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気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

たしかなこと 2 (1)

2020-04-25 22:29:00 | ストーリー
たしかなこと 2 (1)






「香さんがまたここに来てくれるなんて嬉しいです。」


僕は自宅で育てているポーチュラカの花に “香” という名をつけていた

初めて香さんが僕の自宅を訪れた際
そのポーチュラカの種を植えたのは香さんだった


「まだ(ポーチュラカ)元気なんですね(笑)」

「ええ(笑) 大事に育てていました。」
寒い冬も越冬できるよう室内置きをして大切にした

彼女が植えたこの花だけは決して枯らしてはいけないと


「白川さんの愛情で育ってたんですね(笑) ふふっ(笑)」

「香さんと思って大切にしていました。」


照れながら頬を赤くした香さんは以前と変わらずとても可愛い


「そういう事を言ってくれるのは変わらないですね(笑)」

「素直な僕の気持ちです(笑)」

香さんにオレンジペコの紅茶を入れた

紅茶ではオレンジペコの香りがとても好きで ほんのりフルーティーで甘く感じるフレーバーも僕は好きだ


まるで香さんのようで…


「ほんと、あまり見つめないでください(笑)」

「すみません、嬉しくてつい… (笑)」

「… いえ(笑)」



僕は以前 香さんに聞こうとして聞けなかったことがある

ーー 貴女は僕との未来を考えてくれているのか ということを



まだ僕の部下だった頃の香さんとは違い今は自分の店を持って自立した大人の女性に変わった

以前の貴女は結婚も夢見ていたようだったけれどそれは今も同じなのだろうか

その事を香さんに尋ねてみた

今は以前ほど強い結婚願望はないけれどいずれは結婚して子供もできると嬉しいなと微笑んだ


ーー 子供、か


僕には前妻との間にできた一人娘がいる

娘は前妻の元で暮らしているが定期的に娘と会っていて良好な仲だと思う

僕は娘を大切に思っているし愛している

だから子供が欲しいと言う香さんの気持ちが理解できる


香さんは僕との子供ができたらどんな家庭になるのかなと微笑んだ


僕はもう53で香さんはまだ31歳
親子だと言っても不思議ではないこの年齢差はどうしても埋められはしない


もっと僕が若ければ…


「白川さんは私と… 」
香さんは何か言いかけ口をつぐんでしまった


「何ですか?」

「あれっ? 言いたいこと忘れちゃいました(笑) ははっ(笑)」

忘れたんじゃなくて言えなかったのでは…


香さんは僕と結婚したいだろうか
もし僕がプロポーズをすれば貴女は受けてくれるのだろうか


「香さん。プラネタリウムに行きませんか?本物の星空も良いのですが今日は月明かりであまり見られないと思いますので。」

「良いですね(笑)」



ーーー



最近のプラネタリウムは僕の子供の頃とは全く違い、本物のように精巧で且つドラマティックなものだった


「綺麗でしたね!!」
興奮気味の香さんはまるで子供のようだ

カップルで座れるシートがまさにデートにぴったりで、これはまた来なければ!と内心決意した


車に乗り込んでエンジンをかけた
僕は夜のドライブをしようと思っていた


「さっきの。カップルシートってちょっと照れました(笑)」

照れる香さんは本当に愛らしく
ついキスをしたくなる欲求が湧き上がってしまう


「また行きましょう。」

「はい、是非… またカップルのシートが良いです…

香さんをチラッと横目で見るとはにかんでいた


「困りましたね… そんな可愛い顔されるとキスしたくなるじゃないですか(笑) 今、運転してるのに(笑)」

「じゃあ信号が赤になったら… 」


流星群を見に行った帰り道のことを思い出した


「わかりました。」

あの時
信号、赤に変われ変われと願ったな...

懐かしい(笑)



今回は意外とすんなり赤信号になり停車した
周囲は車に囲まれていたけれど

香さんの顔を両手で引き寄せた
重なった唇が柔らかく心地よくて少し甘いキスをした…


信号は青になり
何事もなかったかのようにまた発進させた

香さんは一言も何も言わず窓の外を見たりチラッと僕の顔を見たり 香さんの心は落ち着かない様子だ


僕も久しぶりに香さんにキスをしたからか
無性に香さんを抱きたくなってきた

50を過ぎても恋しい人に対しての思いは20代の時と同じだ


スタバのドライブスルーで珈琲を購入し夜景の見える埠頭に着いて車から降りた



「綺麗ですね(笑)」

「そうだね。」


香さんが月明かりに照らされている

そのまつげや頬 唇につい目がいってしまい貴女に触れたい衝動が湧き上がってくる


今夜は満月だからだろうか…


香さんの肩を抱いた

幸せだ…


「白川さんの匂い… 」

匂い? 慌てて身体を離した
「まさか、加… 」加齢臭?

「加齢臭じゃないですよぉ(笑) はははっ(笑)」


自分では気付かない内に加齢臭が出ていたのかと…

そういうことも貴女といる時は特に気になるようになった


「白川さんの匂い好きです(笑) 白川さんが今夜みたいな満月の夜に初めて“月が綺麗ですね”って言ったあの時から… ずっとこの香りに心が惹かれてました… 」


香さん…

「あの時すでに僕は貴女に恋をしていました… 今は… 」


僕を見つめる香さんの頬に触れた


「心から愛してる… 毎日こうして貴女に触れていたい 」

「それは… 」

「貴女が欲しい。大切にする。だから… 僕との結婚を考えてもらえないだろうか。」



やっぱり香さんは驚いた…



「愛してるんだ… 貴女を」

「返事、」

「直ぐじゃなくても良い。よく考えてから返事をして欲しい。」


本当は返事を聞くのが恐い

どんなに愛していても
貴女と僕は親子ほどの年齢差なのだから







ーーーーーーーーーーーー


風 スピンオフ

2020-04-19 17:43:00 | ストーリー
風 スピンオフ






次々と親友に彼女ができた
俺は未だにできないでいる

中でも一番の親友の颯真に先を越されたのはムカつく

「俺の彼女に友達紹介してもらうから、なっ(笑)」

なにが “なっ(笑)” だ!



