南埼玉病院 リハビリテーション部のブログ

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グループホームは大丈夫か。

2022-07-25 16:56:11 | 日記

みなさん、こんにちは。

 

史上稀にみる短い梅雨だった今年。

とはいえ、まだまだジメジメ不快な日が続く日々、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

 

7.8月はグループホームエクボよりお届けします。

 

さて今回は、「障害者グループホーム(以下、GH)」についてのある裁判の話題についてお話させていただきます。

今回の記事は、かなり長くて完読するのに時間がかかります。

私なりに当事者の一人として、色々考えながら書かせてもらいました。

「長いな~。」と思いつつも、ココロ折れずに読んでくれたら幸いです。(途中でココロ折れても大丈夫です!)

 

先月、ネットニュースなどにも記事が出ていたので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、大阪で障害者GHにまつわる裁判が行われています。

 

裁判の概要を簡単に説明すると、「大阪府内のある社会福祉法人が十数年前から分譲マンション2部屋(定員6人)でGHを運営していたところ、2016年に地元の消防署からの指摘を受け、初めてその事実を知ったマンション管理組合が「住宅以外での用途を禁止する管理規約に違反する」として、利用停止(退去)を求め2018年に提訴した」というものです。

 

提訴に至るまでに、話し合いが行われていたようですが、折り合わず、結局裁判で争うようになってしまっとの報道もされています。

 

今年1月、すでに判決が出ており、結果は「GH側にマンション使用を禁止する」というグループホーム側の敗訴でした。

異例とも言われているこの裁判の判決では、「グループホーム利用者の生活の本拠」であることは認めつつ、マンション管理規約が想定する「住居」には当たらないこと。そして、現時点では免除されているが、将来的に(GHが増えた場合など)防火設備の追加設置義務が生じる恐れがあり、グループホームの運営継続は「(マンション区分所有者の)共同の利益に反する」とのことでした。

 

GH側はすぐに控訴し、現在も係争中のようで、仮に判決が覆らなかった場合、今住んでいるGHの利用者は長年住み慣れた「家」を退去しなくてはならなくなります。

 

何故こんなことになってしまったのでしょうか。

考えなければいけない点は色々とあり、決して簡単な問題ではありませんが、今回の事を理解するために、3つのポイントに絞って考えてみました。

 

1つ目 「消防法」の壁

 

判決の中でも触れられている防火設備等の問題。

GHは「施設ではなく住居」と言われながら、一般的な住宅より厳しい「消防法」上の規制の対象となります。

「面積」や「入居者の支援区分」によっても異なり、「自力で避難できるかどうか」というのが大きなポイントですが、スプリンクラーなどの大掛かりな防火設備が必要となります。逆に自力避難が可能である場合などは、これが免除されるケースがあります。既存の集合住宅を利用する際に、貸主に後付けでそんな大掛かりな設備を付けることの許可をお願いすれば、間違えなく断られるでしょう。

一般的な住宅には厳しい規制等はなく、GHは「施設」のような定義付けとなっており、矛盾を抱えているように感じます。

入居者の安全を守る義務は当然ですが、こういった規制が、事業者の頭を悩ませる要素になっているのも事実です。

報道によれば、この訴訟を起こされたGHは、現時点では前述した防火設備の設置義務は免除されており、違法性もないようです。

起こるかもわからない「将来的なリスク」を理由に、違法でもないGHを退去させてしまうといことをどう捉えれば良いのでしょうか。

 

2つ目  グループホームの特殊性

 

GHは大前提として「暮らしの場の提供」をするサービスです。

「生活の場」であるが故、友好的かどうかはさておき、地域とのつながりがとても深いという特性があります。それは、残念ながら良い面だけでなく、今回のようなことが起こったり、設立反対運動が起こったりするというネガティブな面も少なくありません。

地域との関係性を、より重要視される事業であり、同時にその難しさを感じます。

今回、事業者側が、マンション側とどうコミュニケーションを取り、理解を求めていたのかというのは気になるポイントです。

既存アパートやマンションを使用してGHを運営することは、「ノーマライゼーション」の理念に十分見合うものと感じますが、まだまだ色々な部分で不安定さを抱えた事業なのだと改めて思わされます。

様々な不安定さを解消していくには、今回のようなことが起こった際に、事業者だけが問題に向き合うのではなく、指定権者である自治体等が協力して解決に向け協働していく必要があるのではないかと思います。

 

3つ目  差別や偏見の問題

 

「マンションの管理規約上、GHは管理規約が想定する「住居」には当たらない」とした判決ですが、前述した通り、消防法上の規制を受ける等のことを考えれば、確かに真に「住居」とは言えないのかもしれません。

しかし、今回の件で言えば、GHの存在に気付くまでの間かなり長い期間がありました。報道されている限りでは、それまでトラブルなどはなかったそうです。気付いてから退去を求める過程の中に、差別意識や偏見といったものがなかったのでしょうか。

2013年には「障害者差別解消法」も制定されており、「合理的配慮」が求められる中、マンションの管理組合の対応は適切だったのでしょうか。

そこに引っ掛かりを覚えてしまうのは私だけではないはずです。控訴しているGH側もこの部分について強く訴えているようです。

 

以上 3つポイントをお話しましたが、こうした問題は今に始まったわけではなく、以前から潜在的には起こっていた問題です。この裁判も控訴審中で、どんな結果になるかはわかりません。決して簡単な問題ではなく、誰かを一方的に攻めるべき問題でもないのかもしれません。

考えれば考えるほど複雑な気持ちになりますが、入居者にとってつらい結果にならないことだけを願っています。

 

長かったですね。

拙い文章を最後まで読んで頂きありがとうございました。


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