21世紀のグランドデザイン(1998~2015年。5全総)
国土総合開発法の一連の総合開発法では第5次全国総合開発計画になる。1998年3月31日、橋本龍太郎政権が策定したが、1995年から各種審議会で作られた計画は。一応の達成目標を2015年とした。第4次までの経済成長のための総合開発とは異なり、高齢化社会と情報化社会を考慮したものである。第5次全国総合開発計画の語句を避け、「21世紀のグランドデザイン」を正式名称とした。
国土計画を転換し、地域を国土軸として自立させるため、「地域の自立の促進と美しい国土の創造」をサブタイトルとした。
国土軸
第4次全国総合開発計画までの工業開発を、太平洋ベルト地帯と東京への集中から、地方に転換する必要がある。計画地域を4地域に分け異なる開発投資を行う。その地域を国土軸と呼ぶ。
1.北東国土軸
中央高地から関東北部を経て、東北の太平洋側、北海道に至る地域、及びその周辺地域。
2.日本海国土軸
九州北部から本州の日本海側、北海道の日本海側に至る地域及びその周辺地域。
3.太平洋新国土軸
沖縄から九州中南部、四国、紀伊半島を経て伊勢湾沿岸に至る地域及びその周辺地域。
4.西日本国土軸
太平洋ベルト地帯とその周辺地域
それぞれの国土軸に、次の地域的特徴の実現を目標とする。
1.多自然居住地域
豊かな自然に恵まれた地域。21世紀の国土のフロンティアであり、都市的な環境も享受できる圏域を形成するとしている。
2.地域連携軸
市町村が都道府県境を越えて連携して、国土軸をつくる。
3.リノベーション
人口過密大都市において、生活空間の再生や経済活力の維持を図るため、大都市空間を修復、更新すること。
4.Redundancy
冗長性とか代理機能性の意味。自然災害時を想定し、あらかじめ交通ネットワークなどの予備手段を用意すること。
5.うみ業
海に関連する仕事。具体的には釣り、潮干狩り、ダイビング、ヨット、海鮮料理、水産加工、民宿などを組み合わせた複合産業のこと。
特定課題
1.首都機能の分散と縮小、都市型災害の問題。
2.沖縄の米軍基地、経済振興の問題。
※ 第5次全国総合開発(21世紀の国土のグランドデザイン)に、政府の計画的な財政投融資がなされなかった。東日本大震災(2011年)の復興事業、九州・北海道の新幹線、各地域の高速道路と高企画道路、東京オリンピックなどに、長期的な視点を欠いた投融資が行われた。アベノミクス(安倍政権の経済政策)として、景気回復を目的とした公共事業のばらまきである。
地方自治体と政府の財政赤字は増加し、長期債務残高は1,000兆円を越したが、ムダな公共事業と有益な公共事業とが区別なく続いている(2004年)。21世紀の国土のグランドデザインの理念は、スタート時点からなかった。国土庁が2001年に国土交通省に吸収されて消滅、同時に国土軸という概念不明の言葉も消滅していた。全国的視野の国土総合開発としては失敗した。