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化学反応式CO2発生器のまとめ

2009-07-05 22:59:22 | 自作CO2発生器(化学反応式)

前回のバージョンで一応実用レベルになったのですが 数回しか検証ができなかったのでちょっと自信が無く「実用版」と表現していませんでした。
その後も完成度を上げるために検証を続けていて 今回のバージョンでは途中で中身をかき混ぜなくても最後まで確実に安定して反応するようになり 500ccペットボトル×3本仕様で小型CO2ボンベ(74g)を上回る量のCO2を発生させることができるようになり性能的に十分実用的なレベルのCO2発生器になりました。
一応 これで目標に達したので今回の記事で『化学反応式CO2発生器』は一区切りとします。

高圧が必要なCO2ストーンが使えない 構造が複雑でかさばる(見かけもチューブだらけで怪しい)などの点を除けば小型ボンベのシステムと同等の使い方ができます。 ランニングコストもボンベを買うよりかなり安いのでそれなりにメリットはあると思います。¥3000~¥5000程度の工作費で 添加量が自由に調節できてタイマー制御が出来るCO2発生器が作れるのは魅力だと思います。準備もクエン酸と重曹を水に溶かすだけなので発酵式と比べるととっても簡単です。
ただ 間違った扱いをすると急激な反応による事故も考えられるのと穴を開けるのにもそれなりに精度が必要なので このCO2発生器の構造が理解できる&工作好きな人 にはおすすめ…としておきます。


基本構造と作り方についてはご面倒ですがバージョン1の記事から順に読み進んで下さい。どういう過程で現在の構造になったのか理解していただけるのと 失敗や注意事項もいろいろと書いているのでアレンジされる時の参考にもなるかと思います。

前回の仕様からのマイナーチェンジは重曹ボトルにクエン酸を送り込むプラパイプの先をちょっと加工したのみです。



筒切りのパイプのままだとセット時にプラパイプの中に重曹が詰まってしまうのとCO2の泡がパイプの中を上ってくることがあるのでそれを防ぐためにパイプの先をつぶして横穴を開けました。





以前は時々このパイプで重曹を攪拌していたのですが水の量を多くすることでこの問題を解決することが出来ました。一度セットすれば途中で振ったり混ぜたりしなくてもCO2は最後まで安定して発生し続けます。

クエン酸と重曹の量を多くすれば当然CO2もたくさん発生するのですが 水溶液が濃くなると重曹は水に溶けにくいので反応しなくなることがあります。反応が安定して続く範囲内で一番濃い濃度を探っていました。

いろいろ試してたどり着いた現在のレシピです。

クエン酸ボトル: クエン酸を150g入れて水をボトルいっぱいまで入れます(クエン酸は完全に溶かしておきます)
重曹ボトル  : 重曹を250g入れて水をボトルの8分目まで入れる
サブタンク  :空のまま(何も入れない)

水をたくさん入れて水溶液の濃度を出来るだけ下げるのがポイントです。
この量で計算上ではCO2が約100g発生します。
セット時にクエン酸は全て水に溶けた状態で重曹はボトルの半分ぐらいまで溶けずに沈澱した状態です。

クエン酸の量に対して必要な重曹の量を式にすると
クエン酸の重さ(g)×1.3+50(g)=重曹の重さ(g) になります。
クエン酸に対して反応に必要な重曹の量は重量比で1:1.3です(クエン酸100gだと重曹は130gですね)重曹を少し多めに(+50g)入れておくのがポイントです。
クエン酸と重曹はきっちり重さを計って入れて下さい 適当に入れるとどちらかが余って無駄が出ます。
この割合でセットすると クエン酸が無くなる時=終わる時 なのでクエン酸水溶液の量であと何日もつか残量が一目で分かります。

反応が終わるとクエン酸ボトルは空になり 重曹ボトルは反応後の水溶液でいっぱいになって重曹が底に少し残っている状態で サブタンクは半分ぐらいまで反応後の水溶液が溜まった状態になります。

上記がオススメのレシピですが 試してみたところ クエン酸200gと重曹310gの組み合わせまでなら何とか使えます。ここまでくるとさすがに後半では重曹ボトルで細かい泡がいつまでも出ているのでこの量がギリギリ最大量だと思われます。

 開始時(クエン酸200g仕様)