俺は天羽 大揮 28歳 仕事は親父の農業を継いで野菜を作ってる

と言っても親父はまだ現役バリバリでダメ出しばっかで超口うるさい

休日は親友の颯真とサーフィンに行くのが趣味
…だったんだが

あいつに彼女ができて俺は別のサーファー仲間や一人でサーフィンをしに行くことが増えた

男も女ができると付き合い悪くなるもんだな!
俺も早く彼女欲しい!


颯真の彼女が女友達を紹介してくれる話ができて一緒に海水浴に行くことになった

初対面でいきなり水着姿で初めましての挨拶になった

女の子二人も連れてきてくれた♪
しかも可愛い…

颯真の彼女は俺達より歳上だけど 紹介してくれたのは20代半ばの女の子

髪の長いスレンダーな深雪ちゃんと ショートカットでちょっとぽっちゃりな紗奈ちゃん

フリーの男は俺だけで女の子は二人って、なんか申し訳ない気がするけど俺としてはラッキーでございます!


俺は内心ショートカットが似合う紗奈ちゃんについ目が行ってしまう

というのも 高校の頃の学級委員だった女子に激似だったからだ

別にその学級委員の女子に惚れてた訳じゃない!
ほんとに激似だからついつい見てしまうってだけ

あっ、もしかして激似じゃなくて本人!?
いやいや、名字が違うから別人だよな…

それにしてもだ
スレンダーボディよりぽっちゃりな方がいやらしく感じるのは俺だけっすかねぇ?

肉付きがいい娘、俺 好き♡


「天羽さんは紗奈ちゃんが気になるのぉ?」
颯真の彼女に耳打ちされ、俺はさりげなく颯真の彼女から離れた

「えっ、いやっ? そうかな、、、あははっ(汗)」

ヤメテッ!! 俺に近寄らないでっ!!
あなたからからエロの空気 漏れ出てますからっ!!



海に入ったり海の家で軽く飯食ったりかき氷を食べたりしながらお互いの仕事や趣味の話をしてると

颯真が早めに切り上げて飯行こう!と提案しみんなで行くことになった


中小企業で事務職をしている ちょいぽっちゃな紗奈ちゃんの趣味は華道

華道ってまた渋っ!

でも着物を着て花をいけてる姿が容易にイメージできるしのんびりとした話し方がお嬢様のような雰囲気が出てる


スレンダーボディの深雪ちゃんはヨガ教室の先生

ヨガで身体が柔らかいってことは、それはつまりだな、夜の…

「お前、知らない?」

いきなり颯真が店を聞いてきて驚いた
(ついエロいことを考えてた俺が悪いんだがな)


「店か。じゃあ、」
俺の従兄弟がやってる店にみんなを連れて行った

ひと回り年上の俺の従兄弟はイタリアで修行して自分の店を出している

店のセンスも良くてもちろん出てくるものは全部旨いから結構 繁殖している

しかもシェフだからか やたらモテてる!(チッ!)

もう結婚してんだからモテても意味ないだろうに
俺と会うと最近のモテ自慢で俺をちゃかしてくるからほんと鬱陶しいっ

まぁ、基本いい奴なんだけどな


あれ?俺 店の選択ミスった?

案の定 深雪ちゃんは俺の従兄弟を格好良いなんて言ってる


いや もうあいつ既婚者だからねっ!?

紗奈ちゃんは従兄弟には興味なさそうだけど
俺 深雪ちゃんの顔、タイプだから良いな~なんて思ってたんだけど

俺には興味なさそうだ…



ーーー


深雪ちゃんと紗奈ちゃんの二人と連絡先を交換してるけど 気になる深雪ちゃんからは挨拶の返し程度のLINEしか来ない

やっぱ俺じゃダメだったのかなぁ


逆に紗奈ちゃんのLINEは温かい

スタンプとか いかにも女の子らしいものばかりでいつも “ お仕事お疲れさまです” とか “今日も暑かったけど大丈夫ですか?” とか

暑い中で仕事してる俺を気遣うような言葉が返ってくる


そんな彼女の人柄に触れる度 気持ちが癒されてる事に気付いた


俺はせっかちだけど紗奈ちゃんはのんびり屋でほんと真逆の性格ではあるけど そののんびりも何故か許せてしまう

多分 彼女の優しさがあるからだろうな
自分のせっかちさを直さないとなって気付かされる

二人で遊びに行かない?と聞いてみたら彼女は行きたいと言ってくれた


会うのは2度目になる

海以来会ってないけど しょっちゅうLINEしてるからか もう親近感はあった

紗奈ちゃんと初めてのデートは水族館に行くことになった

待ち合わせの場所に訪れた紗奈ちゃんは清楚な感じの綿のシャツに可愛らしい膝丈のスカート姿だった

着痩せするのか海で見た水着姿の彼女より痩せて見えた

ーー 水着姿のぽちゃも良いけど
この姿も似合ってて可愛い…


“よく似合ってて可愛い” って言えっ!俺!!

