アメリカ!編みんぐ_AMING

アメリカ/ 魅了された編み物生活

アメリカの不動産、その2

2010-01-20 12:22:46 | Weblog
昨年の改造が11月の半ばに終わり、12月4日に借家としての広告を出した。
クレイグリストというサンフランシスコ湾岸を対象とする、無料の広告ウエッブサイトがあり、そこに記事と写真をのせたら早速、コンタクトがあり、毎週末は家を見にくるカップルにオープンハウスと言って家を見せていた。

若い、カップル達は見るなりすぐに気に入ってくれて<ここは上の子の部屋に、ここにはソファーが置けるとか、、、、>もう引越し気分満々だった。
こちらでは、借家の申込書と同時に、クレジット調査、犯罪歴を調べる。
とても感じの良い、カップルだったが、残念ながら月18万の家賃を払う能力がなかったり、共稼ぎだった主人が失業中で奥さん一人でヘアーサロンで50万稼いでるとかいろんな家計状態を見ざるを得ない。
最後に来たカップルは子供3人におばあちゃん、合計6人家族の候補者だった。
アメリカでは子供3人におばあちゃんも同居と言うケースは珍しい。
私の質問は<裏庭に湖があり、どちらかというと若い所帯むきの環境ではないのに、どうして私の家が気に入ったのでしょう?>ということだったのだが、なんでもご主人の母親も近くに住んでいて、共働きには2人のおばあちゃんが近くで助かるからだと言うことだった。クレジット調査をするとご主人は電話局に10年、奥さんは病院のフィジカルセラピストを7年と職業もなかなか、固いし給与明細を見ると2人あわせて年収1500万もある。おまけに奥さんの方のお母さん<つまりおばあちゃん>も同居だから、核家族のようにデイケアに子供を預けるお金も節約できる、理想的な家族だった。

彼らは非常に気に入った様で、ご主人方のおばあちゃんにも見せたいとか、1月には引越しできるだろうかとか話がとんとん拍子に進んでいった。
もう、年も押し迫り、私は、怪我のため、慌てて貸したくないムードになっていた。もちろん家賃が入って、投資分のキャッシュフローができるのは嬉しいことだが、来年、年があけてゆっくりといろんな家族と面接したら良いなと思っていたので、以外にも彼らのスケジュールにびっくりしたのだった。

後、仕上げとしてはカーテン、ブラインドの取り付け、カーペットのクリーニング、ビルトインのオーブンを新しいものに取替えなければいけない。怪我もして会社を休んでいたので、面接をする時間は取れたが仕上げがなかなか終らなかった。

あまり、急がれるので、とうとうその理由を聞くと、なんと!
6年前に購入した新築の家が差し押さえになってしまい、はやく引っ越し先を探さなくてはいけないのだということ。住んでいた家は<奥さんによると>私の家よりはるかにモダンできれいで広く6寝室にリビング、ダイニングルームに3箇所のバスルームで110坪の建坪の家だそうだ。
最初は、モーゲッジ<家のローンのこと>が40万で返済が滞ったと言う話であったが、突っ込んで話を聞くとなんと毎月60万の返済に2台の車のローンがあるという。子供2人は小学校、昨年生まれた7ヶ月の赤ちゃん。毎月の水、光熱代、、、。毎月高給の125万の給料から税金、保険などを差し引き<アメリカでは30%が消えていく>家のローンと車のローンを引くと、おそらく生活費は20万もあるかないかだろう。と私の脳裏は電卓と化して、ぴぽぱ、、、と数字が飛びかえるのと同時に心臓が押しつぶされそうな痛みを感じた。

若い高給サラリーの2人が、夢と興奮に膨らんだ御殿のような家を買ったのは、バブルが始まりかけた2004年だった。日本で<低所得者向けのローン>として紹介されている、サブプライムローンは決して<低所得者だけではなかった。彼らの所得からするとプライムローンでなければならないはずだったのだが、これもローンレンダーのあいまいな言葉に隠された数字のトリックに気が付くこともできなかったのだろう。

こういう、銀行やローンレンダーの手練手管はうまい説得力でいつも購入者を勇気付けるのだ。<頭金なし、あるいは10%。5年間、固定金利で毎月30万の返済でこんなすばらしい家が買えるんですよ!!6年目から変動金利に変わりますが、そんなに大きな違いはありません。もし賃貸のアパートかコンド、3寝室2箇所バスルームを借りるとなると毎月、最低26万払わなくてはいけませんから、そのことを考えると30万出して、自分の持ち家になるのですからほんとにお得ですよ!それに、この家だったら、5年先には1億にはなるでしょう!そのときに買い換えるとキャピタルゲインが大きいんですよ!

