≪12/13≫
守備のスペシャリスト・三木亮
絶対にミスが許されない試合終盤に守備固めと出場し、そのプレッシャーをはねのけミスなくベンチに戻ってくる。ロッテにも3年連続で内野の全ポジションを守った三木亮をはじめ、試合終盤の“守備固め”でチームの勝利に貢献した選手が多かった。
なによりも凄いのが、今季守備から途中出場した選手は22人いたが、そのうち失策したのはショートの小川龍成(8月28日の楽天戦)とエチェバリア(10月30日の日本ハム戦)の2人だけ。それも2失策のみ。守備固めに限らず代打や代走から出場しそのまま守備についた選手を含めても、小川龍成、エチェバリア、井上晴哉、菅野剛士の4人だけで、その他の選手たちは無失策だったのだ。
特に素晴らしかったのが“ユーティリティープレーヤー”の三木だ。守備固めで出場したポジションを見ると、一塁で47試合、二塁で2試合、三塁で15試合、遊撃で3試合に出場したが、もちろん無失策。
2019年に行った取材では「本当にいつ出番がくるかわからない状況。いつ出されても後悔のないような準備の仕方をしている」と話し、試合前の練習から「バッティングにしても守備にしても、練習の1球目をしっかり良い形で入れるように意識しています」と語っていた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で取材制限により今季は三木に取材ができなかったため、現在の考え方についてわからない部分はあるが、試合前の練習から“試合”のための準備を重ねてきたことは変わっていないはずだ。
寿司パフォーマンスやベンチでのムードーメーカーとしての貢献度について注目されることが多いが、どのポジションでも安定した守備力を発揮するという部分も、もっと評価されて良いだろう。
藤岡、田村は守備固めからバットでも貢献
藤岡裕大と田村龍弘は守備から出場し、回ってきた打席で結果を残すことが多かった。
藤岡は今季新人時代の18年以来となる規定打席に到達し、田村も捕手としてチーム最多の70試合に出場しており、“守備固め”というくくりで2人の活躍を紹介するのは少し違うのかもしれない。ただ、守備から途中出場したときの打撃は素晴らしかった。
藤岡は4月2日の日本ハム戦、11-0の6回にショートの守備から途中出場すると、7回の1打席目にレフトへの二塁打を放ち、先頭で迎えた9回の2打席目もレフトへ安打とマルチ安打を達成。4月7日のオリックス戦も3-1の7回からショートの守備で出場し、その裏に回ってきた打席でライトへ2ランを放った。
ちなみに藤岡は4月7日のオリックス戦を最後に守備固めからの出場はなく、翌4月8日のオリックス戦で『7番・ショート』でスタメン出場して以降は、ショートやサードでスタメン出場した。守備から回ってきた打席で結果を残し、スタメンに返り咲いた。
一方の田村は加藤匠馬、柿沼友哉など併用も多く、試合終盤での守りから登場することも多かった。守備だけでなく、バットでも7打数4安打、打率.571、2打点と存在感を示した。7回の守備から出場した8月24日の日本ハム戦は、0-3の9回に三塁線を破る適時二塁打。8回の守備から途中出場した8月29日の楽天戦は、0-0の9回に二死一、二塁の場面で、3ボール2ストライクから宋家豪が投じた10球目のチェンジアップをしぶとくレフト前に弾き返す決勝の適時打を放った。
守備から途中出場するということは、ある程度勝ちが計算された場面で出場することが多い。“勝っている場面”でのミスは、勝敗を左右する。そのプレッシャーに勝って、ほとんどミスがなかった選手たちに大きな拍手を送りたい。
▼ 守備から途中出場した選手
田村龍弘 捕:18試 0失
柿沼友哉 捕:18試 0失
江村直也 捕:16試 0失
加藤匠馬 捕:11試 0失
佐藤都志也 捕:9試 0失
宗接唯人 捕:3試 0失
吉田裕太 捕:1試 0失
三木 亮 一:47試 0失 二:2試 0失 三:15試 0失 遊:3試 失0
高濱卓也 一:10試 0失
井上晴哉 一:5試 0失
岡 大海 一:3試 0失 左:6試 0失 中:8試 0失 右:11試 0失
菅野剛士 一:1試 0失 左:2試 0失 右:2試 0失
小川龍成 二:1試 0失 遊:4試 1失
安田尚憲 三:2試 0失
鳥谷 敬 三:1試 0失 遊:1試 0失
エチェバリア 遊:17試 1失
藤岡裕大 遊:6試 0失 3打数3安打 2打点
和田康士朗 左:1試 失0 中:21試 失0 右:9試 失0
加藤翔平 左:1試 0失 中:1試 0失
福田秀平 左:1試 0失
高部瑛斗 左:1試 0失
藤原恭大 中:8試 0失
文=岩下雄太
(ベースボールキング)
****************************************************
≪12/14≫
ロッテ小島和哉&岩下大輝が踏んだ「ピッチャープレート」に見た工夫と苦悩
<潜入>
ロッテは2年連続2位でシーズンを終えた。近未来の常勝軍団構築へ、若手の台頭は必須になる。楽あれば、その倍の苦あり。今季ももがきながら、パの猛者たちに立ち向かった。先発陣の軸になった小島和哉投手(25)と岩下大輝投手(25)。同世代の2人が踏んだ「ピッチャープレート」に見えた工夫、苦悩に“潜入”する。【金子真仁】
◇ ◇ ◇
小島のマウンド姿に違和感を覚えたのは3月16日、札幌ドームのオープン戦でのこと。何か違う。隣の日本ハム担当も首をひねる。
