月岡芳年 月百姿
『いてしほ乃月』
いでしおのつき
明治十九年印刷
いでしお=【出で汐】
満ちてくる海の潮。多く「月の出」と掛けて用いられる。
♫ 高砂やこの浦舟に帆をあげて この浦舟に帆をあげて
月もろともに出で汐の 浪の淡路の嶋かげや。。。
国立国会図書館デジタルコレクション 100
肥後国阿蘇の宮の神主・友成は都見物へ行く途中
播州高砂の浦に立ち寄り静かな浦の景色を眺めていると
年たけた老夫婦が現れて松の木陰を掃き清めるので
有名な高砂の松はどれかと尋ね、
また高砂の松と住吉の松とは場所が離れているのに
なぜ相生の松と呼ばれるのかと問います。
老人はこれこそが高砂の松であると教え
たとえ山川万里を隔てても夫婦の愛は通いあうもので
現にこの姥は当所の者、尉は住吉の者だと言います。
そして老夫婦はさまざまな故事をひいて松のめでたさを語り
御代を寿いだ後、実は自分たちは相生の松の精であると明かし
住吉で待つと告げて沖へと消えて行きます。
友成は日の出とともに高砂の浦から舟で住吉へと急ぎます。
住吉へ着くと、残雪が月光に映える頃、波間から住吉明神が出現し
千秋万歳を祝って颯爽と舞います。
謡蹟めぐり「高砂」より転用
翁が見上げる先にはどんな月が見えているのでしょう。