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韓国エンタメ情報『親切なクムジャさん』

2007-07-13 04:12:38 | おすすめ韓国エンタメ

ドラマ『宮廷女官 チャングムの誓い』で、アジア中を席巻したイ・ヨンエ。
透明感あふれる美貌と知的なイメージで「酸素のような女性」といわれ、日本では「韓国の吉永小百合」とも称される彼女が、復讐に燃える哀しい女性を体当たりで熱演したのが、『親切なクムジャさん』です。

監督は、イ・ヨンエが演技派転身に成功した『JSA』で、一躍その名を世界にとどろかせた奇才・パク・チャヌク。
『復讐者に憐れみを』、『オールド・ボーイ』に続く〝復讐三部作〟完結編となる本作は、時にファンタジックで時にユーモラス、衝撃の復讐譚です。

[ストーリー]
物語は、クムジャ(イ・ヨンエ)が刑務所から出所する場面で始まる。

彼女は20歳の時、ある男の罪を被って幼児誘拐殺人の罪で投獄され、13年もの間無実の罪で捕らわれていた。刑務所では、その天使のような微笑と優しさで〝親切なクムジャさん〟と女囚たちから慕われる模範囚だった。刑期を終え、出所したクムジャは態度を一変。赤いアイシャドーをほどこし、獄中で培った人脈を駆使し、先に出所した女囚仲間達の協力の下、自分を陥れた男・ペク(チェ・ミンシク)への復讐計画を着々と実行にうつす。

同時にクムジャは、ペクが里子に出した愛娘の行方を捜し始める。復讐者としての冷酷な姿と、母親としての切ない心情に揺れるクムジャの行き着く果ては・・・。

[みどころ]

その1  聖女か魔女か? 国民的スターが見せた女優魂 

本作についてイ・ヨンエは、「チャングムファンがこの映画を観ると失望するかもしれない。チャングムで多くの人に愛されたが、女優としての渇きは満たされなかった。あまりにも定着しすぎたチャングムのイメージを払拭し、役者として幅を広げるために挑戦した」と語っています。
今回、「緻密に復讐を計画するクムジャの心情を理解できた」と話すように、残忍な復讐計画を冷徹に遂行する姿は、これまでの清純可憐なイメージを大きく覆しました。
持ち前の芯の強さや気高さを残しつつ、少女、天使、母親、悪魔、そしてクライマックスの般若と、多面的な女性像を渾身の演技で作り上げたイ・ヨンエは、この役で各映画祭の主演女優賞を受賞(第42回百想芸術大賞、第26回青龍映画賞、2005年スペイン・シチェス国際映画祭)。名実ともに国民的女優の称号を手にしました。

その2  パク監督、復讐への執念

前二作では、普通の人々が不条理な目に遭い、復讐せざるをえない状況に追い込まれるさまを描いていたのに対し、今回は復讐そのものが物語の軸であり、主人公の目的となっています。
また、初めて「贖罪」「魂の救済」というテーマを扱うことで、改めて「復讐」のもつ意味を考えさせてくれます。
「アルカイダのテロのイメージ」という不気味な集団処刑の風景は、最も悲惨でありながら最も笑いを誘うシーンでもあるというのも、パク監督ならでは。また、虐待シーンや、鮮血の海、過激な暴力描写などは、観客をやるせない気持にさせるものの、だからこそ宿願を果たしたクムジャの達成と虚無の入り混じった表情や、ラストで表現される未来への希望を際立たせています。
「現代社会で禁じられているからこそ、復讐というモチーフに魅せられる」と語る監督自身は、普段他人に対して怒りを露わにせず、夜寝る前に「あいつにどう復讐しようか」と想像を膨らませるとか(こわ~)。
「この映画のもう一人の主人公は監督です」と、イ・ヨンエにいわしめたパク監督。いろいろな意味で目が離せません。

その3   視聴覚に訴える仕掛け

浮世離れしたアイメイク、季節はずれのファッション、大きなサングラス。いずれも、クムジャさんと俗世との哀しい隔絶を描き出す小道具です。陰惨な主題をやわらげる色彩豊かな美術や衣装も、要注目。ちなみに撮影は真冬の凍える寒さの中で行われたため、イ・ヨンエがスタッフ全員に総額3000万ウォン相当の防寒パーカーを差し入れ、親切なヨンエさん!と話題になりました。
出所時に、出迎えた牧師が差し出す清めの豆腐を「ノナチャラセヨ」(余計なお世話です)と、拒んだクムジャが、降りしきる雪の中のラストシーンに口にする、ある食べ物には、この映画のテーマが込められています。

この場面で歌われていたのが『赤い靴のお嬢さん』。一昔前の歌謡曲で、韓国の人々にとってはたまらなく懐かしい、クムジャの来し方行く末を表現するにピッタリな選曲です。

マニアチェック! その1
ノークレジットですが、前二作で登場したパク・ファミリーの俳優たちが、思わぬ場面でカメオ出演しています。

ヒントは、カン・ヘジ○ン、ユ・ジ○、○ン・ガンホ、シン・○ギュン、ユン・ジン○・・・あなたは何人見つけられましたか?

マニアチェック! その2 
ペク先生役のチェ・ミンシク、なんと撮影時は、『クライング・フィスト』のボクサー役で負った肋骨骨折をおしての出演だったとか…。悪辣非道なペクですが、周囲の反対を押し切って演じたと思えば、同情心も湧く!?

作品基本データ
【韓国でのタイトル】 親切なクムジャさん
【監督】 パク・チャヌク 『JSA』『オールド・ボーイ』
【脚本】 チョン・ソギョン、パク・チャヌク
【出演】  イ・ヨンエ、チェ・ミンシク、クォン・イェヨン、ナム・イル、キム・シフ 
【上映時間】 115分
【公開日】 韓国: 2005年7月 日本:2005年11月12日
【配給】 東芝エンタテインメント
*2005年ヴェネチア国際映画祭 正式出品作品

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(MY)

*この記事は、まぐまぐ発行のメールマガジン「韓国エンタメ!KoreaKorea」で発表した内容を再編集して掲載しています。

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