問題を抱えた生徒のカウンセリングの基本は「受容と共感」である。これは,教育
相談のベースとなっている。
しかし,発達障害がある場合,この「受容と共感だけでは失敗する」と京都ノート
ルダム女子大学教授の藤川洋子氏はいう。藤川氏は現職に就く前,家庭裁判所調査官
として大阪,京都,東京など各地で勤務して様々な子どもたちと面談にあたった。そ
して発達障害の一つであるアスペルガー障害に着目し,少年非行との関連で研究報告
をした人物である。
その講話等を基に,非行のメカニズムと発達障害のある子の適切な対応について述
べたい。
1 非行のメカニズム
非行(問題行動)のメカニズムは次の3つの要因からなる。
①器質的要因
②心理的要因
③社会・文化的要因
①器質的要因とは,生物・医学レベルの問題である。生まれながらに脳の器質的な障
害がある場合であり,発達障害はこれに当たる。
②心理的要因は育つ過程で心理的外傷体験を負った場合である。いじめ,虐待による
感じ方の変化,そして情緒障害に陥った場合がこれに当たる。
③社会・文化的要因は家族,学校,地域の人間関係から問題行動が形成されていった
場合である。
これまでは②と③から説明されることが多かった。しかし,近年①についての科学
的解明が進み,「わかりにくい」とされてきた少年に新たな視点が加わった。
2 発達障害と本人・親の傷つき
以下,陥る典型的な経過である。
○PDD(広汎性発達障害)
「場違い」「常識外れ」なことをして,いじめの対象になる。
○ADHD(注意欠陥多動性障害)
「落ち着きがない」「何度も同じ間違いをする」ため叱られ続ける。
↓
親のしつけ不足,愛情不足と決めつけられやすい(烙印を押されやすい)
↓
無力感,対人不信感が強まる
(本人・親とも)
3 適切な対応の社会的必要性
かなり重い事件で,発達障害の診断が下りた事件がこれまで多数起きている。
東京家裁でのPDD(広汎性発達障害)約50例の研究では以下に分類される。
①対人関係型
※ 男の子が女の子に問題行動を起こす。スキルがないために起こる。
②実験(人体実験・物理実験)型
※ 異物を飲ませる等し,徐々に弱る姿を観察の例。
③パニック(フラッシュバック)型
※ 知覚過敏,感覚過敏等の要因。
④清算(損失補填を請求する)型
※ しつこく以前のことを追求する等。
⑤その他,障害起因型
※ 作り話等。
その特質から犯罪が引き起こされる事実が分かる。しかし,障害があっても,通
常と同じく判決が下される例が多くなってきた。
発達障害があるからこそ悪いことをさせない
この決意が我々教師に,また関係するものに必然である。
4 適切な対応
藤川氏は「受容と共感」だけでは失敗するという。なぜか。それは,問題行動を
起こしたとき「受容と共感」だけでは,もう一度問題を繰り返してしまうからだ。
次に起きたときには,取り返しのつかない現実となってしまう。少年院等に処置さ
れているうち,発達障害,知的障害を含む割合は7割とも報告される。したがって
対応は次のようなになる。
・受容と共感だけでなく受け止めた後事実を伝え,正しい行動を教える。
・非行に対しては,特別扱いや臨機応変の扱いをせず,一貫性のある毅然とした正
しい方向付けをした対応を行う。
成長の初期に発達障害の子どもたちと出会う教師の責務は重大である。
※ 参考文献
・藤川洋子著「非行は語る」新潮選書
・藤川洋子著「少年犯罪の深層」ちくま新書
相談のベースとなっている。
しかし,発達障害がある場合,この「受容と共感だけでは失敗する」と京都ノート
ルダム女子大学教授の藤川洋子氏はいう。藤川氏は現職に就く前,家庭裁判所調査官
として大阪,京都,東京など各地で勤務して様々な子どもたちと面談にあたった。そ
して発達障害の一つであるアスペルガー障害に着目し,少年非行との関連で研究報告
をした人物である。
その講話等を基に,非行のメカニズムと発達障害のある子の適切な対応について述
べたい。
1 非行のメカニズム
非行(問題行動)のメカニズムは次の3つの要因からなる。
①器質的要因
②心理的要因
③社会・文化的要因
①器質的要因とは,生物・医学レベルの問題である。生まれながらに脳の器質的な障
害がある場合であり,発達障害はこれに当たる。
②心理的要因は育つ過程で心理的外傷体験を負った場合である。いじめ,虐待による
感じ方の変化,そして情緒障害に陥った場合がこれに当たる。
③社会・文化的要因は家族,学校,地域の人間関係から問題行動が形成されていった
場合である。
これまでは②と③から説明されることが多かった。しかし,近年①についての科学
的解明が進み,「わかりにくい」とされてきた少年に新たな視点が加わった。
2 発達障害と本人・親の傷つき
以下,陥る典型的な経過である。
○PDD(広汎性発達障害)
「場違い」「常識外れ」なことをして,いじめの対象になる。
○ADHD(注意欠陥多動性障害)
「落ち着きがない」「何度も同じ間違いをする」ため叱られ続ける。
↓
親のしつけ不足,愛情不足と決めつけられやすい(烙印を押されやすい)
↓
無力感,対人不信感が強まる
(本人・親とも)
3 適切な対応の社会的必要性
かなり重い事件で,発達障害の診断が下りた事件がこれまで多数起きている。
東京家裁でのPDD(広汎性発達障害)約50例の研究では以下に分類される。
①対人関係型
※ 男の子が女の子に問題行動を起こす。スキルがないために起こる。
②実験(人体実験・物理実験)型
※ 異物を飲ませる等し,徐々に弱る姿を観察の例。
③パニック(フラッシュバック)型
※ 知覚過敏,感覚過敏等の要因。
④清算(損失補填を請求する)型
※ しつこく以前のことを追求する等。
⑤その他,障害起因型
※ 作り話等。
その特質から犯罪が引き起こされる事実が分かる。しかし,障害があっても,通
常と同じく判決が下される例が多くなってきた。
発達障害があるからこそ悪いことをさせない
この決意が我々教師に,また関係するものに必然である。
4 適切な対応
藤川氏は「受容と共感」だけでは失敗するという。なぜか。それは,問題行動を
起こしたとき「受容と共感」だけでは,もう一度問題を繰り返してしまうからだ。
次に起きたときには,取り返しのつかない現実となってしまう。少年院等に処置さ
れているうち,発達障害,知的障害を含む割合は7割とも報告される。したがって
対応は次のようなになる。
・受容と共感だけでなく受け止めた後事実を伝え,正しい行動を教える。
・非行に対しては,特別扱いや臨機応変の扱いをせず,一貫性のある毅然とした正
しい方向付けをした対応を行う。
成長の初期に発達障害の子どもたちと出会う教師の責務は重大である。
※ 参考文献
・藤川洋子著「非行は語る」新潮選書
・藤川洋子著「少年犯罪の深層」ちくま新書