気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

beautiful world 27

2023-01-28 00:57:00 | ストーリー
beautiful world  27


【初めての彼女(4)】




大学の卒業して教員職に就いた僕と
旅行会社勤務2年目に入った舞

お互い休日が合わなくなってきたけれど
月に1、2回は仕事帰りに会い一緒に晩飯に行って近況を話し合っていた


そして付き合い始めてから7年目

25歳になった僕は当たり前のように
舞との“結婚”を意識し始めた

舞の仕事が忙しいようで
今夜は二ヶ月ぶりに会う

少しワクワクした気持ちの僕とは違い
舞は昨日も会ったかのように淡々としていた

やっと会えたのにもう少し嬉しそうな顔して欲しいんだが…(苦笑)


食事をしながら

“舞の友達って結婚してるのか?”とか
それとなく“結婚”という言葉を何度か出してみたけれど反応が薄い

舞はなにか考えごとをしているようだった


『舞〜??そろそろ店出る?』

『え、あ、そうね。』

『考えごと?悩みごとか?』

『悩みじゃなくて…私、移動希望が通ったの。』

部署の移動希望?

『希望が通った割に嬉しそうじゃないな(笑)』

『それで今夜あなたに話があって。』

『話?』

『私、海外勤務が決まったの。』


ーー は…?

今“海外”って言った…?


僕は内心
激しく動揺した

海外勤務を希望していたなんて一言も聞いていなかったからだ


というか

僕は今夜 舞に結婚の意思があるのか
それとなく確かめてようとしていたのに

海外勤務って
なんだよそれ…


『まさか…行くつもり…なのか…?』

『ええ。だから別れて欲しい。』


ーー は?


『な、なんで別れなきゃならない!?』

『海外での遠距離恋愛なんかできる訳ないでしょ。』


ーーそうだ

舞はそもそもこういうやつだった…


やりたいこと優先
仕事やキャリア優先

僕なんて
どうでもいい存在だったのか…?


僕がどんな気持ちなのか
どんな考え持っているとか考えもしない


僕はいつも二人で楽しめることや
舞が嬉しくなることを考えて

近い将来二人で家庭持って
毎日笑って過ごして…

二人でーー



でも舞の未来図に僕はいなかった

僕は舞の人生には“必要のない存在”だったってこと…なんだな


『そうか…わかった。』

席を立ち
『じゃあ…』

会計を済ませて店を出た


まさか…

こんな風にあっさりと
今夜別れを切り出されるなんて思いもしなかった


僕は舞にとって
必要のない…

悲しくて
悔しくて
寂しくて
惨めで

堪えようにも
勝手に涙が溢れ出る

心を傷つけられたから?
もしかして僕は舞に依存していた?


わからない
なにも…

頭が回らない…


人の少ない通りを選んで進むと
川辺に着いた

舞と付き合い始めた時に一緒に歩いた遊歩道だった

しまったと思ったけれど
薄暗くて人通りも少ないから気持ちが落ち着くまで真っ暗な川を眺めていた


舞と過ごしたこの7年は
本当にいろんな思い出があった

わがままに振り回されて驚くことや
二人で一緒に笑って幸せを感じた瞬間も沢山あった

一緒に写真撮りに行ったり
舞に服を見立ててもらって
見たことない自分を発見したり

舞のいつも前だけを向くポジティブな性格に考え方を学んだこともあった

意見の相違で口ゲンカしたことも結構あったけど

どんなことも
全てが新鮮で楽しかった…


なのに
こんな風にあっさりと別れてしまうなんて思いもしなかった

僕は舞にとって
その程度の存在だったことが

辛く悲しい…



『…陽太』

振り返ると舞が立っていた

僕の後を追いかけてきたようだった

『陽太がそこまで傷つくなんて私思わなくて…』


ーーは?

7年だぞ!?

『こんなにも長い間付き合ってきたのに
突然別れを切り出され簡単に“ハイさよなら”で気持ち切り替えて別れられるはずないだろう!』

傷つかない訳ないだろ!

でも
舞にはわからないんだーー


『君はいつも自分のことしか考えない自己中な女だった。僕は舞との将来のことも考えて…なのになんで…こんな…簡単に…受け入れられない…』

自分がこんなに泣いて
情けないことを言う男だとは思いもしなかった


『私、結婚願望ないの。』

それは
なんとなくわかってたよ…

なのになんで僕は舞と結婚なんて考えてたんだ…

『刺激がないと生きてる気がしない。安定の生き方なんてつまらない。それに結婚なんて縛り合うみたいなものじゃない。』


『結婚が縛りって考え方間違ってる!結婚は一緒に支え合って生きていくものだ!』

『それなら別に入籍しなくても可能よ。』


何を言っても
もう舞とはわかり合えない...


