さんぽ道(飾らない日常を楽しむ暮らし♪)

ジイジとばぁばと若い彼ら♪

じいちゃん 脱走する④

2013-10-09 20:56:35 | 介護
またやった!!

どうせ自宅に戻ったんだろうと思った。 転ぼうとも死のうとも勝手にやったらいい!!
朝ごはんを食べ、犬の排泄を済ませ、後を旦那に頼んで家を出た。
施設から妹にも電話が行ったらしい。連絡が入った。
7時過ぎに家に着いた。
道路にすっぴんの私服のままの女性の職員さんが数名、まだ若い男性の職員さんも1人居た。
「あっ!! 来たっ」
深々と頭を下げて「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。後は大丈夫ですからどうかお仕事に行って下さい」と詫びた。
実家に着くと主任さんが一緒に待っていてくれた。お詫びと御礼を言って こちらも帰って頂いた。

家の鍵を開け、取敢えず父を家に入れた。さて・・・どうしよう。
どう煮て食おうか・・

気温が低かったので寒かったのだろう。居間に転んで具合が悪そうに咳き込んでいた。
「死ねば・・それでも構わん!!」心底そう思った。
追って妹も出勤を止めてやってきた。

「おねえちゃん、 死んでもいいじゃん!! わたしゃ別に構わんよっ!」
「私も別にかまわんよ」
「昔から 自分勝手な行動ばかりとって、こうやってまたボケとは思えない恥ずかしい行動して!!」

「何か掛けるもんは無いんか? 寒いんじゃ!」 「無いよ!」
「布団はないんか?」 「無いよ」 私も妹も動かなかった。
自分で2階へ探しに上がったが、何も探せずに降りてきた。それでも動かなかった私たち。
納戸にある布団類は干して真空にしてベットに積み上げてあるが、見に行ってもそれが布団とは理解できずに出せてない。
奥の部屋にあった敷布団とシーツ、枕を持って出て来て敷いた。
不思議と枕を使えない。夏掛けを丸めて枕にし、シーツを体にかけて横になった。
妹と顔を見合わせて 「布団の遣い方解からんのかね?」
私と妹と座卓の処で話をしてたら起きて来て厚さ10センチ位の1枚板の座卓を持ち上げてひっくり返そうと持ち上げた。
私はすぐ逃げたが 妹は足を挟まれて内出血を起こす羽目になった。
どんな暴力を振るわれるか怖くなったので、二人で姿を隠す事にした。

このまま放置すれば私たちは「保護責任者遺棄」になるだろう。
本当は そうしたかった。

それから夕方の6時過ぎまで、父からは見えないように家のあちこちに隠れながら・・
妹と小さい頃からのいろんな話をしながら隠れて・・父を見守った。
馬鹿だよね? 私たち。
時には嘲笑し、時には情けないと泣きながら・・二人で「早く死んでしまえっ」って言いながら・・

朝から何も食べてない奴は冷蔵庫を開けて 冷凍のおにぎりを食べた。
凍ったまま・・太陽に当てて解凍しながら・・
電子レンジもある。鍋もある。IHの調理台もあるのに 遣い方が分からないのか?思いつかないのか?
冷蔵庫から私たちが農作業に行った時の為に置いてあった2Lのペットボトルを出して来て飲んでる。
紙コップも唐津のコップもあるのに・・大きなボトルのまま・・
嚥下が悪くて咳込んでも平気で・・
そのうち気温が高くなって奴は眠ってしまった。

「おねえちゃん、今のうちに帰ってこようや 放っておいても今なら死なんよ!」
死んでもいいって言っておきながら・・(笑)

お昼過ぎても奴は寝てた。寝てる間に、固定電話のモジュラージャックを外し、
持って帰った携帯電話を隠し、冷蔵庫の中の食べられそうなものを撤去し・・
ギブアップしてヘトヘトになるまで待つ事にした。
今後、脱走して帰っても食べるものも着るものも誰も居ないのを体で覚えさせるために。(泣)

夕方になってもギブアップしなかった。
時々、固定電話を掛けてみるがかかる筈もなく・・だけど懲りずに掛けてる。
(あとで言うには 施設に連絡して迎えに来て貰おうと思ったって)
時々「おーーい だれも居らんのかぁ」と言ってる。
一度は近所のおばさん(89歳)の処へ出かけて行った。おばさんには事前に頼んでおいたので
上手にあしらってくれて食べ物は渡さないでくれた。
おばさんも独り暮らしで「弁当配達」して貰ってる状態だけど。

うす暗くなってまた私たちは実家を離れた。
私たちも自分たちが脱水症を起こすくらい何も食べてないし・飲んでない。

真っ暗になってから私独り、父の居る実家の門をくぐった。
そこから大芝居をした。
真っ暗の家の中で父は電気の付け方が判らないのか?うろうろしていた。

玄関のセンサー付きの電気がついて私が見えたのか声を掛けてきた。
「おとうちゃん、まだここに居ったん? おなか空いたじゃろ?」
「おぅ ここにゃあ 食うものも何もネエ・・お茶しかネェ・ なんかもっとらんのか?」
「電気が判らんのじゃ 電話も掛からんのじゃ」
昼間とは人が変わったように肩が落ちてる。あの勝気は何処へ行った?
騙されるもんか!!芝居は続く。
「何も持っとらんよ おなか空いたんなら 施設に帰ろうや 送って行ってあげるわ」
「おめえ・・どこに居ったんなら?」
「わたしゃ 今日忙しかったんよ」「ほうか・・」
「早ぅ 帰る用意をしんさい 送って行ってあげるから」
「ほんなら・・ここはこのままでええか? 帰ろうか・・」
「うん ほっとけばええ・・また片づけるわ」
「まだ・・施設にゃ飯があるじゃろうか?」
「電話をして聞いてみてあげる」
「ここの電話使えんで・・」「ええよ車に携帯があるから」

悪魔の1日は夕方に片がついた。妹に「片がついたからもう来なくていいよ」電話した。


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