司法の政治武器化が失敗した左翼の新戦術に注目せよ
マルクスの階級闘争史観がしずかに甦っている
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アジビラ一枚で過激な運動に身を投じる、ものごとを深く考えたことのない一群の人々がいる。1960年代後半からの極左運動の広がりは、世界的な規模で進行し、やがて暴力へとつきすすみ、爆弾からハイジャック、テロ、そして内ゲバ殺人まで付随して爆発的な破局を迎えた。
マルクスにもとづく左翼思想の根幹にあるのは「憎悪」ではあっても『愛情』ではない。階級を敵視することは、逆に或る階層を刺激する。米国の左翼運動は様々な政治主体にかたちを換え、昨今は権力構造にもぐりこんで政策を左右した。
トランプのあら探し、滅茶苦茶な裁判を展開して、バイデン政権の四年間、かれらが暗躍した司法の政治武器化が失敗した。
いま、これに替わって左翼の新戦術が登場し、共和党支持のビリオネア(億万長者)に照準を絞った。
このマルクスの階級闘争史観の蘇生が注目するに値する。
新興極左グループ「階級連帯局」が米国のビリオネアのなかの千名を「監査リスト」に加え、何事かを追跡するプロジェクトを立ち上げた。アジビラ一枚で無警戒の場所からいきなり過激派が誕生し、テロリズムを呼び起こすからだ。
その極左集団の目的は一般的な企業の株主が要求する「財務の透明性」ではなく、億万長者とトランプ大統領の関係を記録し、「彼らを打ち負かす」情報のネットワークだ。
著名な億万長者として、リストアップされたのはイーロン・マスク、パランティアCEOのアレックス・カープ、政府効率化省(DOGE)の前幹部アントニオ・グラシアス、シリコンバレーの黒幕=ピーター・ティール、ジェフ・ベゾスなど、アメリカビジネス界で最も裕福で政治的な影響力のある人物たちを、顔写真とともに「指名手配ポスター」が添えて、これら億万長者を『階級の敵』だと扇動している
かれらは言う。
「アメリカ合衆国には約1,000人の億万長者がいます。私たちは彼ら全員を監査し、労働者階級に彼らを倒すために必要な知識を与えています。」
これは、抗議→抵抗→革命というエスカレーションモデルを採用した反トランプ抵抗運動の基底にある戦略に合致する。トランプの支持基盤を攻撃することで、彼の正当性を揺るがし、統治能力を混乱させる目的だ。
労働、信仰、教育、公務員などカテゴリーに識別し、とりわけ公権力(軍隊と警察)を階級の敵だと定義する。重要な標的がAI、シリコンバレー、通信革命の主役たちでトランプ陣営に馳せ参じた大富豪たちである。
マルクス主義の階級闘争理論を想起する。実例は既に「テスラ・テイクダウン」抗議活動に見られる。
「テスラを倒せ」という抗議キャンペーンでは、炎上するテスラ・サイバートラックの画像を使用した。
テスラの車両やショールームに対する数々の放火や破壊行為によって、イーロン・マスクは約1000億ドルの時価総額を失った。次の標的は?
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和七年(2025年)8月22日(金曜日)
通巻第8917号
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