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【サッカー】CL準決勝総評

2006-04-27 22:18:07 | スポーツ
ドイツW杯も間近に控え、各国リーグ戦・欧州戦もいよいよ大詰め。CL準決勝は、両カードとも派手な打ち合いにこそならなかったがなかなか緊張感の高い試合だった。

☆(1st Leg)アーセナル-ビジャレアル/(2nd Leg)ビジャレアル-アーセナル
(1-0,0-0、合計1-0でアーセナルが決勝進出)
・・・こちらのカードは、共に準決勝進出自体が初めて、決勝に進めば当然初めてになるという意外にありそうでない対戦となった。(ビジャレアルは、そもそも今回がCL初出場だし)


1at Legハイベリーでは、ガナーズサポの熱い声援を背に、前半はアーセナルが押し込む形になった。特に左サイドから、SBのフラミニ、アンリ、リュングベリなどが入れ替わり立ち替わりしながら深く切れ込み、何本もクロスを供給した。
ただアーセナルに背の高いヘッドの強い選手がいないこともあり、クロスは入るものの明らかな決定機は作り出せずにいた。しかし前半41分、CKのセカンドボールからトゥレがボレーで押し込み、いい時間にアーセナルが先制する。

後半は、徐々にビジャレアルもリケルメやセナを中心にパスをつなぎリズムを作り始める一方で、アーセナルも先制したせいかリスクを冒してかさにかかって総攻撃をしかけることはなかった。
後半時間が深くなってからは、ビジャレアルはペレグリーニ監督の考えがあったのか、アウェーで0-1の負けならOKと受け取れるような時間稼ぎのプレーもあり、結局1st Legは1-0でアーセナル先勝の形で終えた。


2nd Legは、うってかわって完全なビジャレアルペースとなった。
リーガ・エスパニョーラのクラブ、又南米の選手が多いということもあり、ビジャレアルはとにかくパス交換を重ねスローペースでじわじわつなぎながらサイドのスペースや縦への楔のパスを狙う。一方のアーセナルは、普段から国内リーグでハイテンションなペースの速いゲームに慣れているせいか、ビジャレアルのスローなリズムになかなか対応できず、前線のアンリが孤立してしまう。

ペースを握ったビジャレアルは前半から両サイドを巧みに突きクロスからチャンスを作るが、FWのフランコが決めきれない。
後半になってもビジャレアルの優位は変わらず、リケルメにマークが集中するのを上手く利用してビジャレアルはチャンスを作るが、最後にGKレーマンを中心にアーセナルもよく踏ん張り、ゴールを割らせない。

最大のチャンスが訪れたのは後半ロスタイム間際。途中出場のホセマリが右サイドを突破しワンツーからPA内に突進したのを、アーセナルの選手がひっかけてPKの判定。
ところが、そのPKを蹴ったリケルメは、レーマンに完全に読まれあっさり止められる。リケルメは放心状態。もうビジャレアルにも残り僅かの時間で更に攻撃をしかけるパワーはなく、アーセナルが最少得点差で初の決勝進出を決めた。


ビジャレアルはCL初出場ながら、GLではマンUを最下位に葬り去り、準々決勝ではインテルを下し、決勝には進めなかったものの大健闘を見せた。やはりリケルメというファンタジスタの切り札を抱えていたこと、選手全員が粘り強く守備に参加していたことがここまでの成績につながったと言える。
ただ、ビジャレアルはGLでも引き分けが多く、決勝Tではアウェーゴール差で辛くも勝ちあがってきた。つまりFWの決定力不足は明らかで、結局それが最後に明暗を分ける形となった。

一方のアーセナルは、守備的なチームではないにも関わらずCLでの連続無失点記録を更新しながらの決勝進出となった。
GLでは対戦クラブが格下過ぎ、決勝Tでも相手クラブのFWがことごとく不調だったことに助けられてはいるが、選手全員が(アンリでさえも)プレスを怠らず攻撃にも守備にも積極的に参加したことがクラブ初の決勝進出に貢献した。選手で言えば、アンリやレーマンも無論だが、弱冠18歳(もうすぐ19歳)のセスクが中盤でCHとしてきっちり仕事を果たしていたことが何よりも大きい。「伸びしろ」はともかく、セスクは同年代ではCHの完成度としては世界一かもしれない。



☆(1st Leg)ミラン-バルセロナ/(2nd Leg)バルセロナ-ミラン
(0-1,0-0、合計1-0でバルセロナが決勝進出)
・・・クラブとしての格や実績、現在のチームの完成度や選手の能力などから「事実上の決勝」と言われたこのカード、こちらも点こそ180分で1点しか入らなかったが、細部ではハイレベルな攻防が見られた。