でも そういう言葉が自然に口から出てくるようなスマートな男じゃない俺は何も言えずに軽く挨拶だけして歩きだした


俺… 颯真みたいにこういう時に思ったことを言えないんだよなぁ


紗奈ちゃんは俺の顔色をチラチラと見てる
俺が不機嫌だと思ってるんだろうか

不機嫌じゃないと紗奈ちゃんにわかってもらいたくて何か言わないとと焦って出た言葉が


「き… 今日も、暑いね、、(笑)」だった
俺… ほんと彼女できない訳だわ…

「ほんと暑いね!水族館は涼しいと思う(笑)」

LINEでは気軽に会話できたのにいざ女の子と二人きりとなると途端に緊張してしまう


水族館の中はやっぱりクーラーが効いてて涼しかった

水槽の中を覗き込む紗奈ちゃんの後ろ姿

子供連れの家族やカップルが多い
俺達もカップルに見えるんだろうか

「どこにいるんだろう??」

どうも水槽の中の枯れ木に擬態化した魚がいるようだ

俺も覗きこんで見てみた

「あそこにいた」

指差した先を紗奈ちゃんが凝視してるけどやっぱり見つけられなくて俺の指に近付いて指を差した方向に視線を向けた

ち、近いよっ! なんかドキドキしてきた!

「見つけた(笑) あれを見つけるなんて天羽さんは目が良いんですね!」と言いながら振り返って俺の顔を見た

わっ、近い近いっ!!

「そっ、そうかな、、(笑)」

「私最近視力が落ちちゃって。コンタクトもあるんですけどドライアイでやっぱり合わないなって(笑) 眼鏡も作ったんですけど慣れてないので… でもかけないとちゃんと見えませんね(笑)」

バッグから眼鏡を取り出してかけた

眼鏡、似合う!! 可愛い!萌える!

なんて心の中では直ぐに言えるんだけどな
「に、似合ってる…よ 」

「そうでしょうか(笑) 良かった(笑)」

「うん… 」可愛い…

紗奈ちゃんはまた俺の顔色を見るような表情をした
「すみません… 私とじゃつまらないですか?」

そんなことないよっ!
「そんな、つまんないなんてこと、ない、、」

「そうですか…?」残念そうな表情で微笑んだ


あぁ!ダメだ俺!
紗奈ちゃんが誤解してしまう!

「俺の方こそ、ごめん、楽しいよ、ほんとに、、」


いかに俺は小さい男かってことを今回でほとほと思い知ったわ…

スマートにエスコートできるような格好良い男になれない…


「嫌なら正直に言ってくださいね(苦笑)」
彼女をシュンとさせてしまった

「そんなことない、ほんとに、、」
ここで手でも繋げれば!なんて思うけどそこまでの器量も勇気も俺にはない…

で、でも!俺だって やる時はやれる男!
決意して勇気を出した

「紗奈ちゃん、あの、手、手を、繋いでも、いいかな… 」

言った!! 俺、言えたぞ!!



紗奈ちゃんはびっくりした表情をした

あっ… これ… ドン引きされたパターン …?
「えっ、あー… あっちも見に行ってみよっか(汗)」

「は、はい… 」


うわぁハズー!めっちゃ恥ずー!
俺ってば、相当な勘違い野郎だ!

紗奈ちゃんが俺に好意的に接してくれてるからって俺のこと好きかどうかなんてわからないのに何言っちゃんてんだか!


「… さん? 天羽さん?」

「えっ?」

紗奈ちゃんが俺に手を差し出していた

ーー えっ?


「手を、繋ぐんですよね?(笑)」

「え、あっ、ごめっ! やっぱいいや、、」


せっかく俺に差しのべてくれた手をまた引っ込めてしまった


俺ってほんとバカ …
なんで やっぱいいなんて言っちゃったんだよ

紗奈ちゃんの顔がまともに見られない
どんな顔してるのかな…


「天羽さん、、あの… 」
振り返ると紗奈ちゃんは困ったような表情になっていた

「どうして今日 私を誘ってくれてんですか?」

「どうしてって… 」
そんなの… 紗奈ちゃんに会いたかったからだよ…

「私と一緒だと楽しくないですか? 」困った顔で微笑んだ

「そんなこと!そんなこと、ない… よ… 」

「つまらないですか?(笑) 」苦笑いをした

違う、そうじゃなくて、、
「俺、つい、緊張して、、」

「どうして緊張するんですか? LINEもしてたのに 」
「面と向かって二人きりで会うのは… やっぱ…緊張… する… かな」
カーッ!ハズい!

「じゃあ… 手を繋いでもいいのですか?」

えっ… !

「うっ、うん… 」
手ぇ繋ぐくらいでなに心臓バクバクさせてんだ!

これじゃまるで誰とも付き合った事もない童◯みたいじゃんよ!

俺だって過去に彼女もいたしちゃんとヤッてたし!
ちゃんとヤッてたって、なんかおかしいな??


紗奈ちゃんが そっと手を繋いできた

うっ… 柔らかい… テレる… ドキドキする
手に汗かいてきた!


「… 嬉しいな(笑)」照れながらはにかんでいた

なんだよそれ! めちゃくちゃ可愛いじゃんよっ!

「かっ、可愛いよっ、紗奈ちゃん、、」
手に汗かきながら俺 変態みたいじゃん!
これじゃ下心ありまくりみたいじゃん!


「あ、ありがとうございます… (照)」

ついニヤニヤしてしまうのを我慢しながら
気もそぞろで海の生物を見ていると

紗奈ちゃんは嬉しそうに俺に話しかけてくる



あぁ… 俺 デートしてるよ~!

