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頭の中を整理しながら次へとすすむ

表現力を身につけるため

強盗殺人

2009-08-14 08:05:39 | 刑法
事例:甲と乙はAから麻薬を騙し取ろうと共謀。甲はAから「ちょっと貸してくれ」と麻薬を受け取ると逃亡。逃げ遅れた乙にAは返せと叫んだが、逆に乙はAに発砲し重傷を負わせた

(甲の罪責)
○詐欺罪成否を検討
⇒法禁物は財物か ⇒欺く行為あるか ⇒錯誤・交付あるか ⇒不法原因給付物の場合、財産上の損害あるか ⇒結論

(乙の罪責)
⇒詐欺罪の共謀共同正犯を認定 
○強盗殺人未遂の成否を検討
⇒強盗犯人が故意に人を殺害しようとした場合 ⇒不法原因寄託物の返還を免れる場合「財産上不法の利益」といえるか ⇒「暴行」が被害者の処分行為に向けられたものである必要があるか ⇒本罪の未遂は何が未遂か ⇒罪数処理・結論

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(甲の罪責)
・法禁物が「財物」といえるか
 思うに、法禁物は、その没収に一定の手続を必要とするから、その限りで財物

・不法原因給付物に財産上の損害あるか
 思うに、この場合、犯人が不法原因を作出しており、被害者は欺かれなければ財物を交付していなかった。
 そこで、不法原因給付物の場合でも、民法708条但書を適用して、財産上の損害ありといえる
(民法と刑法の意味をかならずしも同一にしなくても、という見解もあり)

(乙の罪責)
・強盗犯人が故意で殺害しようとした場合、240条後段適用できるか
 思うに、240条の趣旨は、強盗の機会に殺傷を伴うことが多く、これに思い刑罰をもって臨む趣旨
 そうであれば、殺害して財物を奪取するという1つの顕著な刑事学的類型を除外するのは、その趣旨に反する
 よって、240条後段適用あり

・乙の立場からいえば、Aは甲に占有を与えたにすぎず、所有権を与える意思はない。そこで、不法原因寄託物の返還を免れる場合、「財産上不法の利益」を得たといえるか
 思うに、不法原因寄託物は、給付物と異なり、民事上返還請求権が認められる可能性もあるから、この場合も、「財産上不法の利益」を得たといえる

・「暴行」は被害者の処分行為に向けられたものである必要があるか
 思うに、強盗罪の本質は、相手方の犯行を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫を用いる点
 そうだとすれば、強盗罪の場合、相手方の自由な意思決定に基く処分行為は想定できない
 したがって、「暴行」は被害者の処分行為に向けられたものである必要がないと解する
 もっとも、2項強盗における利益の移転を抽象的に考えると、処罰範囲が不当に拡大
 そこで、暴行によって現実に財産上の利益を修得するか、少なくとも利益の取得を現実に可能にするものであることを要すると解する

万引き

2009-08-14 07:15:36 | 刑法
事例
Aは甲スーパーで商品を万引きし、レジを通ることなくレジの外へ。しかし、従業員乙に取り押さえられそうになったところ、Aは商品を店内に置いて乙を振りほどいて逃げた。乙はケガした。
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○Aが甲スーパーに万引き目的で立ち寄った行為について、建造物侵入罪(130条)の成否を検討
⇒客体
⇒行為(一般公衆が自由に立ち入れる、という評価を与える) ⇒包括的同意 ⇒「侵入」の文言解釈 ⇒結論

○レジを通らずレジの外へ商品を持ち出した行為について窃盗罪(235条)の成否を検討
⇒客体(事実上の支配と支配意思)
⇒行為(他人の財物が自己の占有下へ)
⇒問題提起(事案・論点) ⇒窃取とは ⇒規範 ⇒判断要素
⇒あてはめ 
⇒結論

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●窃盗の既遂時期
 思うに「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すこと
 そこで、窃盗罪の既遂時期は、行為者が目的物の占有を取得したときと解する
 具体的には、①財物の性質・形状、②財物に対するそれまでの他人の占有状況、③窃取行為の態様を考慮、して具体的に判断する必要がある

※「窃盗」Aが「逮捕を免れ」る目的で、手を振りほどいて逃走する行為は、相手方の犯行を抑圧する程度の不法な有形力の行使とまではいえないので、事後強盗罪の「暴行」(238条)にあたらない
 もっとも、ケガを負わせているので、「傷害」にあたり、傷害罪が成立

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 事後強盗罪(238条)にはあたらないが、暴行罪(208条)にあたり、結果的加重犯である傷害罪(204条)が成立している。
 この相違は、それぞれの「暴行」の定義が異なることによって生じる。

(暴行の定義)
○最広義の暴行:有形力が不法に行使されるすべての場合(物に対するものも含む)⇒内乱罪(77条)、騒乱罪(106条)

○広義の暴行:人に対する直接・間接の不法な有形力の行使
⇒公務執行妨害罪(95条1項)、加重逃走罪(98条)、逃走援助罪(100条2項)、
強要罪(223条1項)、恐喝罪(249条1項)

○狭義の暴行:人の身体に対する直接の不法な有形力の行使
⇒暴行罪(208条)

○最狭義の暴行:人の犯行を抑圧するに足りる程度ないし、抵抗を著しく困難にする程度の人に対する有形力の行使
⇒強盗罪(236条)、事後強盗罪(238条)、強姦罪(177条)