         ↓

 終了時


いろいろ試行錯誤の結果 今の構造にたどり着きました。これでも最小限のパーツで構成されていてそれぞれのパーツや形状にはそれなりに意味があるので再度書いておきます。

クエン酸ボトル



・プラストーン改フィルター:どうしてもセット時にごみの混入はあるので詰まる原因になります。ゴミを吸い込まないようフィルターが必要です。



・5Mステンレス両切りボルト:現在は長さが30mmのものを使用しています。この頭の無いボルトを使うことによってフィルターを取り付けることができるようになります。重曹ボトルに送り出すクエン酸の流量を制限する大事なパーツで CO2の発生を安定させるためと重曹ボトルよりストーン側でチューブが抜けてしまった時に圧力差で重曹ボトルにクエン酸が一気に流れ込まないようにする安全対策上重要なパーツでもあります。
・逆流防止弁: 無くても動作しますがトラブルなどでクエン酸ボトルの圧力が抜けてしまった時に重曹がクエン酸ボトルに逆流しないようにするための事故防止用なので省略しないで必ず取り付けて下さい。シリコンディスク弁を使ったスドーのチェックバルブを使うとCO2の発生がより安定します。チューブが抜けてもトラブルにならないようボトルの中に取り付けます。

重曹ボトル
・プラパイプ: 最初は水に重曹が溶けているので水面へのクエン酸水溶液の滴下でも反応するのですが重曹は水に溶けにくく 反応後の生成物で水溶液が濃くなってくると水面への滴下ではCO2が発生しにくくなります。レスポンス良く確実に反応させるために重曹の中に差し込んだパイプでクエン酸を送り込みます。

 

スーパーマーケットでこんなのを見つけました 重曹(600g)とクエン酸(300g)です。



台所用の洗剤として売られていて どちらも¥350程度です。1個づつ買うとちょうど2回分になるので化学反応式を試して見たい時にぴったりの量です。
量をまとめて買うならネットショップで買うのがお得です。私はこちらのショップで買っています。クエン酸も重曹も取り扱っているので便利です。

アクアプランツさんでこんなストーンを買いました(右側の小さい方です)。



以前紹介したCO2添加用(#240)の10φバージョンで より小さく目立たなくなって小型水槽向きです。小さくてもちゃんと細かい泡が出ます。

何度も書きますがこの発生器はボトルをまとめてケースに入れたり 3本まとめてくくるなど 倒れないような工夫をして下さい。


化学反応でのCO2発生器は制御が難しいので自作例がほとんど無く 身近にあるもので作れないかと工作好きのおっさんは燃えたのですが…化学式の読み方を思い出すところから始まりいろいろと失敗を重ね やっとここまで来ました。 圧力が低い目なのでCO2ストーンなどの拡散器が使えませんが 自作なので圧力をもっと上げようと高望みせずにこの程度の圧力が安全かなと思っています。

私の場合 トリミングした水草を一時的にストックしたり増やしたりしたい時に水草水槽から離れた場所に置いてある水槽で育てているのでCO2を添加するものがもう1セット必要になります。常に水草を育てている訳ではないので高価なボンベのシステムをもう1セット買う気にはなれません。でもボンベによる添加に慣れてしまっていると添加量が調節出来ない発酵式では物足りなさを感じるのですがこの「化学反応式」だとタイマー制御までできます。

水草水槽を維持していると 使っていないスピコンやエアーポンプやタイマーなどがすでに手元にあったりするのでほんのちょっとの出費でこのCO2添加器を作ることができますね。

水槽へのCO2の強制添加を考えた時に ボンベによる添加と発酵式での添加がありますが この化学反応での添加も他にはない特徴があるので「化学反応式」もCO2添加の選択肢のひとつになればいいな…と思っています。


製作される前に必ずこちらをお読み下さい。


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77 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (atabish)
2009-07-06 02:24:55
こんにちは。はじめまして。
atabishと申します。
以前から、毎回楽しみに拝見しておりました。今回、遅ればせながらコメントさせて頂きます♪

化学反応式CO2発生器、すばらしいですね!!これは自作の域を超えて、発明だと思います!
ボンベ式だと、コストのことを考えてついチマチマ使いがちですが、化学反応式だとがんがん使えちゃいますね♪
しかも、セットから終了まで世話をしなくて良いとは・・・
もう・・・すばらしいとしか言いようが無いです。
さっそく私も試させていただきます!

この化学反応式は・・・広まると思いますよ。



もしよろしければ、リンクさせていただいてもよろしいでしょうか?
構造が複雑ですが (mizuwarabi)
2009-07-06 19:18:47
atabishさん はじめまして

時間がかかりましたがやっと実用品らしきものになりました。
ここまでたどり着くまでに作った大量の失敗作がじゃまになってきたのでそろそろ整理しないと…

細かい作業が多いのですがCO2漏れがなければきっとうまく動きますよ。

質問があればサイドバーの「メッセージを送る」から遠慮なさらずにどうぞ!

リンク 大歓迎ですよ こちらからもリンクさせていただきますね。
(ブログ拝見しました ピンセット製作記事に食いついてしまいました)
う~ん (TAKE☆)
2009-07-10 09:08:47
化学駄目なので私は発酵式のままかな?