あ… でも
ちゃんと付き合おうって伝えてないや…



よし、ここを出たら言うぞ!



ここを出たら必ず!

晩飯を食ったら必ず、、

駅に着くまでには必ず…




「天羽くん、今日はとても楽しかった(笑)」

「あっ、うん、俺も… 」

「またLINEします!では(笑)」

結局 言い出すタイミングが掴めなかった

あぁっ!
このまま紗奈ちゃんを帰しちゃっていいのか? 俺!
くそっ!何やってんだ!俺は!

これじゃ本物のヘタレ野郎だ!

意を決して改札を通ろうとしていた紗奈ちゃんを呼び止めた

「まっ、、待って!」
紗奈ちゃんの腕を掴んだ

「えっ!?」

「ごっ、ごめっ、ちょっと、いいかな、、」

紗奈ちゃんの手を引いて駅から離れた

「あ、天羽くん、どうしたの?どこに行くの?」


駅から離れると人も少なくなってきて
俺は歩道橋の上で足を止めた


「紗奈ちゃん、俺、今日ずっとグダグダだったけど… 」

「グダグダ?」

「やっぱちゃんと言わなきゃって思って!!」

俺の勢いにびっくりした表情をした

「俺っ、紗奈ちゃんが好きだ!俺の彼女になってくださいっ!!!」


タイミング悪く中年のおっさん二人組が横を通り過ぎた
「おぉ~ 若いねぇ(笑)」
「にいちゃん頑張んなよ!(笑)」

通りすがりの知らないおっさんに応援されて急に恥ずかしくなり、またヘタレモードに戻ってしまった


「あっ、あの、紗奈ちゃん、は、俺のこと、どう思ってるの、かなぁ、、 」

心臓が口から出そうだ
紗奈ちゃんの顔がまともに見れない



「ーー 私も、天羽さんが好きですよ 」


ーー え? OKってこと?


「なります(笑) 彼女に。私でよろしければ、よろしくお願いします!」
嬉しそうな笑顔に変わった

「や、やった… 紗奈ちゃん、ありがとう!」
彼女の手を握った瞬間

「やったなぁ~にいちゃん!(笑)」
おっさん二人から なぜか祝いの言葉をかけられた

「あっ、ど、どうも、、(苦笑)」
おっさん二人に軽く頭を下げると彼女は笑いだした

「私、天羽さんのそういう所も好きですよ(笑)」

「そういう所?」

「純粋で照れ屋さんで一生懸命な所です(笑)」

「あ、あは、あはははは…… (苦笑)」
28歳の男が純粋って 超恥ずかしい



「か、帰ろっか… (笑)」

「そうですね… (笑)」


俺達はまた駅へと向かった



「また… 海… 行かない?」

「そうですね(笑)」

「今度は二人で… 」
また水着姿の紗奈ちゃんが見たいなぁ!

「じゃあ もっと痩せてから… 」

は!?
「いやいや!ちょうどいいから!ベストだよ!ほんとに!」

「覚えてるんですか!? 」

「そりゃもうバッチリガン見してるから!」
ちょいぽちゃがセクシーに見えたんだよ♪

「ガン見って… 」

あ、ヤバ…
「 い、いや… ガン見、した、のは…… ごめん… 」
俺いらねことを口走ってしまった


「い、いえ、、 」

無言になってしまった

「お、怒って、ない??(汗)」

「怒ってないです、恥ずかしいだけです(笑)」



まるで中学生のカップルみたいな俺達の恋が始まった

のんびり屋の紗奈ちゃんとせっかちな俺だけど
俺達のペースでゆっくり恋愛していけたら…



「天羽さん… 私、天羽さんが人生で初めてお付き合いする彼氏さんなんです… (照)」


「えぇっ!!マジ!?」


本当に
ゆっくりのペースになりそうだ … (笑)






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風 5 (最終話)

