
ドイツの格安航空(LCC)の墜落に続き、カナダでもエアバス機の着陸失敗があり、利用者に不安が広がる“空の旅”。8日からは成田国際空港にLCC専用ターミナルが開業し、ますます選択肢が広がる中、どの航空会社を選べばよいのか。オーストラリアの格付けウェブサイトの評価を参考に、信頼できる航空会社、安全面で要注意の航空会社をリポートする。
格付けサイト「エアライン評価」(AirlineRatings.com)は世界449の航空会社の安全性を1~7つ星で評価しており、このほど「安全な航空会社トップ10」=表1、「安全な格安航空会社トップ10」=表2を発表した。
449社中、最高の7つ星となった会社は、日本の日本航空、全日空を含む149社に上ったが、一方で「7つ星中3つ星以下となった“要注意”航空会社」=表3=は40社近くになった。
安全な航空会社から見ていこう。449社中トップに立ったのはオーストラリアのカンタス航空だった。
『間違いだらけのLCC選び』(草思社)の著者で航空アナリストの杉浦一機氏は「納得のラインアップ。1位のカンタス航空は安全対策に定評がある上、経営の立て直しに成功し、今年度からは日本路線を2つ増やすなど積極的な拡大が目立っている」と話す。トップ10の残りの9社の中には、エミレーツ航空とエティハド航空というオイルマネーを背景に急成長する“中東勢”が選ばれたほか、子会社のLCCの墜落で揺れるルフトハンザ航空も。
「ルフトハンザ航空は整備の設備投資に力を入れているが、今回の墜落で、副操縦士の過去の精神疾患を会社側が把握していたことが分かった。ルフトハンザ航空自体の信頼性にも疑問が出てくる」(杉浦氏)。来年には上位から姿を消す可能性もありそうだ。
格安航空の上位10社に目を向けると、米国からジェットブルーなど3社が選ばれた。「アラスカ航空はLCCではないが、寒冷地に路線が多い。厳しい気象条件でも高い安全性を保ち、非常に評価できる」(同)
日本にも乗り入れるLCCとしてはジェットスターが有名だが、カンタス航空の子会社で、こちらも高い安全性が評価されている。
残念ながら日本の航空会社はそれぞれの上位10社に選ばれなかったが…。「飛行機事故の7割が離着陸で発生している現状で、飛行時間が長いことは事故率の評価では有利になる。日本の航空会社は飛行時間が短く、LCCの分野では歴史が浅いことも影響しているのではないか」(同)
一方、3つ星以下の評価が低い“要注意”の中で知っておきたいのは、日本人居住者や旅行客が多いインドネシア、ベトナム、フィリピン、ネパールの航空会社だ。
中でもインドネシアは最低の1つ星に2社も入ったほか、日本にも乗り入れするガルーダ・インドネシア航空も3つ星の評価に。
杉浦氏は「国の安全基準が低いとして2007年からEU域内への乗り入れが禁止になった。09年に解除された後も事故が多い。島国のため航空が国内の重要な輸送手段となっており、仕事や休暇で利用する日本人も少なくない」と警戒する。
1つ星のライオン・エアは100機以上を運航する格安航空大手だが、04年に乗員乗客20人以上が死亡する事故を起こし、13年にも事故やトラブルが相次いだ。
ネパールも2社が1つ星になった。「霧や雨などで天候が悪化した場合は危険度が増すため、操縦士をバックアップする航行支援システムが重要になる。だが、ネパールは空港施設が貧弱で、航行支援システムが十分ではない」(杉浦氏)。ネパールの国内便は、登山のため利用する日本人も少なくない。
杉浦氏は安全面以外にも、注意すべき点があると指摘する。
「航空事故の場合、多額の補償金を受け取るのは当然と思いがちだが、国によって事情が異なる。例えば、ミャンマーは航空事業者が事故責任を免責されており、補償金が出ない。自分でしっかり保険をかけるなど備えを講じたほうがいい」
僻地(へきち)への旅行がブームになっているが、飛行機選びは慎重にしたい。
■安全な航空会社トップ10(表1)
カンタス航空 オーストラリア
ニュージーランド航空 ニュージーランド
ブリティッシュ・エアウェイズ イギリス
キャセイパシフィック航空 香港
エミレーツ航空 アラブ首長国連邦
エティハド航空 アラブ首長国連邦
エバー航空 台湾
フィンランド航空 フィンランド
ルフトハンザ航空 ドイツ
シンガポール航空 シンガポール
※「エアライン評価」による調査。1位のカンタス航空以外はアルファベット順
■安全な格安航空会社トップ10(表2)
エアリンガス アイルランド
アラスカ航空 米国
アイスランド航空 アイスランド
ジェットブルー 米国
ジェットスター オーストラリア
クルラ航空 南アフリカ共和国
トーマス・クック航空 イギリス
TUIフライ ドイツ
ヴァージン・アメリカ 米国
ウエストジェット航空 カナダ
※「エアライン評価」による調査。アルファベット順
■7つ星中、3つ星以下の“要注意”航空会社(表3)
▼3つ星 アフリキア航空(リビア)、バガン航空(ミャンマー)、エアアジア・ゼスト(フィリピン)、エアラインズPNG(パプアニューギニア)、ASKY航空 (西アフリカ諸国)、アヴィア・トラフィック・カンパニー(キルギス)、カメルーン航空(カメルーン)、カンボジア・アンコール航空(カンボジア)、ロイヤルブータン航空(ブータン)、ファストジェット(タンザニア)、フェリックス・エアウェイズ(イエメン)、フライ540(ケニア)、ガルーダ・インドネシア航空(インドネシア)、イラク航空(イラク)、ジェットスター・パシフィック航空(ベトナム)、モザンビーク航空(モザンビーク)、ラオス国営航空(ラオス)、リビア航空(リビア)、ナウル航空(ナウル)、ポリネシアン航空(サモア)、サモンエア(タジキスタン)、タジキスタン航空(タジキスタン)、ベトジェットエア(ベトナム)、ウィングス・エア(インドネシア)、エクスプレスエア(インドネシア)
▼2つ星 アリアナ・アフガン航空(アフガニスタン)、ブルーウィング航空(スリナム)、ダーロ航空(アラブ首長国連邦)、スリウィジャヤ航空(インドネシア)、イエティ航空(ネパール)
▼1つ星 シティリンク(インドネシア)、タラ航空(ネパール)、カーム航空(アフガニスタン)、ライオン・エア(インドネシア)、ネパール航空(ネパール)、スキャット航空(カザフスタン)
※「エアライン評価」による調査