私は、20年近く前に介護施設でボランティアをしていた。その施設はグループホームというもので、健康体ではあるが認知症の高齢者が入居されている施設だった。
私は、週に一度、オリエンテーションという名目で昼間お手伝いをしていた。
ボランティアをすると就職活動に有利だから、とかなんとか先輩に言われ、良からぬ計算があつてのことだった。
そんなある日、元気の良い90歳を超えた、おばあちゃんがいた。彼女は、とても活発で話好きで面倒見が良かった。オリエンテーションで輪投げをしていた時だったか、はっきりは覚えていないが、彼女は外れた輪投げを拾ってくれたり、計算をしてくれたりと、オリエンテーションを良い意味で仕切ってくれていた。私を含め、ボランティア、施設の職員の方が少しほっとした、次の瞬間、事が起こった。
落ちていた輪を拾う瞬間、足元がよろけ、まさにスローモーションのように右に寄れ転倒をし、近くのテーブルの角に体を、もっと正確に言えば頭を激しくぶつけたのだ、その時の、おばあちゃんの表情は険しく激しく、何とも表現出来ない恐ろしいものだった。
本当にユックリユックリスローモーションで倒れ込んだ。
鈍い音と同時にその場にグッタリ倒れ、顔面が真っ白になっていく、おばちゃんを見て、私は血の気の引き、呼吸がしにくくなった。私は激しく吐き気がしたのだ。
そしてその時の光景は忘れることなく、今もはっきり覚えている。