東方のあかり

東アジア(日、韓、中+その他)のまとまりを願ってこのタイトルにしました。韓国在住の日本人です。主に韓国発信の内容です。

101歳の哲学者・金亨錫(キム・ヒョンソク)さん

2021-02-21 17:33:23 | 韓国物

101歳の哲学者・金亨錫(キム・ヒョンソク)氏は今も現役で講演したり執筆したりしている。
さながら韓国版日野原重明といえようか。
金亨錫さんは1920年に北朝鮮の平壌で生まれた。
平壌で高校生まで送り、上智大学の哲学科に入学し、1943年に哲学士をとって卒業した。
韓国に戻って延世大学で教鞭をとり同大学の名誉教授となっている。
1959年刊行のエッセイ集『孤独という病』がベストセラーとなった。その後も数多くの著書がある。

101歳で元気に講演したり出版活動をしているから、
新聞のインタビューなどにもよく登場している。

今回は、中央日報のコラムに載った記事をもとに金亨錫さんの教育観などついてみていきたい。
(以下は金亨錫さんの話がベース)

聖書を見ると最後の晩餐の時、イエス様が弟子たちの足を洗ってあげる場面がある。
ところでこの場面は「マルコ福音」、「ルカ福音」、「マタイ福音」には登場しない。
4つの福音書の中で最も後代に記録されたという「ヨハネ福音書」にのみ記録されている。
不思議なことではある。
最後の晩餐でイエス様が弟子たちの足を洗ってあげた部分は、
弟子たちが忘れようとしても決して忘れられない場面だったはずだ。
それでもマルコ・ルカ・マタイ福音には書かれていない。
このため度々論争が起こっている。
ある人は「聖書の記録には一字の誤りもない。すべてが100%事実だ。無条件に信じなければならない」と言い、
また別の人は「この部分はイエス様の死後に生まれた話だ。歴史的事実ではない。
だからヨハネによる福音書にのみ登場するのだ」と反論している。
「聖書でこの部分を読みながら私たちが知るべきことは何か。
それが歴史的事実かどうか。イエス様が弟子たちの足を洗ってあげることは本当なのか違うのか。
こういうことが重要なのではない。

--では、金亨錫教授が重視することは一体何か(インタビュアーのことば)。
「本当に重要なのは弟子たちの足を洗ってあげるイエスの心を知ることだ。それが核心だ。
だからこの話を「大きく」受け止めねばならない」

人々が小さなことで論争する時、金亨錫さんは'大事'を問題にする。
大きなイメージやものごとの核心を引き出す「大きな目」があるから可能なことだろう。
金亨錫さんは大学の教壇で生涯、学生を教えてきた教育者でもある。
彼が考える「子どもの教育法」とはどんなものだろうか。
子どもたちを教える時、本当に重要なことは何か。
子どもの教育においての核心は、親が子供の自由を大切にすることだという。

親はみんな子供を愛している。ところで、「子供の何を愛するのか。」
子どもが親の期待を満たすことを望み、期待が満たされた時、子供をもっと愛するようになる。
ところが教授は「子供の自由」を愛せと言う。なぜか。
相手の自由を愛するということが一番重要だからだ。

金亨錫教授は、韓国戦争(1950年)勃発前、共産主義治下の平壌で暮らしていた。
暮らしてみると共産主義社会には愛がなかった。
なぜか?
そこでは自由を拘束するからだ。相手の自由を拘束するわけだからどうして相手を愛することができよう。
子どもに対しても同じだ。

--具体的にどうすればいいのか。どうすれば子供の自由を大切にすることができるのか。
自由は、すなわち、選択だ。子供に選択の自由を与えなければならない。
これをして!あれをして!というんじゃなくて、こういうのがあって、またああいうのがある、
あなたは何にする?と選択の自由を与えなければならない。

--選択の自由を与えると、どうなるのか?
子どもに筋肉がついてくる。自分の人生を生きていく心の筋肉だ。
私はソウルと地方を行ったり来たりしながらたびたび講演をしている。講演も聞いたりもする。
講演者は通常、最後に結論を出す。
これはこういうことで、あれはああいうことだ。だからこれをしなさいと。このように結論を出す。
私はそうしない。

-- ではどうするのか。
これはこうです。あれは、ああです。私はこんな感じです。私の友達が見るとこうです。皆様はいかがでしょうか。
選択は皆さんがしてください。このように言う。

-- なぜそう言うのか。
聴衆の自由を大切にしているからだ。子供の教育も同じだ。親がどうして子供に選択の自由を与えるのだろうか。
子どもが大好きだからだ。子どもの自由を大切に考えているからだ。
子どもがとても幼い時は保護してあげなければならない。
しかしそれは思春期までだ。その次は、子どもを先に立たせ、親が後ろに行いていく。
選択は君がしなさい。お母さんとお父さんはあなたを愛している。選択は君の自由だと答えるのだ。
そこにこそ愛があると思うのだ。
教育学の大家であるジャン・ジャック・ルソーは"自然に帰れ"と言った。
人間は生まれた時から自由意志を持った存在だ。
自由意志を持った人間、それが最も自然な人間なのだ。

"子供の自由を大切にしなさい" "子供の自由を愛せ"、
それが哲学者・金亨錫さんの今回のメッセージだ。

それにしても101歳でバスに乗っても椅子には座らないという元気さだ。
こういう強さを見習って、2021年も元気に生きていきたいと思う。

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