ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

最後の戦い~ベッソン流ヌーヴェル・ヴァーグ

2010-06-30 22:34:10 | 映画(さ行)
1983年・フランス・Le Dernier Combat
監督:リュック・ベッソン
(IMDb:6.9 Metacritic:× Rotten:×)

リュック・ベッソン監督のデビュー作。



全くの予備知識なしで見たので、驚いた。
この作品、モノクロであるだけでなく、ほぼサイレントなのだ。
近未来の話なのだが、環境汚染によって人類が話せなくなったという設定らしい。
もちろん、本編を見ている限りでははっきりとは分からない。
言葉を話せないという設定なので、終始パントマイムだけで話が進む。
これだけで、驚くほど画面を見ることを強制させられる。
説明的なものが一切排除されているので、ストーリーを読み取ろうとすれば、
画面に映し出される風景や表情を凝視するほかない。
実験映画のような鑑賞態度で望まなければならないのだ。
これは面白い試みだが、疲れるし、説明不足なところも散見される。
出てくる人物全員がどういう人物なのか、どういうことを考えているのかが
わかりにくい。「アデル」も同じだから、リュック・ベッソンは成長してない、
もしくはこれがリュック・ベッソン色なのかもしれない。



おそらく低予算なのだろうが、それを感じさせない画面の充実度。
細部まで手抜きはない。
モノクロであることもあって、荒廃した世界観はよく出ている。

最初の飛行機で飛び立つまでのシークエンスが見事で、
これから先の旅への高揚感にあふれていた。
街についてからの中盤は少し長いように感じた。
そして、医者が軟禁する女性に会ってからまた良くなる。
音楽の良さもあって、純粋で素晴らしいラブシーンになっている。

病院の壁に書かれる絵が印象的だ。
この動物たちの絵がラスコーの洞窟壁画を思わせることから、
この作品はおそらく人類の誕生を描いた作品なのだろうと思った。
声が出ないのもそのためか。
まぁ、この世界とどう関係あるのか、意味深なだけで、
結局のところ、よくわからないんだけど。



この作品はリュック・ベッソンのデビュー作であるだけでなく、
ジャン・レノが初めて大きな役を得た作品でもある。
ジャン・レノが演じることによって凶暴な男であるはずが、
どこかユーモラスに見える。
瓶を剣で割る特訓のシーンは、彼が真剣であれば真剣であるほど、笑えてしまう。

映像としては面白いが、何がやりたいの、という印象はぬぐえない。
この作品は映画に対する大きな実験。
これはリュック・ベッソン流ヌーヴェル・ヴァーグなのだろう。

〈65点〉


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