富士桜ヶ丘クレモナ通り。朝、パンケーキとソーセージ。コーヒー。昼、BBQチキン、ライス、キヌさや。キウイパイ。夜、鯛のオーブン焼きとサラダ。テキーラショット、白ワイン一杯。
私は、年に一度の句集コンテストに応募する81句をまとめる。会計決算のようなものだ。一年間に溜まった駄句の山からどれだけの句が残せるか、否応なしに明確となる。
ニックはチェロの練習と筋トレとテレビ。魚屋へ魚を見に行き、鯛の半身を買って帰る。
夜ニックは、ムーティ指揮、アーロンコープランド作曲の、”リンカーンの肖像”という、オーケストラと俳優の朗読の曲を、聞け、聞け、と言う。感極まって涙ぐむ。俳優より大きな声で、リンカーンの演説を朗読する。全部暗記してる。この演説は、「シェークスピアに勝るとも劣らない」そうだ。
私が最初に、ニックの下宿を見に行った時、寝室の壁にリンカーンの肖像の切り抜きが画鋲で留められてあった。その横に並んでたのはロバート・ジョンソンという、大統領じゃなくてブルーズシンガーのギター抱いた写真。その後リンカーンの演説とジョンソンの歌を何度も何度も何度も聞かされたんで、どんだけ好きなのか今はわかる。ニックは写真を飾るとかミーハーなことはしない。リンカーンとジョンソンだけが特別だったのだ。
