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ミセスローゼンの道後日記

社会鍋まじめなかほの踊りけり

 
社会鍋は十二月の季語。コロンバスサークルの地下鉄を出たところや、メイシーズの前などに鍋をつるして、貧しい人のために寄付をつのっている。先日は、いつかどこかで見たような顔の人が、にこりともせずに踊っていた。

三人の友人といっしょに、NYシティバレエへナッツクラッカーを見に行く。私はNY十年目にして初めて見た。クララの眠るところのバイオリンソロが素晴らしくロマンチックで、ダンサー達は小さい子に至るまでリズムに厳しくてパワフルだった。別れぎわ、最近私が直面しているhardship(源氏物語でいえば明石の段)について少し説明すると、若い友人が突然泣きだす。抱き合って私もちょっと泣いて、笑って別れる。甘ずっぱいような気持ちを抱いて、雪風に吹かれ地下鉄に乗る。

クリスマススペシャルレッスンってんで、mm先生ははりきって、サービスで、がんがんに厳しい。最後に、こんぺいとうの精をトウシューズで踊ってくださるのが夢のように美しい。先生の踊りもまだまだ成長し続けているのだ。そんなお教室って他にあるだろうか。

郊外へ帰るバスに乗って、暖かい車内でぼうっとしてると、また乗り越してしまった。見知らぬ風景。雪の上にざんざん降りの雨。運転手さんに、恐る恐る、「あのう○○で降りたかったんだけど」と打ち明けると、「もうここは次の町だよ」と、驚いて答える。そのときたまたま対向車線に、反対行きのバスが通りかかる。運転手さんはバスを止めて、向こうのバスも合図して止めて、窓から顔を出して、向こうの運転手に事情を話して頼んでくれる。乗客が「走れ走れ」と言うので、私は荷物をまとめて、向こうのバスに飛び乗る。バス停でもなんでもないところにバスを止めるほうも止めるほうだが、止まるほうも止まるほうだ。そっちのバスの女運転手さんは、「住所は何?」と私に聞いて、その近くの(これまたバス停でもなんでもない)道端に止めて、下ろしてくれる。スクールバス状態。渡る世間に鬼はなし、と思わずつぶやく。
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