私はこれまでに二度、自殺を考えたことがある。最初は中学二年生のときで、二度目は作家としてはたらきはじめたあとのことだった。だが、現在、私はこうして生きている。
人間の一生とは本来、苦しみの連続なのではあるまいか。人は生きていくなかで耐えがたい苦しみや、思いがけない不幸に見舞われることがしばしばあるものだ。それは避けようがない。
憲法で幸福に暮らす権利と健康な生活をうたっているのに、なぜ?と腹を立てたところで仕方がない。いまこそ私たちは、究極のマイナス思考から出発すべきではないか。
まず、これまでの人生観を根底からひっくり返し、「人が生きるということは苦しみの連続なのだ」と覚悟するところから出直す必要がある。私はそう思うことで「こころ萎(な)え」た日々からかろうじて立ち直ってきた。
著者 五木寛之 ―『人はみな大河の一滴』本文より―
人間の一生とは本来、苦しみの連続なのではあるまいか。人は生きていくなかで耐えがたい苦しみや、思いがけない不幸に見舞われることがしばしばあるものだ。それは避けようがない。
憲法で幸福に暮らす権利と健康な生活をうたっているのに、なぜ?と腹を立てたところで仕方がない。いまこそ私たちは、究極のマイナス思考から出発すべきではないか。
まず、これまでの人生観を根底からひっくり返し、「人が生きるということは苦しみの連続なのだ」と覚悟するところから出直す必要がある。私はそう思うことで「こころ萎(な)え」た日々からかろうじて立ち直ってきた。
著者 五木寛之 ―『人はみな大河の一滴』本文より―