おまけに年間、必要な固定資産税をいくら払わなきゃいけないかなんて、思ってもいないし考えてもいない人々ばかりである。
アメリカの固定資産税は、日本と違って恐ろしいほど高い。
サンフランシスコ湾岸で大体<購入価格の1.2%だから、7000万の家を買うと82万から90万が年間の固定資産税にになる。>
その点、日本は収入や、間口、住居の種類など区分によって考慮されていて計算法が複雑だが、持ち主にフレンドリーだ。

私の会社の同僚のベンも新婚そうそう、不動産屋をしていた姑に執拗に頭金なしの良いローンが組めるとアドバイスされて、5500万のちっちゃな1軒家を買った。そのつぎには共働きに必要な車を2台、そのうちに子供ができた。
私はアメリカの若い人たちの甲斐性ぶりに圧倒されていた。恐る恐る、ベンに一体、毎月いくら返済しているの??と聞いたものだ。<嫁はんと自分の手取りあわせて58万だから20万のローンなんて楽勝だよ。>その彼の言葉が2年後に、だんだんかすれ声に変わっていったときにはもう返済金額が26万を超えていた。そしてとうとう、1年まえにベンは失職して、学校の先生をしている奥さんの収入だけが頼りになったのだった。デザイナーのブランドものを身にまとっている若い女の子とユニオンスクエアー界隈のランチで流行の話をするのがお得意だった彼の身にまとっているものはいつしか、なっぱ服になっていた。

うちのストアを去って、いまどうしているのだろうか?時々思う。
ふと、新しい借り手の話を聞きながら、ベンのことがオーバーラップされたのだった。

続く。

アメリカの不動産、その1.

2010-01-13 12:00:20 | Weblog
                                                

昨年の8月に不動産投資の目的で一軒家を買った。敷地はおよそ240坪で建坪は約55坪。4寝室に3箇所バスルーム、リビング、ダイニングキッチン。リビングと2階のマスターベッドルームにデッキが付いていて、裏庭に続く湖が美しい景色のパノラマを楽しめる。家は築44年で、以前の持ち主たちが手を入れずに借家にしていたのでなんとも醜い現状だった。せっかく、プライベートレイクが裏庭にあって、ボート遊びや、カヤック、釣り、水泳などで楽しめる個性ある場所にありながら、長らく、持ち主に愛されず、みすぼらしく佇んでいた家だった。この家を見るまで、他に50件くらいは見て回っていたのだが、他の家と比べると、きたな~~っという思いにかられながらも湖の景色に惹かれて売買の価格オファーしてしまったという感がする。
不動産屋にすると、もう24人ほどが売買オファーしていてオファー<売買価格提示>は打ち切り。後は提示価格の高い人か、高くてもすでにローンが確定している人に絞られますということであった。

2007年の末から忍び寄ってきていた景気の後退と2008年に起こったリーマンの破産を決起に、全くといっていいほど不動産ローンを組むのが難しい状態になって来ていた。だから、ローンを事前に組むことが確定している人<プリアプルーブという>しかこの売買オファーに参加できない。買う物件が決まってその売買価格の何割を銀行や公庫から借り入れる交渉をするという日本とは逆である。
家が見つかる見つからないは別に、予算に応じて大体の購入価格帯の家のローンを組み、銀行や貸付側の<あなたには3000万のローンが可能です>というような認定証を持って、不動産屋と話を進めるのが通常である。
だから、不動産屋もこの認定証があるか現金がある人しか話をしない。

ここ2年はそんなプリアプルーブされている人でも家が見つかっていざローンの話に行くと、その物件の価値や将来のマーケットで付加価値を生むかなどという概算でローンを断られるということも多く、そうなるとせっかく10人もオファーがあって売主はその中の一人に決めたものの、1ヶ月後にやはりローンが組めませんでしたといって売買が解消することがしょっちゅうなので、売主はどうしても慎重になり、確定買主とだけと話をすすめるという傾向になってきた。

そんなこんなで、不動産屋は不動産屋でできるだけ手数料をたくさんもらいたいので、お互いの顧客のオファーを吊り上げさせたりと、シテを思わせる手練手管を使うものもある。<ちなみにこちらの不動産屋はバイヤーとセラー両方につくと3%ずつの手数料だ。中にはセラーとバイヤーの不動産屋が同一人物だと、6%>
この家の最終持ち主は、ジーマックといってアメリカ最大の自動車ローンの会社でかつては自動車メーカーのGMが大量株を維持していた。
なぜ、売主がオートローンの会社だったのかというと、持ち主がローンを返済できずに差し押さえになったからである。これがいわゆるフォルクロージャー<差し押さえ物件>といわれ、2008年の末から、市場に出回りだしたのだが2009年になって市場に大量に放出された。売り物件の在庫整理みたいなものである。

しかし、銀行は家の価格下落を恐れて、差し押さえ物件の優良物件は市場に流さずホールドしている。ある説によると2009年の不良資産の放出は全体の3割にしか過ぎず<いわゆる氷山の一角>本年、2010年に本格的な、差し押さえ物件の在庫処理が始まるという危惧さえある。

