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葉織る。

言葉の中にそれを紡ぎ織った人が見えても、それは虚像かもしれない。

助言が失敗体験に繋がらないようにしたい。

2020-10-25 11:38:24 | 仕事

 例えば、膝痛で困っている患者に対して。
 マッサージやストレッチで緊張を緩和すれば、一時的に楽にはなるが、これが根本的な解決になることは少ない。
 膝痛の原因は、加齢もだが、体重の増加と運動不足が大きいので、これらを改善する必要があるのだ。

 だが、減量のための食事や運動についての助言は、正直言って難しい。
 その一番の原因は、節度ある食事や適度な運動の必要性を、患者自身が「分かった」つもりになっていることだと思う。

 加えて、この情報化社会である。
 痩せるための食事や運動の情報なんて、幾らでも手に入るのだ。
 そういう情報を仕入れることに熱心な人は、幾つもの方法や、その問題点(例えば糖質制限ならエネルギー不足、筋トレなら過負荷による障害など)まで知ってはいるが、一番効率のいい方法に固執するあまり、何も始められずにいる。
 逆に情報を仕入れることに疎い人は、やはり何から始めればいいのか分からずにいる。

 さあ、そういった「始められない」落とし穴にハマった人に、あれこれ助言をしたとしても、まあ大抵は実行しないし、そもそも覚えないものだ。
 いや、やらないのも覚えないのも、助言の内容が悪いからかもしれないし、それで興味を持てなければやる気も起きないだろう。
 それでも「やらない」だけなら、それは只の「ゼロ」である。
 だがそれが、助言を受けたのに「出来なかった」という失敗体験になったら、これはマイナスである。
 それは細やかなマイナスだが、積もれば確実に患者を健康的な習慣から遠ざけてしまう。

 そういうリスクを避けるために、とにかく第一の原因を加齢として、「仕方ない」「ある程度の痛みは受け入れて」「現状維持で付き合っていく」という方向性の言葉を並べるのも一手段ではある。
 実際、これがどうやら「諦め」よりも「安心」に繋がるケースは少なくないようだし。

 しかし私はどうも「仕方ないから受け入れる」パターンは苦手で、そういう言葉がスラスラと出てこないのだ。
 だからいっそ、余計な助言はせずに、マッサージに専念することの方が多い。
 いや、それは言葉を使用していないだけで、触覚によるノンバーバルコミュニケーションで、心身との向き合い方を助言しているのである。

 いやいや、助言というよりは、交渉とかお願いとかお祈りとか、雑多な意味を持つともいえるし、言葉に出来るような意味は無いともいえる。
 本質的にマッサージとはそういうものだ。

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