1st Legは、ミランはインザーギを発熱で、バルサはデコを出場停止で欠き、両チームともキーになる選手がいなかったが、緊張感の高い試合になった。
ミランはセルジーニョやセードルフを中心に攻撃を仕掛けるが、バルサも素早いプレッシングで対抗。若いイニエスタはしっかりデコの穴を埋めていた。又、カカはエジミウソンがしっかりと封じ、シェバも最近の不調で精彩を欠き、なかなか決定機にまでは至らない。前半最大のチャンスだったジラルディーノのシュートは、ポストに弾かれてしまい、シェバのダイビングヘッドもキーパー正面。
バルサの方はロナウジーニョ、エトーが個人技とスピードで仕掛けシュートを放つが、殆どPA外からのシュートでジーダを脅かすまでには至らず。

後半も同じような展開だったが、57分、ロナウジーニョが「ファンタジー」を見せる。左サイドで執拗なマークについたガットゥーゾを弾き飛ばし、右の方から裏に抜けようとしていたジュリに絶妙な浮きスルー。
ワンバウンドしたこのスルーをジュリがニアの天井にボレーで突き刺し、アウェーのバルサが先制。パスもシュートも全て「完璧」にいったゴールで、ミランはやりたくないアウェーゴールを先に許してしまった。

その後、やや疲れが見えるバルサに対してカカが漸く息を吹き返しドリブルからチャンスを作るが、バルサもプジョル・マルケスのCBコンビが踏ん張り、0-1で終了、ミランはホームで痛い敗戦となった。


2nd Leg、ミランはピッポが戻ってきたものの、今度はCBのネスタを怪我で欠く。ほぼカウンター狙いになったバルサは、プレッシングはきっちりかけながら「攻めなければいけない」ミランの穴を狙う。
前半は、立ち上がりにカカがカウンターで突破しシュートを放つも枠外、その後はミランの組み立てのミスをエトーが何度か突いて決定機を作るが、ジーダの果敢な飛び出しにゴールならず、0-0のまま終了。

後半、64分にミランは右SBだったスタムを中に入れ、右SBにカフーを投入しより攻撃的な布陣にする。(その後続けざまにガットゥーゾもルイコスタと交代)
そして70分過ぎ、セットプレーを素早く始めたミランがシェバのヘディングシュートで先制・・と思われたが、その前の反則を先に取られ結局ノーゴール。
80分にピッポに代わってジラルディーノが入ってからは、ミランはバルサゴールを脅かすようなチャンスも作れず、そのまま試合終了、バルセロナは12年ぶりの決勝進出、一方のミランは昨シーズンに続き悔しい敗退となったばかりか、過去準決勝では負けなし(必ず決勝に進めていた)のジンクスが遂に破られてしまった。


ボールキープの上手さやファンタジー性ではややバルサに分があったが、最少得点差の数字が示す通り、ほぼ互角の内容だった。
ミランの敗因の最も大きなものは、不調にも関わらずアンチェロッティがピルロとシェバを外さなかったこと、だろう。ピルロは明らかに効果的な組み立てやスルーパスが減っているし、シェバもキレがなく自らドリブルで相手をかわしてシュートが打てない状態が続いていた。
それならばフレッシュなヤンクロフスキやフォーゲルを入れた方がより力強い攻撃ができた可能性があり、FWについては、ジラルディーノは確かに今シーズンCLでは一つもゴールできていなかったが動きは決して悪くなかった。

ピッポもジラも、如何にもイタリア人らしいFWで、2人とも似たタイプではあるが、ピッポはより嗅覚が鋭いタイプ、ジラは狡猾さや嗅覚はピッポには及ばないが、反転の上手さやアクロバティックなシュートの上手さはワールドクラスの選手で、共通して言えるのは、2人ともPA内に入れるとDFにとってはかなり嫌なタイプだということだ。
バルセロナもアーセナル同様守備的なチームでこそないが、チーム全体のプレッシングは皆激しく、CBのプジョル・マルケス、そしてDHのエジミウソンも個人としての守備能力は屈指の選手だ。で、あれば、「いやらしい」タイプのピッポとジラを並べて彼らに執拗に裏を狙わせたりボールを当てたりしていた方が得点のチャンスは多かったように思われる。キレがない今のシェバであれば尚更、だ。

一方のバルセロナは、ブレイク中のメッシを欠きながらも、中盤の質の高さと前線のロナウジーニョのテクニック、エトーのスピードでミランの守備にプレッシャーをかけ続けていたことが勝因だったと言える。
エトーの決定力についてはワールドクラスとは言いにくいが、今のバルセロナは個人能力からしてもチームとしての完成度からしても十分ファイナリストに値するチームと言っていいだろう。