goo blog サービス終了のお知らせ 

頭の中を整理しながら次へとすすむ

表現力を身につけるため

民訴 一部認容判決

2009-08-06 06:37:48 | 民事訴訟法
問:無条件の明渡請求に対して、賃貸人が20万を立退き料と支払うことで、借地借家法の正当事由をみたすと判断し、建物の明渡しを認容する判決の是非

(1)本問、一部認容判決は、246条に反しないか

ア 本問では、請求規約よりも、「20万円」程度の立退き料との引換えに明渡しを認めるほうが、①原告の意思に合致
 また、被告は立退き料を得られるのだから、被告への不意打ちにはならない

イ したがって、立退き料を絶対に支払わないという原告の意思が明らかな場合など、特段の事情がない限り、246条には違反しない

(2)としても賃貸人たる原告が立退き料の提供を申し出ていない場合、本問判決は、弁論主義の第1テーゼに反しないか

ア 思うに、当事者意思の尊重、不意打ち防止の見地から、訴訟の勝敗に直結する事実、すなわち主要事実を弁論主義の対象とすれば十分
 そこで、原則として主要事実のみが弁論主義の対象
 もっとも、一般条項などの不特定概念の場合、その内容をなす具体的事実が審理の中心
 そこで、不特定概念の場合には、当事者の意思を尊重すべく、その内容をなす具体的事実も準主要事実として弁論主義の対象となると解する

イ 本問では、確かに「正当の事由」(借地借家28条)
 しかし、立ち退き料の申出は、不特定概念である「正当事由」の内容をなす準主要事実

ウ したがって、原告が立退き料の提供を申し出ていないのに、これを判決の基礎とすることは、第1テーゼに反する

エ よって、この場合、本問判決はできない

(3)また、被告が同時履行の抗弁を行使していない場合

ア 同時履行の抗弁権は、権利抗弁
 したがって、これを判決の基礎とすることは第1テーゼに反する

イ この場合も、本問判決はできない


※権利抗弁とは、権利の発生原因事実が弁論に現れていても、訴訟上その権利行使の主張がなされなければ抗弁として斟酌できないものをいう
例:留置権や、同時履行の抗弁


民訴 一部認容判決など

2009-08-05 22:30:26 | 民事訴訟法
問:建物の一部明渡請求に対して、全部の明渡しを認容する判決できるか

 本問判決は、申立事項(133条2項2号)と判決事項の一致を要求する246条に反しないか

ア 246条の機能は、処分権主義の見地から、原告の意思を尊重し、被告に対する不意打ち防止
 この機能から、246条違反か否かは、判決が、①原告の意思に合致しているか、②被告への不意打ちにならないか、により判断すべき

イ 本問においては、原告意思に合致しているが、被告賃借人に不意打ちとなる。

ウ したがって、246条違反

よって、本問判決はできない




民訴 二重起訴禁止 一部請求中の残債権を自動債権

2009-08-04 22:43:42 | 民事訴訟法
 AがBに有する債権1000万の内、一部であることを明示して500万の支払求めて提訴。継続中にBはAに別債権500万の支払い求めて提訴。AはBに残部をもって相殺する旨を主張した

(1)抗弁は「訴え」ではないから、抗弁後行型に142条の直接適用はできないが、二重起訴禁止の趣旨は妥当
 よって、前訴が全部請求なら相殺の抗弁の主張は許されない

(2)一部請求中の残債権を自動債権とする相殺の抗弁の主張も、142条の類推により許されないか
 前訴での既判力及ぶ範囲が問題

ア 債権の一部であることの明示があれば、既判力もその一部についてのみ及び残部には及ばない
イ 本問では、明示あり。142の類推は許されず、Aの主張は許されるが原則

(3)としても、実質的な争点は共通しており、重複審理・矛盾判断の可能性
 そこで、二重起訴禁止の趣旨にかんがみ、やはり許されないのでは

ア 相殺の抗弁は、防御の手段であり、簡易迅速・確実に決済する機能
 とすれば、1個の債権の残部で相殺を主張することも、正当な防御権の行使
 したがって、債権の分割行使が権利の濫用にあたる特段の事情がなければ、二重起訴禁止の趣旨に反しない
イ 本問では、そのような特段の事情は窺い知れない