ーーそう悟った



『そもそも僕たちは結婚観も人生観も全て違ってたんだな。このまま付き合っても上手くいくはずがなかったんだ。別れるのは正解だな…』


『ごめん…陽太。』

『もういい…別れよ。』


僕と彼女との7年という長い交際は

信じられないほど

まるで
シュールなコントみたいに

あっけなく終わったーー






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beautiful world 26

2023-01-22 05:08:00 | ストーリー
beautiful world  26


【初めての彼女 (3)】






僕は晴れて希望の大学に入り
大学生になってからは勉学と柔道を両立しながら

週末は彼女とデートをした

デートは主に彼女が主導権を握っていて僕がついて行くような感じだった

週一しか会わないことに不満はなさそうで
彼女自身もバイトやスケジュールが詰まっているようだった

もっとも
僕も柔道とバイトしかしていないことを彼女は知っていた

周辺の友人達は合コンとか旅行とか大学生活を謳歌していて

僕も撮影旅行したいなと思い始めた


その頃
ようやく舞ちゃんを“舞”と呼べるようになった

女の子を呼び捨てにするのは初めてで
慣れるまでに時間がかかった

舞はとにかく食べ物には拘りが強く
安全で栄養面をとても気にしていて

僕には筋肉がつきやすく栄養価の高い料理を作ってくれた

美意識が異様に高かったし
スポーツジムにも通っているようだ

うちに遊びに来てもストレッチをしながらテレビを見ている

『あれ?言ってなかった?私雑誌のモデルもやってるの。』

と…

バイトってモデルだったのか!
知らなかった!


舞はいつもそうだ

『なんでいつも事後報告…?(汗)』

『言う必要ある?』


事細かく全て教えてくれとは言わないが
一応彼氏なんだし

普通そういうの教えてくれるもんじゃないの?

女の子ってそういうものなの?


とにかく初めて女の子と付き合う僕は驚きが多かった

というか舞が特殊だったことは
付き合っていく内に徐々に気付いていった


僕は華やかな雰囲気の舞と比べてもごく一般的な(身体はデカいがそれ以外はむしろ地味なくらいの)普通の男

僕の何が良くてこうして一緒にいるのか
時々わからなくなる


『僕のどこが好きなんだ?』

『んー?(笑)』
ニヤニヤ顔で僕を眺めていたら僕の膝の上にまたがってきた

『私しか知らないところ(笑)』


“知らないところ”??

『それはどういう、』

『まず顔が好きでしょー?』
頬を撫でた

『低くて優しい声とかー、』
喉を指先で撫でる

『この逞しい身体も…』
指先は腕や胸筋をなぞる

色っぽい表情で迫られて
僕のは硬く大きくなるのは必至で

『こっちも…』
舞は腰を少し揺らしながら刺激してきた

『逞しいよね…ふふっ♡(笑)』


…うっ、、


『キスも…』
わざと焦らすように僕の唇を指先で撫でてきた

僕は舞のルームウェアの中に手を滑り入れ背中を撫でると唇を重ねてきた




舞はセックスも大胆だった

色んな体位を求めてきたし
恥じることなく要望も伝えてくるから満足させる術を学んだ

『陽太とのセックス、好きよ(笑)』

それは僕も好きだが
それだけで僕らは付き合ってるって言えるのか…?

次第に
心が虚しく感じるようになっていった

すると舞の心を確かめたくて
ますます身体を求めてしまう

舞は束縛は嫌うのに
僕から強引に求めると悦ぶ

それで会うと必ずセックスをするようになっていった

本当にこんな関係で良いのだろうか…?



『舞、写真撮りに行こうよ(笑)』

最近全然カメラを握っていなかった

いつも風景写真ばかりだったけれど

初めて人物を撮りたいと思った

その“初めて”は
やっぱり舞が良い


モデルをやっていて
撮られ慣れている舞は自然に美しいポージングをした

『さすがだな、慣れてるな(笑)』

『そりゃね、ふふっ(笑)』


ファインダー越しに見る舞に

やっぱり整った顔の女なんだなとあらためて認識した


『私、陽太が大好きだよ(笑)』


ーー舞?


『私の気持ち、ずっと気にしてたでしょ?(笑)』


どうして…
わかってたのか…?

『陽太のこと全部好きよ。ご飯の食べ方が綺麗な所も、私を認めてくれる所も、とにかく全部。陽太の優しく誠実な所もね(笑)はじめにそう言ったじゃない(笑)陽太の誠実な優しさ。それが今も変わらないから好きなの!(笑)』



そうだ…

最初から舞はそう言っていたのに
何故 僕は忘れてしまっていたんだろう…


『陽太はどうなの?私のこと、ほんとに好き?』


ーー “好きだ”


『あ…』


“好き”という言葉が自然と浮かんだ

訳もなくふいに涙がこみあげてきて
僕は慌てて気付かれぬようさり気なくカメラを構えてシャッターを切った


その時

何故涙が込み上げてきたのか
自分でもよくわからなかった


『ねぇねぇ、どうなのよ〜(笑)』

ファインダー越しに映る舞の笑顔がキラキラと輝いている


ーー綺麗だ…


本当に
そう思った…


僕はやっぱり舞が好きだったんだ…



ずっと舞の心を求め

やっと手に入れたと思ったら
既に手の中に持っていたことに気づいた

そんな感覚だった…


わかってたはずなのに
実感していなかった


『舞ってほんとはめちゃくちゃ綺麗なんだな(笑)』

『え?今さら〜?(笑)』

『自信過剰って言われるだろ!(笑)』

『自信過剰なんかじゃないわよ!事実そうでしょ?(笑)』


見た目の美しさじゃなくて
自由に生きる女性の魂の輝きを

僕は見た

そんな気がするーー




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