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アメリカ/ 魅了された編み物生活

私の職場/感激の一瞬・その3

2006-06-17 05:41:17 | Weblog



ウイリー・ブラウンは前サンフランシスコ市長である。

30年以上にも渡り、民主党のカリフォルニア州議会議員を務め、また長らく議長を務めた後、1996年、共和党のサンフランシスコ市長を破りそれ以来任期切れになるまでサンフランシスコの市長を務め、2004年、38歳の若くしてレストランやワイナリービジネスで成功した現市長ギャビンに職を受け渡した人である。
非常にカリスマ性の高い政治家でもあり、サンフランシスコ歴代市長初めての黒人市長でもあった。有名な映画監督フランシス・コッポラが1990年のゴッド・ファーザーの映画の中である政治家の配役にウイリー・ブラウンをモデルにして演技させたが、その俳優が彼の人格を理解できず演技したので、頭に来たコッポラは即刻、その俳優を首にし、ウイーリー自身にこの代役を依頼したという、カリフォルニア州では大変有名で彼の数かずの輝ける政治活動は多くのサンフランシスコだけでなく、共和党の人々からも尊敬を集めていた。
下のサイトは彼の30分のインタビュービデオなのでクリックして見てください。

http://video.google.com/videoplay?docid=7281605867396466694

昨日は朝から意外にも人気のない、ストアだった。もう6月なので、サンフランシスコはそろそろ観光客シーズンを迎え、旅行者も世界中からやってくる頃なのにと思いながら、長~~い1日が終わりかかった夕方のことである。
私のフロアーからは外に出る出口につながる階段があり、出口のガラス張りのドアを通してギアリーストリートに駐車している車が見える。その場所はヴィップの買い物顧客がお抱え運転手に止めてもらって乗り降りする場所でもあり、中には目を見張るようなベンツやロールスロイスが乗りつけ、運転手達が忙しく、うちのストアのショッピングバッグを詰め込んだりしている様子が見られる。その日も豪華なベンツに、現代版貴婦人といったスタイルの顧客が、うちのパーソナルショッパーにエスコートされながら乗り込み立ち去った後、1台のパトカーが止まり、うちのストアから手錠をかけられた一人の若い女性が警察官に連れ出されて乗り込む姿が見られた。こんな風景を見るたびに、億万長者の買い物客と対照的な哀れな万引き買い物客の人生模様を感じる。
その光景のちょっと手前の階段の上で一人のダンディーな黒人男性が、忙しく携帯電話でなにやら、長話しをしていた。私のところからは10メートルくらい離れていて会話ははっきりしないが声はとても太く張りの在る響きでなんとなく気になる男性である。
ライトグレーにピンストライプのスーツ、白のシャツに上品なベビーピンクのネクタイと同色のハンカチが胸ポケットに、そしてオリーブグリーンのパナマハット。
私は目を離そうとしたが、何だかとても洗練された趣味のダンディーながらもかなりのステイタスを感じさせられる、その男性を見つめ続けていた。彼の気さくでフレンドリーな表情は一見ジャズミュージシャンぽいが、、、、、?いやいやそんなバックグラウンドでもなさそうだ。微笑んでいる目の裏には戦士のような鋭さがある。
と彼の職業を分析できずにいたところ、ストックルームで働いている同僚が私の前を通りすがった。<ななこ、また明日ね!><マリー、もう仕事終わったの?いいなあ!私もこんな閑古鳥の日には早く帰りたいわあ!!ところで、マリー、ほらあの黒人男性、見たことがある様だけど気になるなあ?>と彼女に囁いた。<ななこ!前市長のウイリーじゃないの!!><ひゃあ~~!、サインしてほしいなあ!>と私。<頼みなさいよ?ななこ。><いや~っ、プライバシーを侵害したくないし、、、。>とためらっているうちに、マリーはすたすたと彼に近ずき私の方を指さして<あの子がサインを欲しいと言っているよ。>と話しているのだ。私はまた唖然として二人の会話を見ていたが、前市長のウイリーはそれを聞くや、私のレジーのところへ歩みよって、
<Do you want my autograph ? サインが欲しいの? >
<Yes, Would you ? はい、ぜひ!>
<What is your name ? 名前は?>
<Nanako ななこです。><Hum ? Spell it.スペルを言ってごらん。>
<N-A-N-A-K-O>

ウイリーは渡した紙切れに私の名前と彼のサインをさらさらと書いてくれた。

民主党のパイオニア精神を学んだのもケネディー大統領がきっかけだったし、ウイリーに出会った今日はそれ以来のインパクトだった。
思い出す43年も前のこと。真夜中に中間テストの用意で勉強中私は、板付基地から入るVOA<VOICE OF AMERICA>短波放送でショッキングなケネディー暗殺のニュースをいち早く聞いていた。その当時中学生の私は、ラジオで言っている<アサシネイテッド!!>という叫び声に近いラジオでの言葉の意味がわからず、音は摑めるが、そのスペリングがわからず辞書を引けずにいらいらしていた。しかし、ただごとでない、なにやらケネディー大統領に大変なことが起こったのが理解できた。翌朝、徹夜でもうろうとしながら階下の食堂に行くと、置いてあった朝刊に大きな<魔の13日の金曜日、ケネディ大統領ダラスで暗殺!>の見出しを見て昨夜のニュースのショックが改めて沸き起こったのだった。そのときが初めて<暗殺・アサシネーション>の単語の意味以上の迫力在るリアルティーを学んだ日だった。そして、その日以来、ケネディーの本や民主党、アメリカの政治家の本などを買い集め私はむさぼり読むようになった。その当時、父がいつも医学書や患者さんのための雑誌の配達を頼む金修堂という書店が渡辺通り1丁目にあり、学校の帰りに覗いては、ケネディーの演説集やニクソンとの政治討論などの本を、父の<口座>でこっそりツケで買っては自分の部屋で読みふけり、受験勉強などそっちのけだった。2年上の兄がある日、その書店に行くと店員が<おたくの妹さんは難しい本を沢山読まれるんですねえ!!>といわれたぞ!!一体お前は何を買っているんだと兄にからかわれたものだ。その後こっそり、どっさり父の口座で買っていた本の請求書が回ってきて、とうとうお叱りを受けてしまい、その後本は月に2冊<父は本の表装や文章の行間からこの本はこの値段に値するがこれはお金の無駄使いだとか本を買うにあたって選び方をいろいろ注意してくれた。>レコードはクラシックとポピュラー各々を月に2枚<それも兄と相談して>、父の口座で買って良いということになった。

ウイリー・ブラウンとの出会いは60年代の初めてのアメリカ政治家へのアプローチ以来のインパクトだった。

エルガー・威風堂々