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ミセスローゼンの上人坂日記

白鳥は何処へも帰らない帰れない

誰からも愛されたチェリスト、リン・ハレルの突然の死から四日たった。ニック達、残されたチェリストはおろおろしている。電話し合い、リンの思い出を語り合い、「君と話して心が慰められたよ。」と言い合い、またすぐ誰かに電話する。




昨年秋NYコンサートシーズンの幕開け彼はカーネギーホールでベートーベン・トリプルをアンネ・ゾフィーさん等と弾き、先月LAの自宅でハウスコンサートもされた。ニックの親友がおよばれした。最近までお元気だったのだ。ニックには師と呼べる人がもう居ない、せめてもと、ピアティゴルスキークラスの先輩や仲間に会うたび熱心に教えを乞い、一緒にチェロを弾いてた。師系は異なるがリンもその一人だった。人柄に敬服してた。まだ信じられない。




私がリンに最初に会ったのはハルビンの国際音楽祭。ニックも彼も審査員で、マスタークラスもそれぞれあった。私はどちらも見学した。その時リンはエンドピンの下に敷く陶板がすごいんだ、と語ってた。日本製の飯田チェロにも興味を示し、「弾いてみたいから貸して。」と言って部屋に持ち帰った。誰にでも気さくなリンだけど、私にとっては雲の上の人。直に話せただけでも幸運であった。コンサートにも何度も行ったが、元のエイブリーフィッシャーホールで娘達と聞いたドボコンが思い出深い。今ニックがドヴォルザークを練習しているのが、鎮魂歌に聞こえる。





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