気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

風 5 (最終話)

2020-04-19 09:05:00 | ストーリー
風 5






彼女と約束した1ヶ月
それが今日…

この5日間 西田さんからメールも電話も無いし俺からも連絡は取っていない

毎日のように連絡を取り合って 電話してると時間を忘れてしまうから30分までにしようと彼女がルールを決めた

たったの5日間なのにもう何ヶ月も連絡を取ってないようなこの寂しさ…


仕事中も気を抜くと西田さんのことを思い出していた

頭で考えると 彼女達はやっぱり理解できない
俺の性分はそういうドロドロとした妬みをほとんど抱くことのない人生だったからだ

唯一妬んだ記憶があるのは
あの、前のアパートで知り合ったあの子の不倫男にだけだ



俺はそれだけ単純な男なんだろう

心の機微とかそういう繊細なものを感じ取る能力に欠けてるのかもしれない

好きな奴は好き、嫌いな奴は嫌いとついそのまま言ってしまうようなストレートな性格だからこそ人との衝突もあった

でも陰湿な関係を作るよりかよっぽどマシだ!って考えだから どうしても彼女達の気持ちがわからない


そんな風に 頭では否定してしまうのに
心が… やっぱり寂しい

まるで心に穴が空いたみたいだ

彼女と知り合うまでの俺って毎日どう過ごしてきたんだろ

何を思って生きてたんだろ


雨の中 俺の傘を差して帰る彼女が浮かんだ

もうこのまま 会わないまま俺達は終わるのか…?
胸に鋭い痛みが走った

これは心が “嫌だ”って反応してるんだ…



ーーー



仕事を終えていつものように駐車場に車を停めると彼女が俺の帰宅を待っていた

たったの5日間なのに
久しぶりに会ったような気がした

「連絡もせずに突然来てごめんね」
俺の傘を持った彼女は申し訳なさそうにぎこちなく微笑んだ

彼女らしくないその臆した微笑みに胸がチクッと痛んだ

「いや。いいんだ。」

彼女を部屋に入れ俺は作業着の上着を脱いだ

「今日で約束の1ヶ月目だね。早かったなぁ(笑)」
明るい口調で俺に笑顔を向けた

俺は冷蔵庫から冷やしてあるお茶をグラスに入れてテーブルに置いて座った

「ありがとう(笑)」

「…俺やっぱわかんないわ。君のこと。」

彼女は口を固く閉じ視線をグラスに移した
「… だよ、ね」

「でもさ。そういうのも全部引っくるめて君なんだよな… 」

泣きそうに目を潤ませ黙ったまま真っ直ぐ俺を見つめてる

「たったのひと月だったのに、もう一年は付き合ったような濃いひと月だった気がする。

特別なことなんか なんもしてあげられなかったし俺のくだらない話に君が笑ってさ。ただそんな風に過ごしただけだったけどな。。

連絡を断ってたこの5日間 君のことばっか頭に浮かんでさ。俺、君が好きなんだってほんと実感したわ(笑)

俺さ。君にはいつも笑ってて欲しいんだわ。俺には君が太陽みたいに見えてるからさ。」

彼女は両手で顔を覆い泣き出した
俺は彼女に初めて “好き” という言葉を伝えた


「颯真くん… 私も好き」

「だな(笑) 知ってた(笑) … また俺とサーフィン、行きたい?」

うんうんと頷いた

「じゃあ行こ(笑)」
ティッシュの箱を彼女に差し出すと豪快に鼻水をかんだ

「ふふっ!(笑) 早く泣きやんで? じゃないとキスできないよ。今キスしたら窒息しちまうだろ?(笑) 」

目も鼻も真っ赤な彼女が照れくさそうにはにかんだ

「鼻が真っ赤な君も可愛いけどな(笑) ははっ(笑)」





ーーー



梅雨が明け 季節はもう夏 ーー


海は夏を楽しむ人で賑わっていた

沢山の水着姿の人達の中に可愛い女の子の3人組がいた
その中でも一際イイ女がいた



隣にいた天羽が俺に話しかけてきた

「くぁ~♡美人でしかもイイカラダ♡クソムカつくっ!!」

天羽に脇腹を肘打ちされた
「グハッ!… なっ、なにすんだ!」

その太陽のような女性が俺達に気付き駆け寄ってきた


「二人でなにやってるの(笑) 」

俺がその水着姿の彼女を敢えて舐めるように見ると
「いやらしいなぁ~もう♡(笑)」と可愛くたしなめられた

「そうさせるのはいつも君だろ?」

俺の腕が彼女の胸に挟まれながら女の子友達の所に連れていかれた

初めて見る女の子達に俺は天羽と挨拶をすると
彼女は俺を彼氏だと紹介した

太陽みたいにパワフルで天真爛漫な彼女とそれに振り回されてる俺とのパワーバランスは相変わらず変わらないけれど

俺と“恋人” 西田さんとの交際が始まって初めての夏がやってきた


俺と彼女に
熱い風が吹いてきた ーー









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