よって、許される

民訴 二重起訴禁止

2009-08-04 22:23:18 | 民事訴訟法
問 手形債務不存在確認の訴え継続中、手形金の支払を求める訴えを提起することは、二重起訴禁止に反し不適法となるか
「事件」の同一性あるか
ア 二重起訴禁止の趣旨は、応訴の煩・訴訟不経済・矛盾判決の可能性防止
 この趣旨から、事件の同一性は、①当事者・②審判対象の同一性
イ としても、②審判対象の同一性とはいかなる意味か
 確かに、審判は訴訟物に対してなされる(114条1項)から、訴訟物自体の同一性をいうとも
 しかし、二重起訴禁止の趣旨からその範囲が確定されるべきであって、訴訟物の枠にこだわる必要ない
 そこで、二重起訴禁止の趣旨を全うすべく、訴訟物の内容をなす権利関係が同一であれば足りる
 かように広く解しても、後の訴えは前訴の手続内での反訴提起(146条)によることができるので不都合ない


関連問題
問:相殺の抗弁と給付の訴えは、二重起訴禁止の趣旨に触れるか
「係属する事件」とはいえないから、142条が直接適用されることはなく、類推適用の可否が問題となる

(肯定説を採る)
結論:抗弁先行型、後行型いずれにしても二重起訴禁止の趣旨に触れ、許されない
理由:二重起訴禁止の趣旨被告の応訴の煩は否定しえないし、既判力の矛盾抵触の可能性あり。
 よって二重起訴禁止の趣旨が妥当し、類推の基礎がある

折衷説からの批判:抗弁後行型の場合には、自分から訴えを提起した者に当該訴訟内での決着を強制しても問題ないが、抗弁先行型の場合は、別訴が提起された時点で自動債権については訴訟係属ないし、審判されるかどうか未確定であり、相殺の抗弁を主張したことを理由に、債権の請求を制限するのは酷である

反論:二重起訴禁止の趣旨は、既判力の矛盾抵触の可能性を防止している。そのため、この場合も可能性はあるといえる



民訴 法定代理人と訴訟委任に基く訴訟代理人の差異

2009-08-04 21:38:32 | 民事訴訟法
1 法定代理人とは、代理関係の発生が本人の意思に基かない代理人
 親権者(民法824条)、後見人(民法859条)などの実体法上の法定代理人や、個々の訴訟のために受訴裁判所が選任する訴訟法上の特別代理人(236条)

 訴訟委任に基く訴訟代理人とは、代理関係の発生が本人の意思に基く代理人(訴訟代理人)のうち、特定の事件ごとに本人から訴訟追行の委任を受け、そのための包括的な代理権を授与された者
 弁護士代理の原則が妥当

2 共に、訴訟上の代理人、すなわち当事者に法律効果を帰属させるため、当事者の名において、当事者に代わって、自己の意思決定に基いて訴訟行為をなし、または裁判所や相手方から自己に向けられた訴訟行為を受領する者である点で共通
 しかし、次のような実質的正確の差異
(1)まず、前者の趣旨は本人の訴訟能力を補充する点
 とすれば、法定代理人は本人の身代り的存在
(2)これに対し、後者の趣旨は、本人の訴訟能力の拡大
 とすれば、訴訟委任に基く訴訟代理人は、あくまで第三者的存在

3具体的な差異
(1)訴状・判決書の表示
ア 法定代理人は、その氏名が訴状・判決書の必要的記載事項(133条2項1号、253条1項5号)
イ 訴訟委任に基く訴訟代理人は必要的記載事項ではない

(2)訴訟追行
ア 法定代理人は、本人から干渉を受けることなく一切の訴訟追行ができ、また、相手方や裁判所も法定代理人に対して訴訟行為をしなければならない(102条1項、151条1項1号)
イ これに対して訴訟委任に基く訴訟代理にも、原則として一切の訴訟行為をなしうる(55条1項)

(3)証人適格
ア 法定代理人には証人適格なく、当事者尋問による(211条本文)
イ 訴訟委任に基く訴訟代理人には証人適格あり、承認尋問による

(4)代理権の消滅事由・効果
ア 当事者が死亡すれば、法定代理権は消滅(28条)
 また、代理権が消滅した場合、訴訟手続は中断するのが原則(124条1項3号)
イ 当事者が死亡しても、訴訟委任に基く訴訟代理人の代理権消滅せず(58条1項1号)
 また、代理権が消滅しても、訴訟手続は中断しない