ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

ディファイアンス

2010-02-05 23:09:49 | 映画(た行)
2008年・アメリカ・Defiance
監督:エドワード・ズウィック
(IMDb:7.3 Metacritic:58 Rotten:56)
公式HP



「ラストサムライ」「ブラッド・ダイヤモンド」など次々と傑作を生み出し続けている
天才エドワード・ズウィック監督は天才であると同時に、非常に不幸な運命を背負った監督だ。
それはこの「ディファイアンス」からも読み取ることができる。

ユダヤ人がロシア人と共にドイツ人を倒そうとするアメリカ製の戦争ドラマという
不思議な成り立ちのこの作品は、結局のところ、戦争へのメッセージ云々の前に、
エドワード・ズウィック節が炸裂した作品であり彼の過去の作品と同じく紛れもなく、一級の映画だ。
しかし、彼の作品は賞レースにおいて、2番手候補に甘んじていることが多く、
この作品もアカデミー賞では作曲賞一部門にノミネートされただけである。



ズウィック監督の特徴、それは娯楽性と作家性のバランスにある。
大ヒットするには娯楽性が少ない、アクションもどちらかといえば、リアル志向だし、
ストーリーも暗めというか、本質をえぐるような社会派的な色があり、
かといって、賞を狙うような作品かというと、全体的にハリウッドスタイルで撮影が行われており、
スターも登場すれば、激しい爆発も起きるし、ドラマの重さや深刻さとも無縁だ。

興行的成功と批評的成功。
それらの狭間の非常に中途半端な立ち位置にいるのだ。
言い換えれば、相反する二つの側面の両立を目指しているともいえる。

では、ズウィック監督を応援すべきなのは誰か。
それは映画ファンに他ならない。

巷で大ヒットするような大衆に媚びた映画は見たくないし、
かといって、映画祭で上映されるようなアート気取りな作品も嫌だ

そんな映画ファンのわがままに答えてくれるのが、我らがズウィック監督なのだ。



「ディファイアンス」について評価するべきなのに、ほとんどできていない。
それは紛れもなく、「ディファイアンス」が興行的にも批評的にも中途半端な立ち位置にある証拠だ。

それでも多くの映画的快楽にあふれた素晴らしい作品であることに変わりはない。
結婚式のダンスと銃撃戦のカットバックは圧巻。
画面に映し出されるのは、森ばかりで、地味かもしれないが、
完成度は圧倒的であり、いつまでも見続けることのできる普遍的な作品だろう。

〈80点〉


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