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高等学校の支援2

2018年12月01日 | 教育
 高校での支援の例である。その支援は各機関との連携を通じて実を結び
保護者の意識が変化し,対象生徒の安定した生活へとつなげることに成功
した。以下はその経過である。

1 支援の依頼が届いた

 B高校で問題を抱えた生徒A君がいる。トイレを汚し,触ってしまう。床
につばを吐き続ける。当然周りの生徒とほとんど接触しない。どのように
今後対処していくことが必要であるか,という内容であった。来校しても
らい話を聞くと,A君の行動から,A君がその学校に至るまでの経緯,家
庭環境がはっきり見えてきた。

2 本人の状況

 A君は最近になって発達障害の診断を受けている。周りの生徒とうまく
接することができないことが続き,不登校の傾向がでてきている。

 学校の勉強はしたくない。学校に来てもボーっとしているか,机に突っ
伏している。授業中に校内をうろうろし,静かなフロアーに座って休んで
過ごすことも多い。トイレを汚して触ってしまう。床につばを吐いてしま
う。会話はぼそぼそという感じでかみ合わないときもある。自転車で来て
いたが,現在は保護者の送り迎えである。

3 保護者の姿勢

 大学に進み,専門職についてほしい。そのためには,しっかり勉強しな
ければならない。学校へ休まず登校し,教室の中で学習をすることが必要
である。A君が休みたいといっても時間になったらとにかく学校へ送る。
教室に入らないようなら叱って教室に入れる。帰りたいというA君からの
電話にはしっかり勉強しなければだめだという返事で迎えにはこない。そ
のような姿勢である。

4 担任の話

 進学校である。現在の状況ではA君も苦しいはずである。また,周りの
生徒にも悪影響がある。無理してくるのはよくないのではないか。周りの
生徒も不快感を表し,理解のない状況となっていた。しかし,保護者の理
解のもと,関係教員がA君のかかえる状況を生徒達に伝え,理解を求める
話をしていったため,ずいぶん生徒の間に許容する空気が生まれてきた。
トイレや床を一緒に清掃する生徒もいる。しかし,このままでは限界では
ないか。

5 養護教諭の話

 障害があり,精神的にもつらいだろう。何とか状況を救ってあげたい。
保健室に来ても良いのだが,他の生徒もいろいろあって来ているので,来
づらい面もあるだろう。常に話し合いの席には同席してくれ,自分の問題
として考えている。

6 保護者と1回目の面談

 「様々な問題について聞きたい」ということである。高校へ出向いて生
徒の様子を見た後,面談をした。渡された資料を見ると,本生徒の育った
経過があった。小学生時代は活発でスポーツもでき,自慢の息子であった
とのことである。それが中学3年のころから突然変わった。なぜなのか,
また,今後どのように接したら良いか,ということが箇条書きで書き連ね
てあった。面談をしながら,ありったけの知識を総動員して一つ一つ丁寧
に解答していった。

 中心的に伝えたことは,「A君は現在追い詰められた心理状況にある。
問題行動はその現れである。精神疾患の部分を改善して社会自立へむかう
ことを優先してほしい。学校へ行くことを無理させないでほしい。」とい
うことである。

7 各機関とも相談

 発達障害を専門に扱う医師との相談,発達障害の専門機関との相談の機
会も保護者は積極的に行った。その中で,「医師」からも同様に「A君は
現在追い詰められた心理状況にある。問題行動はその現れである。」とい
うことを言われた。それが大きかった。徐々に意識が変化していったよう
である。その後,もう一度本校へ面談に訪れた。

8 保護者と2回目の面談 

 関係機関で心理検査を行い,そのデータが渡された。その読み取りも含
めて話を伺いたいとのことである。データを見ると,能力的にはやや低い
ところがあるにもかかわらず,背伸びをしてがんばり続けた姿が見えた。
そこにきての高校の受験体制である。当然のごとく,精神的に追い詰めら
れて崩れていく姿が見えた。

 また,「配列」「組み合わせ」という検査項目が弱い。周りの生徒の動
き,その日の状況に合わせて予測を立て動くということが極めて苦手なこ
とが分かった。ボーっと立ってしまう,何もしないでいる状況は,やる気
がないというよりも本当に分からないのである。そういった点を検査の内
容を伝えながら話した。

 このままでは病院への入院治療も必要なことを伝えた。そして,夏休み
は,補修等で学校へ行かせず,とにかくゆっくり過ごさせ,2学期に関し
ては本人と話をして週に何回か行く,帰りたいときには帰るという具合に
まず精神疾患の部分を改善していくことを約束した。

9 改善された

 2学期に入り,トイレでの問題は消えた。保護者の意識が大きく変わっ
た。高校に席を置くだけで十分となり,A君が帰りたいときには1時間で
帰るようになった。周囲とのトラブルもほとんどなくなった。その後,安
定を取り戻し,希望の大学へと進んでいった。
コメント
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