2020-04-19 09:05:00 | ストーリー
風 5






彼女と約束した1ヶ月
それが今日…

この5日間 西田さんからメールも電話も無いし俺からも連絡は取っていない

毎日のように連絡を取り合って 電話してると時間を忘れてしまうから30分までにしようと彼女がルールを決めた

たったの5日間なのにもう何ヶ月も連絡を取ってないようなこの寂しさ…


仕事中も気を抜くと西田さんのことを思い出していた

頭で考えると 彼女達はやっぱり理解できない
俺の性分はそういうドロドロとした妬みをほとんど抱くことのない人生だったからだ

唯一妬んだ記憶があるのは
あの、前のアパートで知り合ったあの子の不倫男にだけだ



俺はそれだけ単純な男なんだろう

心の機微とかそういう繊細なものを感じ取る能力に欠けてるのかもしれない

好きな奴は好き、嫌いな奴は嫌いとついそのまま言ってしまうようなストレートな性格だからこそ人との衝突もあった

でも陰湿な関係を作るよりかよっぽどマシだ!って考えだから どうしても彼女達の気持ちがわからない


そんな風に 頭では否定してしまうのに
心が… やっぱり寂しい

まるで心に穴が空いたみたいだ

彼女と知り合うまでの俺って毎日どう過ごしてきたんだろ

何を思って生きてたんだろ


雨の中 俺の傘を差して帰る彼女が浮かんだ

もうこのまま 会わないまま俺達は終わるのか…?
胸に鋭い痛みが走った

これは心が “嫌だ”って反応してるんだ…



ーーー



仕事を終えていつものように駐車場に車を停めると彼女が俺の帰宅を待っていた

たったの5日間なのに
久しぶりに会ったような気がした

「連絡もせずに突然来てごめんね」
俺の傘を持った彼女は申し訳なさそうにぎこちなく微笑んだ

彼女らしくないその臆した微笑みに胸がチクッと痛んだ

「いや。いいんだ。」

彼女を部屋に入れ俺は作業着の上着を脱いだ

「今日で約束の1ヶ月目だね。早かったなぁ(笑)」
明るい口調で俺に笑顔を向けた

俺は冷蔵庫から冷やしてあるお茶をグラスに入れてテーブルに置いて座った

「ありがとう(笑)」

「…俺やっぱわかんないわ。君のこと。」

彼女は口を固く閉じ視線をグラスに移した
「… だよ、ね」

「でもさ。そういうのも全部引っくるめて君なんだよな… 」

泣きそうに目を潤ませ黙ったまま真っ直ぐ俺を見つめてる

「たったのひと月だったのに、もう一年は付き合ったような濃いひと月だった気がする。

特別なことなんか なんもしてあげられなかったし俺のくだらない話に君が笑ってさ。ただそんな風に過ごしただけだったけどな。。

連絡を断ってたこの5日間 君のことばっか頭に浮かんでさ。俺、君が好きなんだってほんと実感したわ(笑)

俺さ。君にはいつも笑ってて欲しいんだわ。俺には君が太陽みたいに見えてるからさ。」

彼女は両手で顔を覆い泣き出した
俺は彼女に初めて “好き” という言葉を伝えた


「颯真くん… 私も好き」

「だな(笑) 知ってた(笑) … また俺とサーフィン、行きたい?」

うんうんと頷いた

「じゃあ行こ(笑)」
ティッシュの箱を彼女に差し出すと豪快に鼻水をかんだ

「ふふっ!(笑) 早く泣きやんで? じゃないとキスできないよ。今キスしたら窒息しちまうだろ?(笑) 」

目も鼻も真っ赤な彼女が照れくさそうにはにかんだ

「鼻が真っ赤な君も可愛いけどな(笑) ははっ(笑)」





ーーー



梅雨が明け 季節はもう夏 ーー


海は夏を楽しむ人で賑わっていた

沢山の水着姿の人達の中に可愛い女の子の3人組がいた
その中でも一際イイ女がいた



隣にいた天羽が俺に話しかけてきた

「くぁ~♡美人でしかもイイカラダ♡クソムカつくっ!!」

天羽に脇腹を肘打ちされた
「グハッ!… なっ、なにすんだ!」

その太陽のような女性が俺達に気付き駆け寄ってきた


「二人でなにやってるの(笑) 」

俺がその水着姿の彼女を敢えて舐めるように見ると
「いやらしいなぁ~もう♡(笑)」と可愛くたしなめられた

「そうさせるのはいつも君だろ?」

俺の腕が彼女の胸に挟まれながら女の子友達の所に連れていかれた

初めて見る女の子達に俺は天羽と挨拶をすると
彼女は俺を彼氏だと紹介した

太陽みたいにパワフルで天真爛漫な彼女とそれに振り回されてる俺とのパワーバランスは相変わらず変わらないけれど

俺と“恋人” 西田さんとの交際が始まって初めての夏がやってきた


俺と彼女に
熱い風が吹いてきた ーー









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風 4

2020-04-15 22:44:00 | ストーリー
風 4






あっという間に三週間が過ぎ
その間 何度か西田さんとデートをした

一緒に買い物したりドライブしたりサーフィンしたり… イチャイチャを求めてきたり… とか

女の子と毎日電話をかけるなんて初めてで、それがいつの間にか習慣になっていた

彼女の積極的なアプローチに始めは戸惑ってたけど俺も彼女に気持ちが傾いてるのを実感していた

たったの三週間でこんなにも気持ちが深まるもんなんだな


仕事中も今 西田さん何してるんだろうって想うようになった

綺麗で可愛いだけじゃなくて ちょっとわがままで強引だけどそれも嫌な強引さじゃない

上手に甘えられて結局俺は従うような流れで彼女の手の上で転がされてるような関係だけどそれも悪くないと思えてしまう

本能的というか天真爛漫で自由奔放なところが彼女の魅力

それとエッチとかイチャイチャするのが好きで素直に俺を求めてくれるのが可愛くて嬉しかったりする

自分がして欲しいことを素直に伝えてくれるからどんな事が好きなのか どんな風にしてもらいたいのかもわかってきたし男の本能でそれに応えようと燃えるっ


あと一週間で約束の1ヶ月が終わる
でも俺はその後も付き合いは続けたいと思っていた


『颯真くんに会いたいなぁ~♡ 明後日私仕事がお休みだから行ってもいい?』

「うん、いいよ(笑)」

『じゃあ晩ご飯作るね!何食べたい?♡』

そんな感じで30分 毎日電話で話をした



ーーー



俺の部屋で飯を食いながら西田さんはちょっと寂しそうな顔をした

「あと5日で1ヶ月だね。」

「そうだね。」

「決めてくれた?」

「ん。決めたよ。」

チラッと俺の顔を見て何も言わずまた食べだした

時々窓から湿度の高い風が吹きこんできてカーテンが揺れる

テレビの画面にはバラエティー番組が流れていて俺は音を小さくした

「答え、聞きたい?」

「うーん… どうしようかな…」
困ったように微笑んだ

「じゃあ5日後に言うよ(笑)」

「わかった… 」
答えを聞くことを恐がってるのか? 可愛いな(笑)