一緒に園芸用の肥料入れたことありましたけど、色が変わっていくだけで他に差はありませんでした。(流石に無意味だったかなww?)
CO2の添加方法 (mizuwarabi)
2009-07-10 19:09:59
TAKE☆さん
発酵式は構造が簡単でランニングコストも安くて確実に効果があるものなので普及しているのだと思います。
化学反応式も実用的にはなりましたが どちらの方法にもそれぞれ特徴があるので ご自身のスタイルに合ったCO2の添加方法を選択されればいいかと思います。
CO2の添加量が・・・ (abmcoc)
2009-07-30 18:19:57
はじめまして。
自分もサイトを拝見させて頂いてから早速化学反応式二酸化炭素発生装置を作ってみました!
ただCO2はうまく発生したのですが添加量の微調整が何故かうまくいきません。(勢いよくCO2がでたり、逆にまったくでなかったり)空気漏れもなく、クエン酸と重曹の量も問題無いと思うのですが、問題点があるとしたらどこでしょうか。
ムラの出る原因ですが (mizuwarabi)
2009-07-30 18:57:23
abmcocさん はじめまして

申し訳ありません コメントの内容では詳しい状況が分からないのでアドバイスが思い浮かばないのですが
CO2は威勢よく出たりでなかったりするのは水槽の中でしょうか?重曹ボトルでしょうか?
この発生器は一定の圧力(=エアーポンプの圧力)を保つようになっているので基本的にはムラのある出かたはしないはずなのですが…。
スピコンは使用されているのでしょうか?スピコンでしっかり流量が絞られていれば水槽内でCO2の発生にムラは出ないと思います。
ボトル内で勢いよくCO2が発生するようならクエン酸ボトルの中の逆流防止弁の抵抗が原因かもしれません クエン酸ボトルのステンレスボルトはどれくらいの長さのものを使われているのでしょうか?このボルトが短いとクエン酸が勢いよく重曹ボトルに流れ込むので勢いよくCO2が発生してしまいます。

よろしければ詳しい状況をサイドバーの「メッセージを送る」でお知らせください。
状況が分かれば解決策が思い浮かぶと思いますので
abmcocさんへの返信 (mizuwarabi)
2009-08-03 18:01:46
abmcocさん
メッセージをいただきましたがアドレスが入力されていなかったので返信をすることができず コメント欄に返信を書かせていただきます。

ステンレスボルト(5M)は3~4cmぐらいが適当です。2cmだと最初はボコボコと泡が出て一気に圧力が上がります。
重曹ボトルでは常に泡が出ている(CO2が発生している)状態では無く圧力が上がっている間(数分~10分程度)は泡の発生は止まっています。重曹ボトルのCO2が消費されてボトルの圧力がエアーポンプの圧力以下に下がるとクエン酸が重曹ボトルに添加されて再び泡(CO2)が出始め ボトルの圧力が上がるとまた泡の発生が止まります。あとはこの繰り返しで重曹ボトルの圧力が一定に保たれる構造になっています。
CO2のムラについて (abmcoc)
2009-08-08 00:15:21
mizuwarabiさん、返信ありがとうございます。アドレス忘れてすみません。
どうもステンレスボルトの長さが短かったようですね(汗
基本的なポイントもわかりやすく説明して頂いてありがとうございます。
ボルトを買ってきてもう一度トライしてみようと思います。
5Mのボルト (mizuwarabi)
2009-08-08 17:55:48
abmcocさん

この化学反応式の発生器はこのボルトが「キモ」になります。
2cmのボルトでも圧力は安定しませんが機能はするはずです。
両切りのボルトが手に入らなければ5M×40mmのステンレスボルトの頭を目立ヤスリか鉄のこで切り落として作ります。切断面をヤスリできれいに整えておかないとシリコンチューブがちぎれる原因になります。
重曹ボトル内で二酸化炭素の泡がポコポコといつまでも出るようなら どこかで漏れているかも?

ボルトを長くするときっと安定しますよ また何かあれば連絡を下さい。
はじめまして (なか)
2009-09-08 22:22:10
こんにちは。
20年ぶりに熱帯魚を始めたくなっている今日この頃。
色々情報収集していたらここに辿り着いた次第です。
このCO2添加システムは、非常に興味があります。

物理とかそこらへんの知識はありませんが、工作は好きです。
できればクエン酸を上から滴下し、外部動力無しの方向で考えてみたいです。
上からの滴下方式もご検討されたようですが、実用面の難点はどのへんとお考えでしょうか。
上のクエン酸ボトル(A)と下の重曹ボトル(B)の圧力の同調が取れれば何となく動きそうな気がしてます。
何はともあれ、まずは試作してみようと思います。
行き詰る可能性大ですが、そんな時、ご相談させて頂いてもよろしいでしょうか。

では。

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