問:自由心証主義とその制限
1 自由心証主義とは、裁判における事実の認定を、審理に現れたすべての資料・状況に基いて裁判官が自由な判断によって形成された心証に委ねる建前をいう(247)
複雑な事情の絡み合う訴訟においては、裁判官の柔軟で自由な判断を可能にする事が真実発見にもつながることから、自由心証主義が採用されている
2 内容は①証拠方法の無制限と口頭弁論の全趣旨のしん酌、②証拠力の自由評価
(1)証拠方法の無制限とは、裁判官が事実認定のためにあらゆる証拠方法を使用することができるということ
よって、民事訴訴訟においては伝聞証拠や違法収集証拠も原則として証拠能力を有する
(2)口頭弁論の全趣旨とは、審理にあらわれたすべての資料・状況をいう。弁論の全趣旨は本来、証拠にもとづいて形成された心証と事実認定の隙間をうめるものとして機能する。しかし、証拠によって心証が得られない場合には、弁論の全趣旨のみから事実認定をなすことも可能であるとされている
(3)証拠力の自由評価とは、当該証拠がどの程度事実認定に役立つかについて裁判官が自由に判断できることをいう
これは、当事者の側から見れば、当事者の一方が提出した証拠は自己に有利なものであっても、相手方の有利にも不利にも採用されうるということである
3 以上のような内容の自由心証主義にも制限がある
すなわち、①証拠方法の無制限の例外、②証拠力の自由評価の例外、③当事者の合意による制限
(1)①証拠方法の無制限の例外
ア まず、手続の画一性、迅速性などの要請から証拠方法が制限される場合がある。すなわち、口頭弁論の方式に関する規定の遵守は調書によってのみ証明することができる(160-3)。また、疎明は即時に取調べる事のできる証拠によってしなければならない(188)。そして、手形訴訟においては、証拠調べは訴訟に限られる(352-1)
イ 次に違法収集証拠も原則として証拠能力を有するが、人格権侵害や反社会的な手段を伴う証拠収集を防ぐ必要
そこで、人格権を侵害するような反社会的手段によって得た違法収集証拠には証拠力が認められないと考える
(2)②証拠力の自由評価の例外
ア 文書の形式的証拠力については推定が及ぶので(228-2.4)この場合は証拠力の自由評価が制限を受ける
イ また、当事者が文書提出命令に従わない場合、証明妨害の際に制限を受ける(224-1.2 229-2)
(3)③当事者の合意による制限
証拠契約など、当事者が特定の証拠を提出し無い事を合意したような場合、かかる合意も有効であると解する。なぜなら、弁論主義のもとでは、証拠の提出は当事者にイニシアティブが認められるからである。
1 自由心証主義とは、裁判における事実の認定を、審理に現れたすべての資料・状況に基いて裁判官が自由な判断によって形成された心証に委ねる建前をいう(247)
複雑な事情の絡み合う訴訟においては、裁判官の柔軟で自由な判断を可能にする事が真実発見にもつながることから、自由心証主義が採用されている
2 内容は①証拠方法の無制限と口頭弁論の全趣旨のしん酌、②証拠力の自由評価
(1)証拠方法の無制限とは、裁判官が事実認定のためにあらゆる証拠方法を使用することができるということ
よって、民事訴訴訟においては伝聞証拠や違法収集証拠も原則として証拠能力を有する
(2)口頭弁論の全趣旨とは、審理にあらわれたすべての資料・状況をいう。弁論の全趣旨は本来、証拠にもとづいて形成された心証と事実認定の隙間をうめるものとして機能する。しかし、証拠によって心証が得られない場合には、弁論の全趣旨のみから事実認定をなすことも可能であるとされている
(3)証拠力の自由評価とは、当該証拠がどの程度事実認定に役立つかについて裁判官が自由に判断できることをいう
これは、当事者の側から見れば、当事者の一方が提出した証拠は自己に有利なものであっても、相手方の有利にも不利にも採用されうるということである
3 以上のような内容の自由心証主義にも制限がある
すなわち、①証拠方法の無制限の例外、②証拠力の自由評価の例外、③当事者の合意による制限
(1)①証拠方法の無制限の例外
ア まず、手続の画一性、迅速性などの要請から証拠方法が制限される場合がある。すなわち、口頭弁論の方式に関する規定の遵守は調書によってのみ証明することができる(160-3)。また、疎明は即時に取調べる事のできる証拠によってしなければならない(188)。そして、手形訴訟においては、証拠調べは訴訟に限られる(352-1)
イ 次に違法収集証拠も原則として証拠能力を有するが、人格権侵害や反社会的な手段を伴う証拠収集を防ぐ必要
そこで、人格権を侵害するような反社会的手段によって得た違法収集証拠には証拠力が認められないと考える
(2)②証拠力の自由評価の例外
ア 文書の形式的証拠力については推定が及ぶので(228-2.4)この場合は証拠力の自由評価が制限を受ける
イ また、当事者が文書提出命令に従わない場合、証明妨害の際に制限を受ける(224-1.2 229-2)
(3)③当事者の合意による制限
証拠契約など、当事者が特定の証拠を提出し無い事を合意したような場合、かかる合意も有効であると解する。なぜなら、弁論主義のもとでは、証拠の提出は当事者にイニシアティブが認められるからである。