歌う狸ブログ

街角狸マニアがあらゆるマニアについて歌う「マニアソングス」誕生秘話

ジャズソング的アプローチ『スリップ・スライディン・アウェイ』

2020-07-12 21:53:44 | 自己紹介
今回はオリジナルソングの紹介ではないのですが、ずっとやってみたかった曲を録音したので勢いにまかせて記事にしてしまおうと思います。以前の記事で書いたのですが、私は村田食堂というバンドをやっていましてジャズソングと言われる戦前のジャズの名曲をレパートリーにしています。ジャズが初めて日本に伝わった当初、英語の歌詞を分かりやすく日本語に訳して歌われたのがジャズソングですが、その日本語訳自体が今となっては昔の言葉なので、二重にクッションを挟んだような独特な感覚を味わえます。

ジャズソングというジャンルは戦後廃れてしまったのですが、この英語の歌を訳詞して歌うというスタイルは一部のフォークシンガーに引き継がれたようです。特に私は浅川マキさんの訳詞が好きで、Gerry Goffinさんの"It's not a spotlight"を訳した『それはスポットライトではない』は常に心のヒットチャートナンバーワンです。友部正人さんが訳したBob Dylanさんの"I shall be released"も素晴らしくてバンドで歌っています。

訳詞とは言ってもあまり原詩とかけ離れた訳ではなく、基本的に原詩に忠実に訳しつつ、訳者の気持ちも乗っているというのが素晴らしいのですが、日本語は英語に比べて音に対して文字を詰められないので、これは結構至難の技なのです。私も偉大な先輩方にならって好きな歌を訳して歌う練習をしていますが、今回はついにPaul Simonさんの"Slip Slidin' Away"に挑戦してみました。

Paul Simonという人は音楽の神様みたいな人ですが、やはり言葉のセンスが凄まじいと思います。1981年にニューヨークのセントラルパークで開かれたサイモンとガーファンクルの再結成コンサートには50万人が詰めかけたそうです。そのアンコールで、「今日は本当は花火を打ち上げたかったんだけど、消防法の関係で出来なかったので代わりにとっておきの音楽で盛り上がろう!最後の曲は、サウンドオブサイレンス(沈黙の音)」という最高のMCを決めてくれていました。

Slip Slidin' AwayはそんなPaul Simonさんが1977年に作った曲で、当時の心境を歌っているのだと思いますが、最新のステイホーム中に配信された動画でも歌っているので、今も同じような気持ちを持っているのでしょう。タイトルのところはうまく訳せなかったのですが、「いいところまで来て足をすくわれる」というか結局ゴールにはたどり着けないという意味にとらえました。

マニア活動でも、音楽でも、やってもやってもどこかにたどり着ける気がしない、というのは常日頃感じていることです。泣き言を言ってるんじゃない!って言われそうですが、音楽の神様Paul Simonですらこう感じているのですから我々も自信を持って泣き言を言ってもいいのです。

それでは、セントラルパークでアートガーファンクルと一緒に歌っているバージョン、最新のステイホームバージョン、そして私の訳詞バージョンの動画を貼り付けておきますのでお時間ありましたらご覧ください。





Slip Slidin’ Away
訳詞:むらたぬき

Slip slidin’ away
Slip slidin’ away
どれだけ歩いても
どこにもたどりつけやしない

男がいた
私と似た男
全身全霊で女を愛した
聞いてくれ怖いんだ
愛が強すぎて自分が消えてしまいそうだ

女がいた
妻になった女だ
彼女はいつもこう言っていた
晴れた日が好き
雨が降らない日
あなたが横になっている日は
人生を悔やむから

父親がいた
どうしても伝えたいことがあった
遠くからやって来て
眠りについた息子を見ると
静かに帰っていった

神のみぞ知る
神のなすがまま
もろすぎる人間に知るよしもない
せいぜい働いて糧を得る
順調に歩いているようで
一歩も進んではいない


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