井上もやしの日常

ほぼ「つぶやきの墓場」となっております。ブログやSNSが多様化して,ついていけないのでございます。

映画「クヒオ大佐」 ~この中途半端感は~

2009-11-23 22:05:45 | Weblog
「空気人形」を見て家に帰ってきましたが、これから年末に掛けて仕事が忙しくなり、映画どころではなくなりそうなので、「クヒオ大佐」を見終わってから塾へ行った二男を迎えに行くという条件で行ってきました。
(^_^;)

 まずは……、松雪泰子の鼻が高くて、各シーンで付け鼻に見えました。この映画だからね(苦笑)。

 まとまりのよい「空気人形」を見た同じ日に見られた「クヒオ大佐」は分が悪いのでしょうが、どっちつかずの中途半端感だけが残りました。冗長で、映画館では椅子を座り直す音があちらこちらで響いていました。B級ニュースの範疇に入るアメリカ軍人になりすました結婚詐欺師の物語は周知のことであったので、だまされる側の女性の心理を丹念に描いて欲しかったのですが、内面に迫る描写はほとんどありませんでした。また、ストーリー的には「クヒオ大佐危機一髪」です。ディカプリオ主演の「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」のように華麗に人々をだますシーンよりは、化けの皮がはがされそうになるシーン・クヒオ大佐がだまされそうになるシーンの寄せ集めです。でも、素直に笑えないのです。コメディ作品として成立させてもよかったのに、そうもなっていません。また、湾岸戦争での日米関係(日本は湾岸戦争の際にアメリカの要求に屈して莫大な資金援助したこと。)を所々で持ちだしてきますが、クヒオ大佐はそのアナロジーになりません。それとは全く関係ないです。何かしつこいです。

 内面に迫ることができないので、インチキっぽい偽アメリカ軍人にだまされていく女性がただのおバカさんにしか見えません。残念です。ただ、ラストのクヒオ大佐が自分の生い立ちを虚々実々混ぜ合わせて回想シーンで見せるあたりは上手くまとめてくれるのかなと思いましたが、アメリカ軍が助けに…(以下略)となると、監督や脚本家は本気でやる気があるのかなと思ってしまいました。

 だまされたのは観客でした。今日はメンズデイだったから、被害額は入場料1,000円だったけど。


 ☆ 総合得点  72点

映画「空気人形」  ~他者の総和~

2009-11-23 15:33:51 | Weblog
 福島フォーラムで「空気人形」は正午始まり、「クヒオ大佐」は午後6時40分始まりの、2作品共に1日1回のみ(!)上映です。「2012」や「クリスマス・キャロル」のようなメジャー系は1日に何度も上映されますが、マイナーな作品は見に行くのが辛い時間帯です。もちろん、ライバルのワーナーマイカル福島ではどちらも上映なしですから、文句は言えないところです。平日にこの回に行こうと思ったら、職場の爪弾きか家庭不和の基となることが火を見るより明らかです。それで祝日の今日に行ってきました。

「空気人形」とは俗に言うダッチワイフです。その人形が心を持ったことから始まる物語です。古来、人形やロボットが感情を持った物語は多く作られてきましたが、ダッチワイフという視点が非常に面白いものとなっていました。全体的に、詩的で寓話っぽい流れで、ぐいぐいと引き込まれていきます。人形役のペ・ドゥナがスリムな肢体で、かつ、透明感を持ち合わせ、人形役にぴったりでした。

 古いアパートで持ち主の秀雄(板尾創路)と暮らす空気人形「のぞみ」が、ある日、心を持ってしまう。彼女は秀雄が仕事場のファミレスに出かけると、いそいそと身支度を整え、一人で街へと歩き出す。レンタルビデオ店で働くことになり、店員の純一(ARATA)と知り合う。ひそかに純一に思いを寄せる彼女は……。
というストーリーです。

 のぞみが街で出会う人々がなかなかの曲者です。曲者と言っても悪人ではなく、何らかの悩みを抱えたり、孤独感を持っていたり人々で、これは物語中に挿入される吉野弘の詩「生命は」の一節「世界は多分/他者の総和」を表現しているようです。人間は支え合っているようで、実は1人1人は耐えられないくらいに孤独という哀しいけど、これは真実かもしれません。こんな人間の世の中で、人形は心を持った故に、いろいろな知識を周りの人から徐々に得て、「自己と他者」「生と死」等を自覚していきます。周りの人々が彼女を空気人形と知ってか知らずか分かりませんが、優しく世の中のことや映画のことなどを教え、彼女が幼児のような吸収力でそれらを理解していくところは私の琴線に触れてしまいました。(T_T)このあたりはロビン・ウィリアムズ主演の映画「アンドリューNDR114」でも上手く描かれていたところですね。

 彼女が心を持ってしまった悩みを人形師(オダギリジョー)を訪ねて打ち明けるあたりから、急展開となります。恋人の純一に対して……(略)は説明不足です。人間社会でずっと学習を続けたのぞみなのですから、人間と人形との心や構造の違いはしっかりと理解しているはずです。安易な「阿部定」的な終わり方はもったいない気がしました。


 ☆ 総合得点  90点