雪見の窓から

観たり聴いたりときどきおしごと

最近観た映画 

2023-01-28 13:47:40 | 映画

『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』
勉強会の課題作で観る。
一言、やばくて凄い映画。
抑圧された日常に、ひたひたと迫る破綻。
丁寧な暮らし礼賛と対極のルーティンの描き方、25歳でこの極限を描く監督の透徹さに慄いた。

反復とズレ。
ジャンヌの青いコートが、彼女の冴え冴えとした哀しみを映すよう。



閉塞の果ての虚無の表情に、イザベル・ユペール主演の『ピアニスト』を思い出したが、ああいった極端さや異常性はない。

ひたすらの平凡と普遍が積み重ねられる。
その向こうには、時代や環境を問わない女性の生きづらさが見え隠れする。

誰もが一線を越える危うさを孕んでいることを訴えている。




じゃがいも剥いてるだけでもうスリリング……。



映画『とら男』を観る

2022-10-30 19:59:00 | 映画

映画『とら男』予告編



1992年に起きた「金沢女性スイミングコーチ殺人事件」を題材に、当時担当した元刑事(西村虎男)本人が主演を務めた異色作。

SNSや新聞で取り上げられているのを読んで気になっていました。

本編は、フィクションとドキュメンタリーが入り混じり、どこまでが事実でどこからが虚構なのか、一見しただけでは分かりづらい構造。


事件から30年が過ぎ、人びとの記憶から忘れられていく一方、2007年に時効を迎えてもなお、解決に執念を燃やした「とら男」。

孤独なとら男の鋭い眼光に導かれ、事件の全容が次第に見えてくる。

今ももしかしたら、すぐ隣に真犯人がいるかもしれないという恐怖。

韓国映画『殺人の追憶』を見た後、雨の木曜の夜には絶対に出歩きたくない、と思ったあの戦慄が蘇る。

とら男は粘り強く本件の真相に迫りながらも、異動で現場を外された。それも2度。

なぜ、目星がついていながら犯人を検挙できなかったのか。

その顛末を、本作品の基になった西村虎男氏の著作「千穂ちゃんごめん!」で読んだが、良くここまで書いてくれたという思いと、いやあ…….国家権力やば過ぎるやろ、と今更ながら慄然。



被害者が同年代であること、同郷の監督がメガホンをとったことなど、恥ずかしながら映画を観るまで知らなかった。
何も知らなかったし、何もできなかった。

今なら解決できていた可能性が高いだけに、やるせない。

映画のロケ地近くを通りかかるたび、複雑な思いにかられてしまう。

見た(特に同郷の)人といろいろ話したくなった。


映画『とら男』公式サイト
映画『とら男』公式サイト

映画『とら男』公式サイト

「犯人はまだ生きているーー」前代未聞! 映画史上初! 元刑事が映画主演!! 出演:西村虎男、加藤才紀子監督・脚本:村山和也