「西田さんはほんとに料理上手いね(笑) それに綺麗だし… なんで俺なの。」

「タイプだったし優しいし… 今はいろんな所が… 好き…かな」

俺の顔も見ず少し顔を赤らめているように見える
出会った頃よりも、付き合い始めた頃よりも、最近の反応の方が可愛い

「なんでそんなに可愛い反応するようになった?」

急に真っ赤な顔になった
「可愛い反応って、なに!?」

彼女の首筋に汗が滲んでいた
「言葉通りなんだけど(笑) なんか蒸し暑いよな。クーラー点けるよ。」

「ん(笑)」


雨でも降りそうな湿度になってきて窓を閉めてクーラーを点けた


「今夜… 泊まってくだろ?」

彼女は表情を曇らせた
「その前に颯真くんに話さなきゃならないことがある… 」

「え?」

静かな口調で
とつとつと話し始めた



ーーー



それは俺もまだ彼女と知り合ってもいない二年前の西田さんの行野さんの話だった

二年前の西田さんはグラビアアイドルから舞台女優に切り替えた時

その頃 同じく舞台女優を目指していた行野さんと知り合ったようだ

当時の二人は直ぐに気心の知れた仲になった
お互い夢に向かって一緒に稽古練習をしたりと良好な仲だったようだ


その二人の仲がある事で亀裂が入った

ほんの小さな脇役だったがそこに空席ができ二人の内から決めるという事になった


ーー 結果その役は 行野さんが選ばれた

それを妬んだ西田さんは行野さんの大事なものを奪ってしまった

それは
当時 行野さんが結婚を約束していた恋人の男性

それでも 行野さんは西田さんを許したのは行野さんがその事を誰かに漏らしたせいで西田さんが芸能の世界に居づらくなり辞める結果になってしまったからだと告白した

お互い腹にいちもつを抱えてまだ友人関係を続けているのは

友人関係を保つ事でお互いの闇部分を漏らされたくない牽制とか打算があったのかもしれない

そうだとしても 何故まだ二人に繋がりがあるのか俺にはどうしても理解できない


それに なんでそんなことを俺に告白したんだと問うと 彼女は行野さんとも繋がっている俺にいずれ耳に入るかもしれないからと言った…


そうじゃないんじゃないか?

俺を行野さんに取られるかもしれない
それならいっそ自分から打ち明けてしまおうと思ったんじゃないのか?

今は混乱と懐疑的な思いで冷静に彼女に向き合えそうもない



「… ごめん 今夜はもう、、帰ってくれないか」

西田さんは今にもこぼれ落ちそうなほど涙を溜めた瞳で俺を見つめてゆっくり立ち上がり部屋を出ていった


… 人間不信になりそうだ

それは彼女にだけじゃなく行野さんにもだ
行野さんは一見 純粋で健気にも見えるほど人の良さそうな子

一生懸命自分の夢に向かっていて その夢を応援したくなるような子だったんだ

そういうのも行野さんのほんの一面だったってことだよな

男や配役を取った取られたとか嫉妬や告げ口?みたいなドロドロしたことになってたとか…

なんか もう全部が意外すぎて想像もつかなくて信じられない

ほんと訳わかんねぇ…


パタパタと雨が窓に打ちつける音が聞こえてきた

… 西田さん
傘 持って来てなかったな


俺は傘を持って彼女を追いかけた

雨に濡れ
泣きながら歩いている彼女に傘を差し出した


「… この傘 持っていっていいから… 」

「颯真くん… やっぱり優しいね」


雨に濡れて冷たくなった手が俺の手に一瞬触れた
俺の手から傘を受け取り彼女はまた歩きだした

ずっと天真爛漫で太陽のような彼女の後ろ姿がとても小さく見えた

このまま 彼女を帰してもいいんだろうか

迷っている内に彼女の姿はとうとう見えなくなった






ーーーーーーーーーーー

風 3

2020-04-10 20:33:00 | ストーリー
風 3






行野さんがあの合コンに参加していた色白男と付き合ってるって聞いた

あの色白男
合コンの時 “自分だけは違う”って空気出して俺らのことを見下してた

行野さん なんであんな奴と付き合ってんだ

そりゃ 誰が誰と付き合っても俺には関係ないけど
あの男はダメだろ!

… って
指摘する程 俺と行野さんは親しいわけじゃないからな


西田さんからLINEが来た
“颯真くん、まことちゃんと4人で遊びに行こうよ”
4人?

“4人って?”

“吉川くんだよ”

吉川… あっ!あの色白男か!

“気乗りしないな。”

“なんで?吉川くん嫌い?”

この人はストレートに聞いてくるな… (苦笑)
“向こうも嫌だろうし”

“吉川くんは颯真くんに会いたいみたいだよ?”

はぁ!? なんでよ!!

“だから行こうよ!ね!!”

西田さんはほんとに強引だ
結局俺が折れる流れがいつの間にかできてしまってる

その4人が会う当日
気乗りしないまま集合場所に到着した

行野さん一人が先に到着していた

会うのはあの合コン以来
二人だけなのは初めて

何となく気恥ずかしくて
早く西田さんが来ないかとソワソワした

行野さんは俺と西田さんはデートしてるのかと聞いてきた

デートらしいことなんてしていない
ただ、サーフィンをして飯食って、たまにLINEしてまた飯を食いに行った程度だ

だから2回だけだ

行野さんは少し驚いた表情をした
二人は付き合っていないのかと聞かれ 付き合ってないと答えると 困った顔をした

結局 何故行野さんが困った表情になったのかわからないまま西田さんが到着した


あのいけすかない吉川ってヤツだけが遅れて来やがった

遅刻したにも関わらず
悪びれる様子もなく仕切り始めた

やっぱ俺、コイツはアカンわ!