そんなわけで、24人のオファーの中から選ばれてラッキーだったのかどうだかは?まだ定かでないのだが購入することになった。差し押さえ物件の場合は売主のタイトル<日本で言う登記簿謄本>が公開され、<ディスクロージャーといって>売り手が買い手に家の悪い所、修理が必要なところ、または合法でない部分の改善を要するところ、などをつぶさに公開しなければいけない。が親切に公開するわけでもないので買い手はインスペクター<建築検査官>をやとって2重にチェックする。
と同時に買い手も自分に買うだけの経済的な根拠があるかどうか、銀行預金や毎月の入出金の残高、年収、他の借金の有無、勤続年数、退職金などのコピーを提出して本契約までに売り手に現実的な売買の意欲と能力を伝えるプロセスを踏むのだ。
売主と買主の間でアデンダム<Addendum、日本語では追加事項とでも言おうか>を何回も取り交わし、買い手が納得できるまで、家の情報を聞くことができ、それが売主側から回答されるとその返事に対してまた両者のサインを交わして本契約に進むのでおよそ本契約までは1ヶ月はかかる。私の場合はもっぱらメールのPDFファイルやスキャナーで書類を作成したりしていたから、こういった手続きは不動産屋の事務所にいかずともスピードも速く往信できた。しかし、自分の寝る時間はこういったパソコンの交信に費やされてほとんどなかった。

30~50ページ渡る書類に辞書を片手に読み通したが中には不動産用語もあって、辞書にも載ってない。そういう時はインターネットで随分助けてもらった。時々は頭が痛くなり、こんなときほど痛切に<ああ!!また結婚してアメリカ人の旦那がほしい!>と思ったことはなかった。ま、そんな御都合で結婚してもまたダンナを首にしちゃうからこんな不謹慎なことは考えないようにと、ひたすら書類との戦いに勤めた。

こういうところは日本と違って契約社会のアメリカ、<この条項を読んだらサイン、次の条項に納得したらサイン>とがんじがらめである。良いところは情報の公開が徹底していて、<この地域に住む登録されているセックスオフェンダーを事前に調査するか?調査の結果の内容によってはこの契約を破棄する。>なんていう条項もある。セックスオフェンダーとは性犯罪者のことで、犯罪暦のある性犯罪者はどこに住んでいるか登録されて、インターネットでも公式公開されいるウエッブサイトで誰でもチェックできる。これはミーガンズローによって合法的な調査権として認められているのだ。私も興味しんしんで調べたが、なんと怖ーい顔したおじさんやおばさんたちの顔が勢ぞろいであった。
なんでも知りたがりの私はしつこく、ここはどういう意味だとかイーメールで往信していたから、2週間の超特急でクロージング<売買本契約のこと>をして引渡しが終ったときには不動産屋もさぞかしほ~~っとしていたことだろう。おまけに、高島こよみで選んだ大安のこの日にクロージングしてくれなんていう変な日本人の買主にもへきれきしていたに違いない。

話は長くなったが、差し押さえ物件を上手に買うにはいろんな、経験と感が必要だ。以前は差し押さえ物件はオークションで不動産屋が競り落として、その家を改造、中古マーケットに出品という感じで在ったが、いまや個人でも買える。
しかし、大方の差し押さえ物件は<As is>といって、現状のままの引渡しになるので、どれくらいの補修工事費用がかかるのかざーっと概算できないと、差し押さえでも御得に買ったのか、損したのかということになる。

今回の買い物で私が、目安としたのはリターンが10%になる投資としての購入だったから、もしこの1軒家を購入して借家とした場合どれくらいの家賃が見込めるのかというのが、最初のリサーチだった。アメリカでも、54坪の家というとかなり大きい床面積のほうだったから、その地域での借家と家賃リストを調べると月で18万から20万というデータだった。それと、アメリカでは、日本と根本的に違うのは、中古の家は何年たっても改造していく限り、価値が上がる。日本のように築30年で家の価値がゼロになるということはないのだ。
その背景には、新築で家を建てるとなると、最低500万は行政に払う建築許可費用に消えコスト高になる傾向があるし、新しい開発の建築は敷地がコマ切れにされて景観の良い環境が望められないということもあって、アメリカでの中古市場は非常に強いマーケットでもある。
だから、このマーケットをターゲットにウオール街のかしこい人々が手練手管でサブプライムローンのシステムを作り、それに保険をかけて、世界中の投資家に証券会社を通じて金融証券として売りさばいていたのだから、いかにアメリカの中古家屋市場が人気であるか納得できる。

なんで経済アナリストみたいに、購入した家のことをごたごたと書きたがるのか?と思われるかたもあると思うが実は、この私の借家に今月借り主が決まり、またまたこの悲惨なバブルの疵あとを認識せざるを得なかったからである。

次回に続く。