「あれ? 小島って、三塁側でしたっけ?」
それだ。ピッチャープレートの最も三塁側を踏んでいる。前年は一塁側だったはず。映像も使って前後の登板も注視する。三塁側を踏む日もあれば、真ん中を踏む日も。開幕後の初先発前に明かしてくれた。
「三塁側は景色が変わりすぎたので、一塁側と真ん中でうまく使い分けて投げられたら。ゾーンに入っていく角度や軌道が、プレート半足分でも変わってくるので、そのへんまでうまく使えるように」
プロ2年目の昨季は7勝8敗。立ち上がりや大事な局面に弱かった。3年目を前に試行錯誤を重ね、引き出しを増やそうとした。
開幕から5登板連続で白星がつかなかった。小島は動いた。プレートの最も一塁側にあった左つま先を、人知れず5センチほど三塁側に動かした。半足分どころか指1本分。外角の制球が安定し、一気に飛躍した。「常に変化を求めていろいろやっています」。メンタルも強くなり、2桁勝利と規定投球回を達成した。
いつも小島とキャッチボールする岩下は、前半戦だけで8勝した。猪突(ちょとつ)猛進の裏で彼もまた、模索した。6月2日の中日戦(バンテリンドーム)。いつもプレート一塁側を踏む岩下が三塁側を踏んだ。時には同じ打者に対し1球目、2球目に一塁側を踏み、3球目でいきなり三塁側へ。その逆も。位置を変えた直後の痛打もあった。「何というか迷いがありまして」。
勢いも前半戦最後の7月13日西武戦(メットライフドーム)で止まった。勝利投手にはなったが5回7安打、奪三振はゼロだった。
「普通に合わせられたイメージが。それが強く残ってぬぐいきれなかったというか、怖いものが多く見えちゃったのかなと」
めっきり勝てなくなり、再調整後、先発復帰戦ではプレート真ん中を踏んだ。「何も証明できていないマウンドがずっとなので。何か変えなければいけないっていうのが強くて」。
明るい岩下が迷い続けた1年間。「正直、まだ吹っ切れてないですけど僕の中で終わり切れてない部分があるので。しっかりと気持ちの入った投球ができれば」。最終登板となったCSファイナル。一塁側を踏みしめ、オリックス相手に本来の力強さを見せた。
もがいた足跡が、明るい未来につながる。
(日刊)
****************************************************
≪12/14≫
代走の切り札たち
試合終盤の緊迫した場面に代走で出場し、走るとわかった場面で盗塁を決める。様々なプレッシャーを跳ね返し、今季のロッテの代走での盗塁数は“30”個だった。
その内訳は、盗塁王に輝いた和田康士朗が21盗塁、岡大海が5盗塁、小川龍成が2盗塁、三木亮と高部瑛斗が1盗塁だ。
和田は昨季代走で15盗塁だったが、今季は代走だけで21盗塁を決めた。和田は代走の役割について「代走で出るからには少しでも相手のミスで次の塁を狙えるようにはしています」と話す。
特に素晴らしいのが代走での21盗塁中18盗塁が3球目以内(盗塁を決めたときに打席に立っていた打者)に決めたこと。1球目が8盗塁、2球目と3球目が5盗塁ずつ、4球目が2盗塁、5球目が1盗塁という内訳だ。
和田は早いカウントから仕掛ける理由について、「早いカウントでいかないと、バッターにも迷惑がかかってしまいます。なるべく早いカウントで走るようにしています」と明かした。
半分以上は和田が稼いだ数字ではあるが、岡、小川、高部と走れる選手が控えていたこともあり、シーズン通して“代走”のバリエーションは豊富だった。シーズン序盤は和田、岡のスペシャリストが同時に代走で出場することもあり、5月18日のオリックス戦、6月8日のヤクルト戦は揃って盗塁を決めた。岡も今季代走で決めた盗塁は3球目以内が5盗塁中4盗塁で、初球で成功させたのは2度。
ちなみに今季ロッテ全体で、代走で決めた盗塁数は30だったが、24盗塁が3球目以内に成功させたもの。和田に限らず、早いカウントから積極的に仕掛けるのがロッテの代走の特徴だった。
▼ 代走盗塁成績
和田康士朗 21盗塁
岡 大海 5盗塁
小川 龍成 2盗塁
三木 亮 1盗塁
高部 瑛斗 1盗塁
※途中出場からの盗塁は含まない
盗塁だけじゃない!
盗塁を決めることもそうだが、先を狙う走塁で相手にプレッシャーを与え続けることも代走の役割のひとつだ。
4月7日のオリックス戦では8-2の8回二死一塁から安田尚憲のファーストの頭を超える当たりに、一塁走者の代走・和田が一塁から長駆ホームイン。4月13日の楽天戦では、3-1の8回一死一、二塁から藤岡裕大のセンター前に落ちる安打で、二塁から代走の和田がヘッドスライディングでホームインする好走塁を見せた。
9月12日の楽天戦では8-2の9回無死満塁からエチェバリアの右犠飛で、三塁走者に続き二塁走者の代走・岡が三塁へタッチアップ。一塁走者の三木もライトからの送球が乱れている間に二塁に進んだ。点差が開いていても、相手のミスを突いて、1つでも先の塁を狙い続けた。
和田という“足のスペシャリスト”が代走に控えていたことに加え、岡、小川、高部、藤原恭大といった足の速い選手がいたことで、終盤に躊躇することなく代走を送ることができた。特に9回で打ち切りだった今季は、その強みを生かしたといえるだろう。
文=岩下雄太
(ベースボールキング)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます