地理講義   

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127.国土総合開発法 特定地域にダム建設の公共事業

2014年01月14日 | ひとやすみ

特定地域総合開発計画(1950~)
国土総合開発計画では全国各地の資源を活用して戦後経済の復興をめざした。当時の総合開発計画の資源は、石炭と水力発電だけであった。ダム建設中心の特定地域として22地域が指定された(1951)。
北海道には特定地域の指定されない。北海道の総合開発は北海道開発庁(1951~2001)による政府直轄事業であり、北海道の総合開発に国費が投入され、開発事業は本州のゼネコンが請け負った。政府の投入した国費を、ゼネコンが回収するという、政治的利権の絡む植民地型の開発であった。
北海道の国費運用は北海道拓殖銀行が独占した。拓殖とは開発すべき未開地の意味つまり植民地のことである。英語名称はHokkaido Coloniak Bank(北海道植民地銀行)であった。通称拓銀は1900年に特殊銀行としてスタートし、1955年に普通銀行に転換し、1998年に経営破綻した。
北海道の総合開発は道路・港湾・空港・ダム建設などの巨大プロジェクトが主体であったが、1990年代には日本政府の財政難によって北海道開発庁が縮小され、巨大プロジェクトが減少してた。そのあおりで拓銀の乱脈経営が表面化し、1998年に経営が行きづまった。

特定地域

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北上特定地域総合開発計画(1950~) 北上川 治水  
北上川は宮城県・岩手県の県境部分(狐禅寺)が峡谷であり、北上川上流域に大雨が降ると、一関周辺は洪水被害を受けた。戦後間もない1947年にカサリン台風、1948年にアイオン台風により、人命・住宅・農地に未曾有の被害があって、北上川流域に治水ダム建設の要求が強かった。当時、岩手県では電力不足で毎週1回は電休日として日中は停電になった。北上山地の集落に電線が届かず、暗くて貧しい集落は「日本のチベット」と言われた。発電用ダム建設の要求も強かった。
国土総合開発法により北上川流域が特定地域に指定され、5大ダムがつくられた。

田瀬ダム(1950~1954。猿ケ石川)
四十四田ダム(1962 ~1968。北上川)
湯田ダム(1953~1965。和賀川)
石淵ダム(1945~1953。胆沢川)
御所ダム(1966~1981。雫石川)

胆沢川の石淵ダムは小型で老朽化し、しかも治水能力が低いことを理由に、2km下流に胆沢ダムが完成した(2013年)。石淵ダムは水没しつつある。

四十四田ダムは北上川本流のダムである。八幡平の松尾鉱山からの鉱毒水に中和剤を投入し、その時に生じる汚泥は、北上川を盛岡まで茶褐色に変えていた。四十四田ダム完成後はダム湖に汚泥が沈殿堆積するので、四十四田ダム下流の北上川には清流が戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 


松尾鉱山跡の中和処理場。汚泥は松川に流れる。

 

 汚泥は四十四田ダムで回収される。

 四十四田

 

 


国土総合開発法     [法律第205号(1950.5.26)]
(この法律の目的)
第1条 この法律は、国土の自然的条件を考慮して、経済、社会、文化等に関する施策の総合的見地から、国土を総合的に利用し、開発し、及び保全し、並びに産業立地の適正化を図り、あわせて社会福祉の向上に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において「国土総合開発計画」とは、国又は地方公共団体の施策の総合的且つ基本的な計画で、左に掲げる事項に関するものをいう。
 (1) 土地、水その他の天然資源の利用に関する事項
 (2) 水害、風害その他の災害の防除に関する事項
 (3) 都市及び農村の規模及び配置の調整に関する事項
 (4)  産業の適正な立地に関する事項
  (5)  電力、運輸、通信その他の重要な公共的施設の規模及び配置並びに文化、厚生及び観光に関する資源の保護、施設の規模及び配置に関する事項
2 前項の国土総合開発計画(以下「総合開発計画」という。)は、全国総合開発計画、都府県総合開発計画、地方総合開発計画及び特定地域総合開発計画とする。
3 全国総合開発計画とは、国が全国の区域について作成する総合開発計画をいう。
4 都府県総合開発計画とは、都府県がその区域について作成する総合開発計画をいう。
5 地方総合開発計画とは、都府県が二以上の都府県の区域についてその協議によつて作成する総合開発計画をいう。
6 特定地域総合開発計画とは、都府県が内閣総理大臣の指定する区域(以下「特定地域」 という。)について作成する総合開発計画をいう。
(国土総合開発審議会の設置)
第3条 第1条の目的を達成するために、総理府に、国土総合開発審議会を置く。
(国土総合開発審議会の所掌事務)
第4条 国土総合開発審議会は、総合開発計画について調査審議し、その結果を内閣総理大臣に報告し、又は勧告する。
2 国土総合開発審議会は、総合開発計画の作成に必要な左に掲げる事項について調査審議し、 その結果を内閣総理大臣に報告することができる。
 (1) 総合開発計画の作成の基準となるべき事項
 (2) 特定地域の指定の基準となるべき事項
 (3) 産業の適正な立地の基準となるべき事項
 (4) 総合開発計画に伴うべき資金及び資材に関する事項
3 国土総合開発審議会は、総合開発計画について必要があると認める場合においては、内閣総理大臣を通じて、関係各行政機関の長に対し、意見を申し出ることができる。
4 関係各行政機関の長は、その所掌事務に係る基本的な計画で総合開発計画と密接な関係を有するものについて、国土総合開発審議会の意見を聞くことができる。
(都府県に対する勧告又は助言)
第5条 内閣総理大臣は、都府県が作成した総合開発計画について前条第一項の規定による報告又は勧告を受けた場合においては、その報告又は勧告に基いて、当該総合開発計画を作成した都府県に対し、必要な勧告又は助言をしなければならない。
 (国土総合開発審議会の組織)
第6条 国土総合開発審議会(以下本条中「審議会」という。)は、委員30人以内で組織する。
2 委員は、総合開発計画に関し学識経験を有する者及び関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。但し、関係行政機関の職員のうちから任命される委員の数は、委員の総数の2分の1以下でなければならない。
3 委員は、都道府県知事と兼ねることができる。
4 都道府県知事と兼ねる委員並びに関係行政機関の職員のうちから任命される委員を除く他の委員の任期は、4年とする。但し、任期が4年の委員で最初に任命される委員のうち、そ の半数の者の任期は、2年とする。委員が欠けた場合における補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 審議会に、会長を置く。会長は、委員のうちから互選する。会長は、会務を総理し、及び 審議会を代表する。会長に事故がある場合においては、会長があらかじめ指名する委員が、 その職務を代理する。
6 専門の事項を調査審議させるために、審議会に、専門委員を置くことができる。専門委員は、関係行政機関の職員及び学識経験を有する者のうちから、審議会の推薦に基いて、内閣総理大臣が任命する。
7 委員及び専門委員は、非常勤とする。
8 前各項に定めるものを除く外、審議会の事務をつかさどる機関並びに審議会の議事及び運営に関し必要事項は、政令で定める。
 (都府県総合開発計画)
第7条 都府県は、その区域について、都府県総合開発計画を作成することができる。
2 都府県は、都府県総合開発計画を作成した場合においては、建設大臣を通じて、これを内閣総理大臣に報告しなければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の規定による報告を受けた場合においては、これを国土総合開発審議会に諮問するとともに関係各行政機関の長に送付しなければならない。
4 関係各行政機関の長は、前項の規定による送付を受けた場合においては、これに対する意見を経済安定本部総裁に提出し、経済安定本部総裁は、これらの意見をとりまとめて、国土総合開発審議会に提出しなければならない。
(地方総合開発計画)
第8条 自然、経済、社会、文化等において密接な関係を有する地域が2以上の都府県の区域にわたる場合においては、関係都府県は、その協議によつて、当該地域について、地方総合開発計画区域を設定して、地方総合開発計画を作成することができる。
2 前項の規定による関係都府県の協議については、当該都府県の議会の議決を経なければならない。
3 前条第二項から第四項までの規定は、地方総合開発計画に準用する。
4 内閣総理大臣は、必要があると認める場合においては、国土総合開発審議会の音見を聞いて、関係都府県に対し、地方総合開発計画区域の設定について、助言することができる。
(都府県総合開発審議会及び地方総合開発審議会)
第9条 都府県総合開発計画について調査審議するために、都府県は、条例で、都府県総合開発審議会を設置することができる。
2 地方総合開発計画について調査審議するために、関係都府県は、その協議によつて、規約を定め、地方総合開発審議会を設置することができる。
3 前条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
4 前各項に規定するものを除く外、都府県総合開発審議会及び地方総合開発審議会の設置、組織及び運営に関して必要な事項(地方総合開発審議会については、費用の負担方法を含む。) は、それぞれ条例又は規約で定めなければならない。
(特定地域総合開発計画)
第10条 資源の開発が充分に行われて居ない地域、特に災害の防除を必要とする地域又は郡市及びこれに隣接する地域で特別の建設若しくは整備を必要とするもの等について、経済安定   本部総務長官及び建設大臣がその協議によつて特に必要があると認めて要請した場合においては、内閣総理大臣は、国土総合開発審議会に諮問し、その報告に基いて、当該地域を特定地域として指定することができる。
2 前項の規定による要請をしようとする場合においては、経済安定本部総務長官は、関係各行政機関の長の意見を聞き、建設大臣は、関係都府県の同意を得なければならない。
3 前項の規定による都府県の同意については、当該都府県の議会の議決を経なければならない。
4 第1項の規定により特定地域の指定があつた場合においては、関係都府県は、都府県総合開発審議会又は地方総合開発審議会の調査審議を経て、特定地域総合開発計画を作成しなければならない。
5 第7 条第2項から第4項までの規定は、特定地域総合開発計画に準用する。
6 国は、地方公共団体が行う特定地域総合開発計画の事業について、国が負担すべき経費の割合に関し、別に法律の定めるところにより特例を設け、又は当該地方公共団体に対して、地方財政法(昭和23年法律第109号)第16条の規定に基く補助金を交付し、その他必要と認める措置を講ずることができる。
 (関係各行政機関の長の助言)
第11条 関係各行政機関の長は、その所掌する事項に関し、関係都府県に対して、都府県総合開発計画、地方総合開発計画又は特定地域総合開発計画の作成上必要な助言をすることができる。
(資料の提出等)
第12条 関係行政機関の職員は、国土総合開発審議会の求めに応じて、資料の提出、意見の陳述又は説明をしなければならない。
 (要旨の公表)
第13条 国土総合開発審議会は、その調査審議の結果について必要があると認める場合においては、その要旨を公表するものとする。
(北海道総合開発計画との調整)
第14条 北海道総合開発計画と総合開発計画との調整は、内閣総理大臣が北海道開発庁長官及び国土総合開発審議会の意見を聞いて行うものとする。
   附 則
1 この法律は、昭和25年6月1日から施行する。
2 総理府設置法(昭和24年法律第127号)の一部を次のように改正する。
第15条(1)の中中央青少年問題協議会の項の次に国土総合開発審議会の項を次を加える。
国土総合開発審議会
国土総合開発法(昭和25年法律第205号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行う。
 (内閣総理大臣・法務総裁・外務・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・電気通信・労働・建設大臣・経済安定本部総裁署名)


 北海道総合開発計画
ダムは、治水・発電・都市用水・農業用水などを供給する。北海道では、国(北海道開発局)・北海道・北海道電力会どが、洪水調節やかんがい等さまざまな目的のためにダムを建設してきた。北海道開発極は、国土交通省(建設省)・農林省などに代わってダム建設をしてきた。180(一級、二級、準用、普通河川にある堤高15m以上のダム)のダムのうち、北海道開発局が管理している多目的ダムは15カ所である。
現在、北海道開発局では3水系で4事業5カ所の多目的ダムを建設中である。なかでも、平成7年度に建設に着手した夕張シューパロダムは既存のダムを再開発するもので、完成すると北海道では最大、日本でも第4位の総貯水容量のダムとなる。
いずれも東京のゼネコンが契約者となり、北海道の土木・建築会社と企業共同体を組織する。政府直轄事業であり、北海道に投じられた国費は、ゼネコンを通して東京に戻る形である。明治時代の屯田兵による農業開発以来、北海道が本州資本の植民地的存在である。政治家とゼネコンの癒着の典型でもある。

 

※ 1947年の衆院選挙で初当選した田中角栄は、3年後には「国土総合開発法」を議員立法で成立させた。以後の日本の国家的巨大プロジェクトは、角栄の「国土総合開発法」にもとづく公共事業である。しかし計画地域での土地投機熱、全く企業が進出せずに赤字を増やした計画地域など、全部が順調に運んだのではない。全国総合開発計画は、日本の高度経済成長に貢献したが、第4次、第5次計画になると、計画のずさんさが目立つようになり、実行は困難であった。
[国土総合開発計画(1950)、全国総合開発計画(1962)、新全総(1969)、3全総(1977)、4全総(1987)、5全総(1988)]

 



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