雪見の窓から

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韓国エンタメ情報『純情物語 一番大切なこと、気づきました』

2007-07-05 04:33:03 | おすすめ韓国エンタメ

今回は、韓国発のネットマンガ『純情物語』をご紹介します。
韓国のポータルサイトで連載されたこの作品は、1日最高200万アクセスを記録、読者選定「読者漫画大賞2004」を受賞した爆発的大ヒット作です。
いわゆる「コマ割り」が存在しない斬新な作風は、絵本でもなく紙芝居でもなく、まさに、大人のための「読んで味わう絵物語」。
昨秋舞台化され、すでに映画化も決定している国民的人気マンガなのです。

毎日同時刻にマンションのエレベーターに乗り合わせる平凡な独身サラリーマンのヨンウと女子高生スヨン。
二人はお互いに惹かれあいながら、不器用さゆえに伝えることができない。
そんな二人の距離は、ネクタイのプレゼントをきっかけに、少しずつ近づいていく。
一方、受験を控えた男子高校生スツは年上の女性ハギョンにひたむきな想いを寄せるが、ハギョンはそれを嬉しく感じながらもなぜか頑なに拒み続ける。
年の差に悩み、過去の傷や悩みを抱える二組のカップルの恋模様が交錯し、それぞれの想いが深まっていく。やがてスヨンは、人を愛する喜びの向こうに、家族や友人の大切さを初めて知る。 彼らの閉ざされた心の扉が、春の訪れと共に、少しずつ開いていく・・・。

本作では、「誰かを純粋に、愛しく思う気持」が、淡く切なく、時にほろ苦く綴られます。
血わき肉躍るスペクタクルな展開はなし。絵柄の素朴さ、ややベタな設定、韓国漫画へのなじみのなさなどから、最初は「楽しめるかな?」と、不安に思う向きもあるかもしれません。けれど、日常的エピソードを通して、詩情豊かなドラマ世界を読み進めるうち、いつしか愛すべき人物たちの気持に共鳴し、ストーリーに引き込まれている自分に気づくはずです。

おやっ・・・この感覚、どこかで身に覚えがありませんか? 
そう、何のことはない、韓国ドラマを見始めた頃に覚えた感慨とよく似ています。
作品に触れる前の「どうかな?」が、「面白い!」に変わる瞬間の、あの興奮。
韓国エンタメファンのあなたなら、もう、ご存知ですね。

作品そのものが優れた娯楽であることは言うまでもなく、また韓国エンタメファンとしては、違う角度から(マニアックに)楽しめる作品でもあります。
例えば、女子高生スヨンが自宅で見ているテレビドラマ。
ある場面の台詞に、「ううむ、これってもしや、秋の童話・・・」と反応できたら、あなたは、間違いなく韓ドラ通!
そのほか韓ドラでもおなじみの「縁」「初雪」「家族」といったモチーフがキーワードとして登場するのも嬉しいところ。

物語全体にたゆたう優しさ。シンプルな感情表現。珠玉の名台詞の数々。随所に光る温かいユーモアと懐かしさ。
韓国エンタメの真髄が、ここにもしっかり息づいているのです。

当初、読者層を若い女性に想定していた日本での出版元は、翻訳者に現役女子高生を起用。しかしふたを開けてみれば、「感動した!」と最も熱い声を寄せてきたのは、50代のおじ様世代だったとか。

作者カン・プルは、作品の映画化が続々と計画中の人気漫画家です。
キム・ジョンクォン監督、チャ・テヒョン主演『バカ』は、練炭の一酸化炭素中毒で知的障害を負った青年の物語です(公開日未定)。
作者は『純情物語』を〝枠のないマンガ〟にした理由を、「オンラインの長所をいかすため」と語っています(あとがきより)。
確かに、複雑なコマ割りを排した自由度の高い紙面には、未体験の面白さがあり、新しい表現の可能性を実感できます。

ぜひぜひ、全4巻一気に読破されることをお勧めいたします(余白が多いので、1~2時間で読了できます)。
人を好きになった時のもどかしさ、やるせなさ、そして素晴らしさ。
読み終えたとき、きっと誰かに薦めたくなる、そんな一冊です。

【書籍基本データ】
書名:純情物語  一番大切なこと、気づきました  (全4巻)
原題:純情漫画
著者:カン・プル
翻訳:安倍慶子
出版社:双葉社
2005年4月出版
定価 各900円(税込)
アマゾンで『純情物語』を見る こちら

【著者 カン・プルのプロフィール】
1974年、ソウル市生まれ。韓国で最も人気のある漫画家として高い評価を得る。
各種の新聞に風刺のきいた時事漫画を連載。
平凡な生活に潜む人情と笑いを、独特の表現方法で描く。
HP  http://www.kangfull.com/ 

*この記事は、まぐまぐ発行のメールマガジン「韓国エンタメ!KoreaKorea」で発表した内容を再編集して掲載しています。

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