どこに行くのかと思いきや東京ディズニーランドだった

思いっきり千葉やん!!
てっきり遠出でもすんのかと思ったぞ!!

半ば呆れ気味で いけすかん吉川についていった

思いっきり地元のディズニーランド程度のことで偉そうに仕切りたがる吉川を俺は心の底から嫌いになれそうだわ

しかも やたらと行野さんと話してるし!

… そっか
付き合ってるなら 当然か…

なんか来るんじゃなかった
二人が良い仲なのを認めざるを得ないだろ

なんでこんな奴と付き合ってるんだ
ほんっと わかんねぇ!

「颯真くん?」
西田さんが俺の顔を覗きこんできた

「えっ、な、なに?」

「やっぱり無理に誘っちゃったから嫌だった?」

「いや、、」
その会話に行野さんが俺の顔を見た

「そう… だったの?」
申し訳なさそうな表情をして

俺はそんなことないと笑顔を作った

ディズニーランドで 行野さんと吉川は二人は乗り物に乗って 一緒にアイス食って 本当に仲良さそうに見える

ほとんど何も知らないのに
話もまともにしてないのに

行野さんが気になって目が追ってしまう

ふと あのアパートで出会った女の子と既婚者の男のことを思い出した

あの頃と同じ胸の痛み
こういうのって
切ないって言うんだろうな

俺 行野さんのこと
好きなのかな



ふいに西田さんから腕を引っ張られ驚いた
「私達はあっちに行こう♪」

「えっ、あ、あぁ、、」
行野さんが俺達に軽く手を振った

「私とだと つまんない?」

「いや、そんなことない、よ、」

「好きでも嫌いでもないんでしょ(笑)」

図星を突かれた
本当に嫌いじゃないけど好きでもない
好意的に想われることは嬉しいけど

本当にそれだけだった

「… ごめん」

「だよねぇ~ もっと興味持って知って欲しいんだけどなぁ(笑) ふふっ(笑)」

行野さんと吉川がふと浮かんだ
「付き合いだしてから好きなる事ってあるのかな… 」
「あるよ!相手のことをもっと知って好きになるって事だってあるよ!」

「… そうなんだ。」

「だから、だから、、私と付き合わない?」

え?

「西田さんなら俺みたいなのより格好良いやつと付き合えるよ。俺なんてほんとどこにでもいるような男だし。」

「そんなことないよ。颯真くん格好良いし優しいし男らしいよ? 短い期間でもいいの。もっと颯真くんに私のこと知って欲しい。」

訴えるような目で俺を見上げながら
腕を俺の腕に絡ませてきた

西田さんの胸の感触が腕に伝わって
男の本能がグラグラ揺れた

「あっ、いや、ほんと、それは、」
腕をほどこうとしたら西田さんは余計に力をこめた

「じゃあ1ヶ月だけでもいい。」

どうして俺…?

