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ミセスローゼンの道後日記

春なれや空から声が降つてくる

 ニューヨークの公園。戸外浴を楽しむ人々の頭上から、ドローンが社会的距離を保ちましょう、と呼びかけている悪夢のような現実。



日本人が慇懃にお辞儀して社会的距離を保ちつつ社交してきた伝統には、島国で疫病蔓延を防ぐ知恵が隠されていたのだらうか、とSF的な事も考えさせられる。



社会的距離を保つ方法として、今はこれが最良であらう。わが家も『ローゼン・ズーム・セーダー2020』に参加した。ローゼン家の父方の親族とその友人25家族がヴァーチャルに共にパスオーバー(過越祭)を祝う。まずニックの従兄弟ロンの司会で、全員が自己紹介。時々カメラが不具合となるが、ロンの娘エイミーの助けで復活。





全員が『ハガダ』という本を順番に読み上げ、ワインを飲み干し、エジプトの奴隷であった当時の苦難を忘れない為の象徴的食物を頂く。「苦菜(西洋わさび)が無かったの。」と私が生わさびのチューブを見せると、皆拍手喝采して笑ってくれる。





煉瓦を積み上げる苦役を表すハローセス(刻み林檎、シナモン、ナッツ、デザートワインを混ぜた物)、苦しみの涙である塩水浸しパセリとセロリ、生贄の羊の骨、焼かれた神殿を象徴する焼き卵など食す。

興味深いのは、ハガダの中に「疫病除」の項が存在する事。日本の神社の手水と同じく、左、右、左、と手を洗う。ハガダの最中に手洗いの時間が数度ある。マッツァ(種無しパン)を布巾に包んでニックが風呂場に隠し、食後、私に見つけさせる儀式。これは何の為だったか忘れた。私はアップルパイを焼き、ヘブライ語の健康を表す(鳥居みたいな)文字を飾った。無事と健康を祈り、昼からワインを丸一本空けて宴を終えた。二日酔に苦しむのもユダヤ人の苦難を偲ぶ為、そして家族と笑って過ごす為。死に直面した苦難の時も笑顔を忘れないのがアンネ・フランクの教えであり、ユダヤの誇りである。





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