つ。炊事役の典座(てんぞ)は禅寺では重要な役回りである。現在の精進料理・茶懐石料理も勿論禅宗からのものである。