「有形力の行使」は広義の物理力の行使。太鼓をたたくことで、強力な音波を用いることも含まれる


刑法 幇助の因果関係

2009-08-13 21:57:13 | 刑法
事例
 AはBからC殺害の手伝いを頼まれる。そこで、AはBの部屋に目張りをしたが、当日Bは気が変わり、Cを屋外で殺害した
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(Aの罪責について)
AがBからの依頼を承諾し、目張りをした行為について殺人罪の幇助犯(62条1項、199条)の成否を検討

⇒正犯を幇助すること(主観面の確定)

○問題点の抽出(事案・論点) ⇒共犯の処罰根拠 ⇒処罰根拠からの帰結(因果関係の要否) ⇒現行法の文言に注視 ⇒規範

○あてはめ ⇒規範に対応させる ⇒結論


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○幇助の因果関係の要否・内容
 思うに、共犯の処罰根拠は、正犯の実行行為を通じて間接的に法益侵害・危険を惹起する点に求められると解する(因果的共犯論)
 そうであれば、幇助と正犯の実行行為ないし法益侵害・危険の惹起との間には因果関係が必要と解する
 
 もっとも、現行法が「幇助した」と規定しているに過ぎない点にかんがみ、幇助行為は正犯を援助しその実行行為を容易にすれば足りる
 そこで、幇助の因果関係の内容は、実行行為を物理的・心理的に容易にすることで足りると解する


刑法 不真正不作為犯 

2009-08-13 21:09:58 | 刑法
(事例) 
 Aは運転を誤りBをはね、重傷を負わせた。AはいったんBの様子を見たが、死ぬ事はないと思い、Bを放置。その後通りがかったCはBに気づき、病院へ運ぼうと車に乗せた。しかし、以前からの恋敵であったため、死ねばいいと重いBを山奥に放置。Bは死亡。病院へ運ばれていれば助かった。
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(Aの罪責)
●Bをはね、重傷を負わせ、数時間後に死亡させた行為について業務上過失致死(211条1項)の成否を検討

⇒業務 ⇒行為

○因果関係(問題点の抽出:事案・論点) ⇒相当因果関係説 ⇒基礎事情(折衷的相当因果関係説)

○あてはめ ⇒ 条件関係 ⇒ 基礎事情を明らかに ⇒ 相当性の判断 ⇒ 三段論法の帰結 ⇒ 事案の問題提起に対応させる ⇒ 結論


●次に、Aはいったん自動車から降りてBの様子を見た後、放置しているから、保護責任者遺棄罪(218条)が成立しそう

しかし、Aは要扶助者Bを引き受けるなどその生命を支配できる地位にはないから、甲に保護義務は生じない

したがって、Aは「病者を保護する責任のある者」にあたらない

⇒結論 ⇒結論(Aの罪責)


(Cの罪責について)
●Bを自動車に乗せ、発信させたのに、死ねばいいと思いなおし、路上に放置して、Bを死亡させた行為について殺人罪(199条)の成否を検討

○問題の所在 ⇒論点の問題提起(不真正不作為) ⇒定義から ⇒歯止め ⇒規範

○あてはめ ⇒規範1に対応 ⇒規範2に対応 ⇒規範3に対応 ⇒三段論法の帰結

⇒結果・因果関係の認定

⇒問に答える(Cの罪責)

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○相当因果関係説+折衷的相当因果関係説
(刑法上の因果関係の判断基準は)
 思うに、因果関係の有無は当罰的行為を社会通念に基いて類型化した構成要件該当性の問題
 そこで、条件関係の存在を前提として、その行為から結果の生ずることが、社会通念上相当であると認められることが必要と解する
 そして、構成要件は違法有責類型であるから、相当性の有無は、行為の当時に行為者が認識していた特別事情および一般人が認識し得た一般的事情を基礎として判断すべき


○不真正不作為犯
 思うに、実行行為とは構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為をいうところ、そのような危険性の実現は不作為によっても可能
 もっとも、処罰範囲が不当に拡大しては罪刑法定主義に反する
 そこで、①作為義務の存在、②作為の可能性・容易性、③構成要件的同価値性を要件として不真正不作為犯による実行行為性を肯定できると解する

刑法:中止犯(43条但書)

2009-08-13 08:23:12 | 刑法
中止犯の成否を検討
問:中止犯の法的性質
 思うに、中止犯の必要的減免の根拠は、中止行為に示される行為者の人格態度が責任を減少させるからであると解される(責任減少説)

問:「自己の意思」の判断基準
 そうであれば、「自己の意思」とは、中止行為に向かっての行為者の積極的な人格態度を意味すると解する
 そこで、「自己の意思」は、犯罪の完成を妨げる外部的事情が行為者のやめるという動機に影響を与えたか否かを基準とすべきと解する(主観説)

※着手未遂であれば、ここまで(実行行為の継続を止めていれば中止犯の成立)

問:実行未遂の場合、「中止した」といえるか
 この場合、実行行為が終了しているので、そのまま放置すると結果発生の危険性が高い
 そこで、この場合、結果の発生を防止するための積極的作用が必要

 さらに、中止行為には結果発生防止のための真摯な努力を要するかについては争いがある
 思うに、前述の責任減少説からは、刑の必要的減免にふさわしい真摯な態度が要求される
 そこで、中止行為には結果発生防止のための真摯な努力を要すると解する(判例に同旨)


問:中止行為と結果の不発生に因果関係が必要か(第三者の行為によって助かった場合)
 思うに、前述の責任減少説からは、前述した結果発生防止のための真摯な努力があった以上、刑の必要的減免を認めるべきである
 そこで、中止行為と結果の不発生の間に因果関係は不要と解する