事例:甲と乙はAから麻薬を騙し取ろうと共謀。甲はAから「ちょっと貸してくれ」と麻薬を受け取ると逃亡。逃げ遅れた乙にAは返せと叫んだが、逆に乙はAに発砲し重傷を負わせた
(甲の罪責)
○詐欺罪成否を検討
⇒法禁物は財物か ⇒欺く行為あるか ⇒錯誤・交付あるか ⇒不法原因給付物の場合、財産上の損害あるか ⇒結論
(乙の罪責)
⇒詐欺罪の共謀共同正犯を認定
○強盗殺人未遂の成否を検討
⇒強盗犯人が故意に人を殺害しようとした場合 ⇒不法原因寄託物の返還を免れる場合「財産上不法の利益」といえるか ⇒「暴行」が被害者の処分行為に向けられたものである必要があるか ⇒本罪の未遂は何が未遂か ⇒罪数処理・結論
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(甲の罪責)
・法禁物が「財物」といえるか
思うに、法禁物は、その没収に一定の手続を必要とするから、その限りで財物
・不法原因給付物に財産上の損害あるか
思うに、この場合、犯人が不法原因を作出しており、被害者は欺かれなければ財物を交付していなかった。
そこで、不法原因給付物の場合でも、民法708条但書を適用して、財産上の損害ありといえる
(民法と刑法の意味をかならずしも同一にしなくても、という見解もあり)
(乙の罪責)
・強盗犯人が故意で殺害しようとした場合、240条後段適用できるか
思うに、240条の趣旨は、強盗の機会に殺傷を伴うことが多く、これに思い刑罰をもって臨む趣旨
そうであれば、殺害して財物を奪取するという1つの顕著な刑事学的類型を除外するのは、その趣旨に反する
よって、240条後段適用あり
・乙の立場からいえば、Aは甲に占有を与えたにすぎず、所有権を与える意思はない。そこで、不法原因寄託物の返還を免れる場合、「財産上不法の利益」を得たといえるか
思うに、不法原因寄託物は、給付物と異なり、民事上返還請求権が認められる可能性もあるから、この場合も、「財産上不法の利益」を得たといえる
・「暴行」は被害者の処分行為に向けられたものである必要があるか
思うに、強盗罪の本質は、相手方の犯行を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫を用いる点
そうだとすれば、強盗罪の場合、相手方の自由な意思決定に基く処分行為は想定できない
したがって、「暴行」は被害者の処分行為に向けられたものである必要がないと解する
もっとも、2項強盗における利益の移転を抽象的に考えると、処罰範囲が不当に拡大
そこで、暴行によって現実に財産上の利益を修得するか、少なくとも利益の取得を現実に可能にするものであることを要すると解する
(甲の罪責)
○詐欺罪成否を検討
⇒法禁物は財物か ⇒欺く行為あるか ⇒錯誤・交付あるか ⇒不法原因給付物の場合、財産上の損害あるか ⇒結論
(乙の罪責)
⇒詐欺罪の共謀共同正犯を認定
○強盗殺人未遂の成否を検討
⇒強盗犯人が故意に人を殺害しようとした場合 ⇒不法原因寄託物の返還を免れる場合「財産上不法の利益」といえるか ⇒「暴行」が被害者の処分行為に向けられたものである必要があるか ⇒本罪の未遂は何が未遂か ⇒罪数処理・結論
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(甲の罪責)
・法禁物が「財物」といえるか
思うに、法禁物は、その没収に一定の手続を必要とするから、その限りで財物
・不法原因給付物に財産上の損害あるか
思うに、この場合、犯人が不法原因を作出しており、被害者は欺かれなければ財物を交付していなかった。
そこで、不法原因給付物の場合でも、民法708条但書を適用して、財産上の損害ありといえる
(民法と刑法の意味をかならずしも同一にしなくても、という見解もあり)
(乙の罪責)
・強盗犯人が故意で殺害しようとした場合、240条後段適用できるか
思うに、240条の趣旨は、強盗の機会に殺傷を伴うことが多く、これに思い刑罰をもって臨む趣旨
そうであれば、殺害して財物を奪取するという1つの顕著な刑事学的類型を除外するのは、その趣旨に反する
よって、240条後段適用あり
・乙の立場からいえば、Aは甲に占有を与えたにすぎず、所有権を与える意思はない。そこで、不法原因寄託物の返還を免れる場合、「財産上不法の利益」を得たといえるか
思うに、不法原因寄託物は、給付物と異なり、民事上返還請求権が認められる可能性もあるから、この場合も、「財産上不法の利益」を得たといえる
・「暴行」は被害者の処分行為に向けられたものである必要があるか
思うに、強盗罪の本質は、相手方の犯行を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫を用いる点
そうだとすれば、強盗罪の場合、相手方の自由な意思決定に基く処分行為は想定できない
したがって、「暴行」は被害者の処分行為に向けられたものである必要がないと解する
もっとも、2項強盗における利益の移転を抽象的に考えると、処罰範囲が不当に拡大
そこで、暴行によって現実に財産上の利益を修得するか、少なくとも利益の取得を現実に可能にするものであることを要すると解する