それにグラビアやってたぐらい綺麗でスタイルも良くて性格だって悪くない西田さんがこんな俺なんかにそんなプライドもないようなこと言うんだ


1ヶ月…

結局
西田さんに根負けして1ヶ月間付き合うことになった

やっぱり俺は最後は西田さんのペースに巻き込まれてるな…

東京ディズニーランドを出る頃
空はもう真っ暗になっていて俺以外の三人は満足そうに会話をしていた


「あのね、私、颯真くんと付き合うことになった♡」

えぇっ!!なんでここで言う!?
咄嗟に行野さんの顔を見た

行野さんは戸惑ったような複雑な表情をしていた

吉川が驚いた口調で
「あれ?二人まだ付き合ってなかったの!?てっきり付き合ってるのかと思ってたよ!(笑)」と大袈裟に驚いた

行野さんは吉川のその大袈裟な口調に苦笑いした

「じゃあここで解散ね(笑)」
舞浜駅から俺と西田さん 行野さんと吉川で別れて解散した

まさか行野さんの前で公表するなんて

でも…
短い間だけど付き合うって決めたことは本当だし仕方ない

西田さんがこれからどうする?と聞いてきた

4人で晩飯食いに行けば良かったんじゃないの?と言うと 二人きりがいいの!と嬉しそうに笑いかけてきた


「たったの1ヶ月しかないんだもの。時間がもったいから。ねえ?飲みに行こうよ(笑)」

俺の腕にまた腕を絡ませ俺は引っ張られるように電車に乗った

俺の自宅の方向とは真逆の方向に電車は走っていく

どこに行くのかと聞いたら西田さんの住んでいる町の駅前に沢山 飲食店があるからそこに行こうと言った

まぁ 西田さんが帰りやすい場所の方がいいもんな

女子が好きそうな洒落た居酒屋に入ったらタイミングよく小さな個室に空きが出てそこに座ることができた

4人以上は座れない程度の個室の広さ
この位の狭い空間 俺は案外落ち着く

西田さんはチューハイを頼んで俺はやっぱりビール
乾杯して料理が届く頃にはもうチューハイを空けるほど早いペースで飲んでいた

大丈夫かと聞くと全然大丈夫!と微笑んだ顔は明らかに赤い

結局 西田さんはチューハイを5杯も飲んだ
嬉しいからだよっ♡と酔って潤んだ瞳で見つめてきた

俺はビールを7杯飲んだ
けど元々酒には強い俺はそんなに酔ってなくて

彼女を部屋の前までタクシーで送り届けることにした

マンションの前に着いて一緒に降り
「じゃ、俺帰るから。」
待たせておいたタクシーに乗り込もうとしたら西田さんに引き留められた

少し呂律の回らない状態でタクシーの運転手に西田さんは金を渡した
「これで足りますよね? もうここでいいですから、、」

そう言ってタクシーを帰してしまった

「なんで?」

駅まで遠くはないから歩いて行ける距離だけど
西田さんのやることは全てが強引でよくわからないところがあって戸惑う

「送ってくれるんでしょぉ?」
目の前のマンションを指差した

「部屋まで送れ、ってこと?」
支えるように彼女の肩を抱いて 彼女の指示通り部屋の前に送り届けた

部屋の鍵を出してドアを開くと上がって行くでしょと言う西田さんに いきなり女の子の部屋になんか入れるわけないよ、と言う俺

付き合ってるのに?と甘えるように見上げてきた

こういう表情も彼女の作戦かもしんない
でも 男の俺はこういうのに弱い

私にはたったの1ヶ月しか時間がないんだもん
毎日会える訳でもないからちょっとでも傍にいたいと言う西田さんを無下に断ることもできず

結局 俺は彼女の作戦に乗ることになってしまった

俺 ずっと西田さんのペースに流されてる

そんな反省と言い訳じみた思いで西田さんと部屋に入った

西田さんの部屋は意外と可愛くて 女の子の部屋だなぁとドキドキした

おぼつかない足取りでチューハイとビールを持って俺の隣に座った

まだ飲むの!?と聞くと飲むと笑った

俺の腕にもたれかかった西田さんにドキドキして間がもたずテレビを点けるとWOWOWの映画が流れた

しばらくビールを飲みながら見てると西田さんはうとうとし始めた

抱き上げてベッドに寝かして布団をかけると本格的に眠ったようだった

帰ろうと時計を見るともう終電はとっくに出た時間になっていて

仕方なく俺は映画の続きを見ながらその場で寝てしまっていた


目が覚めると西田さんは起きていてシャワーから上がったところのようだった

目線の高さに大きなTシャツの下から長く綺麗な脚が出ていて思わず目を反らした

「ごめっ、俺 寝てて、、」

「おはよう…♡ ふふっ(笑) 朝ご飯作るからその間にシャワー使っていいよ。」

「いや、もう帰る、、」
立ち上がった俺にまだ帰らないでと抱きついてきた

シャンプーの匂いがした
女の子の匂い…

「どうして帰っちゃうの? そんなに私のこと嫌い?」

嫌いとかじゃなくて俺がここに居ちゃいけない気がするから

「嫌い?」とまた甘えるように見上げてきた

「そうじゃなくて、、」

「じゃあ朝ご飯食べてね♡ お腹空いたでしょ?」


シャワーを借りることになった

西田さんのあの感じ、嫌いじゃないから困るんだ!
俺、ほんと単純な男だよな

新品で予備に買っておいたという歯ブラシを貰って歯を磨きながら

もしかして…
西田さんとキスとかしちゃうのか? 俺!

なんてことを ふと思った


髪を乾かしてドアを開くと

さっきの大きなTシャツだけの姿のままの西田さんが料理を運んでいた

なんで着替えてないの!?
パンツが見えそうでつい見ちゃうじゃん!!


テーブルの上はめちゃめちゃカラフルだった

色とりどりなサラダにオムレツにオニオンスープとか
男の一人暮らしのテーブルには並ばないようなものばかりだ!

なんか 感動…

「いただきます!!!」
張り切ってる俺に西田さんは楽しそうに笑った

料理も上手くて綺麗でスタイルも良くて
あざとい可愛さで甘えてくるなんて俺って幸せ者なんじゃ?

朝飯はほんと旨くて全部平らげた

腹いっぱいで満足してると西田さんがコーヒーを入れて隣に座った

脚っ!脚ーっ!!

「い、いつも、そんな格好、なの?」

「うん(笑) 楽だもん(笑)」

まぁ自分ちだもんな、うん
体育座りのように膝を立てた

パンツ見えそうだぞ!ヤバいんじゃないッスか!?


「コ、コーヒー飲んだら、俺、帰る、、」

「どうしてそんなに帰ろう帰ろうとするの?そんなにここ居心地悪いかな… それとも私のせい?」

あなたのその格好のせいですよ!!
「あ、脚が… ちょっと… 」

「えっ?脚!? どこか痛いの!?」
西田さんは心配そうに俺の太ももを撫でた

さっ、触らないでっ!俺のが反応しちゃう!
「ち、違うから!俺、帰るよ!」

慌てて立ち上がったら西田さんも立ち上がり腕を掴ませた

「颯真くんともっと一緒にいたいのに… 」と悲しそうな顔で見上げてきた

そんな顔しないでくれよぉ…
「… わかった」

「脚… 本当に痛いんじゃない?」心配そうに見上げる

「脚が痛いとかじゃなくて、西田さんの脚が… 」

キョトンとしてクスクス笑いだした
「良かったぁ!颯真くんの脚がどこか悪いのかと思っちゃった(笑)」

「なんか下に履いてくれない?目のやり場に困るから… 」

「見慣れればいいんだよ(笑)」
Tシャツを少し持ち上げた

「み、見慣れないからっ!」
顔がカーッと熱くなってきた

「颯真くんには私の全部を見て欲しいなぁ… 」

えっ、、

俺の首に腕を回して前のめりになった俺に西田さんはキスをしてきた

ずっと瀬戸際で必死にもがいてきた俺の理性は
そのキスの心地良さに いとも簡単に負けてしまった

俺 やっぱ西田さんに勝てそうもない…






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