昨日の日曜劇場「半沢直樹」第9話も出演者の方々の素晴らしい演技に引き込まれるようにして楽しませて頂きました。
配役の妙、個性的な演技、それらを巧みに操ったディレクション、の、見事なエンターテイメント作品であり、作品価値(福澤克維監督の見事な演出価値も含む)とあわせてワクワクドキドキのドラマ展開の体験価値を堪能させて頂きました。
番組自体が放つ多大な熱量を体感したせいでしょうか、「半沢直樹」を視聴しながら折に触れ心に響く言葉があり、今回のコロワイド社による大戸屋のTOBのことが走馬灯のように浮かんでまいりました。
なぜ大戸屋が今回のTOBのようなことになってしまったか?
一言で極論すると、大戸屋HDの窪田社長や現経営陣に創業者の故三森久美氏に対する「深い感謝と恩返し」がなかったからだろうと思いました。
「半沢直樹」で「大事なのは感謝と恩返しです!」と何度も繰り返されていましたが、まさにその点が窪田社長等に足りなかった、あるいは、窪田社長がないがしろにしてきた点ではなかったかと推察されます。
その結果、三森久美氏が創り上げてきた善循環の流れが徐々に枯渇、立ち消えになってしまい、巡り巡って、三森氏が亡くなられて以降、徐々に業績悪化を続けて赤字に転落、今回のTOBにつながっていったのではないかと考えられます。
窪田社長等にこの感謝と恩返しの気持ちさえあれば、随分様相が変わったのではないかと思われます。
企業の成長や永続的発展にとって、その根幹において、今回のTOBは、まさに「大事なのは感謝と恩返しです!」ということの重要性の一つの証左ではないかとも存じました。
これらの点をいくつかの観点から分析した印象等も含め備忘録として書き残しておきたいと思います。
1.「たらいの水の原理」(例話)の点からの分析
この「たらいの水」の教訓は筆者も盟友の三森久美氏も若いころにモスバーガー創業者の櫻田慧会長(当時)に何度も教えて頂き、大いに薫陶を受けました。
「たらいの水の原理」は、5年、10年、20年という長期のスパンで見ると必ずと言っていいほど妥当するというのが櫻田慧会長の教えの一つでもありました。そして、「たらいの水の原理」は三森さんと筆者の二人の経営に対する重要な姿勢の一つとなりました。
「たらいの水の原理」として櫻田氏がいわれていたのは次のような趣旨です。
「水を張ったたらいで、両手でその水を自分の方にかき寄せようとすると、かえって反対側の方に逃げて行ってしまう。
他方、人のためにと自分とは反対側に水を両手で押しやると、逆に自分の方に返ってくる。私利私欲の欲心を起こして利己的なことを行うとこのたらいの水のようになってしまう。金銭も人の幸福も企業の発展もまた同じことである。
私利私欲や利己的な欲心をなくし、利他の精神で世のため人のためお客様のために尽くすことで廻りまわって自分に返ってくるのである。」
これが櫻田氏が大切にしている考え方であり、モスバーガーの心だったわけです。ギブアンドギブの精神、感謝、利他の心を櫻田氏は大変重要と考えられていました。
そして、「一人でも多くの人を幸せにするのが経営者の使命である」という言葉を胸に刻み、筆者と三森氏は切磋琢磨、研鑽し続けました。
三森久美氏が亡くなって以降TOBが成立するまでの約5年間の窪田社長の言動や経緯を見ると、(たらいに水を張った)三森氏への心からの感謝と恩返しはあまり感じられず、その結果として、”(三森氏が)水を張ったたらいで、両手でその水を自分の方に目いっぱいかき寄せようして逆に水が逃げて行ってしまった”ような窪田社長への印象です。まさに「たらいの水の原理」が約5年たって窪田社長に妥当したといえるのではないでしょうか。
ちなみに、「たらいの水の原理」(例話)は二宮尊徳(金次郎)の言葉と伝えられていますが、筆者はまだその出所を確認できてはいません。「二宮翁夜話」に「たらいの水の原理」と類似の「湯船の教訓」という例話がありますが、わかりやすく伝えることを旨とされていた二宮尊徳翁がどこかで語られていたお話なのかもしれません。
二宮尊徳翁は「至誠・勤労・分度・推譲の実践」と「仁恕」を特に大切にされた幕末の偉大な人物ですが、現代のわれわれも間違いなく範としたい人物の一人といえるでしょう。
「たらいの水の原理」も「湯船の教訓」も二宮尊徳翁の「推譲」の例話で、「これを悟れば奪って益無く、譲って損無し」「それ譲って損なく、奪って益なき根元を案ずるに、見れども見え難し」とも述べられています。
「たらいの水の原理」は「見れども見え難し」という点があるので、私利私欲の欲心ですべてを奪おう、自分のものにしてしまおう、自分だけが得をしようと人は思ってしまうのかもしれません。それを二宮尊徳翁は様々な例話で戒めようとされていたのだろうと思います。
二宮尊徳翁の教えは稲盛京セラ名誉会長も勉強会等でよくお話をされていましたが、二宮翁の「推譲」と稲盛名誉会長の「利他の心」とは軌を一にするといえるでしょう。
易経に「積善の家に余慶あり、積不善の家に余殃(よおう)あり」という言葉があり、古来より「善因を積んだ家には必ず善果があり、悪因を積んだ家には必ず悪果がある」という「善因善果、悪因悪果」の「因果応報の原理」が働いて”幸不幸のめぐり合わせ”があるとされていますので、きれいな善なる心で善行、利他の善き行いを積み重ねて行きたいものです。そして、きれいな水の流れのごとき善循環の流れをつくり上げて、企業を発展させるとともに社会の発展の一助になりたいものです。
2.稲盛和夫京セラ名誉会長の「六つの精進」からの分析
稲盛名誉会長には企業が永続的に発展するために重要な経営者のための「六つの精進」という教えがあり、筆者自身もとても大切に考えています。内輪の勉強会を始めるときにはいつもみんなで唱和していました。
稲盛名誉会長の「六つの精進」は以前のブログでも書きましたが、次の6つです。
①誰にも負けない努力をする
②謙虚にして驕らず
③反省のある毎日を送る
④生きていることに感謝する
⑤善行、利他行を積む
⑥感性的な悩みをしない
この6つの完璧な実践を目指したいところですが、完璧を常に実践・継続するのは難しい点もあるかもしれませんが、あすなろの木の如く、日々前向きに完璧を目指して精進し続けることが極めて重要です。
さて、大戸屋HDの現経営陣の代表である窪田社長はこの「六つの精進」に照らしてどうだったでしょうか?
何が不足、不十分だったから業績が悪化し、大幅な赤字転落につながってしまったのでしょうか?
筆者の学生時代から数えると40年以上にわたって大戸屋を見てきましたが、窪田社長に関しては、「六つの精進」の①~⑤が不十分、足りなかったのではないかという印象です。
①の(「一人でも多くの人を幸せにするという経営者の使命」の実現のために)「誰にも負けない努力」をされていれば、新型コロナウイルス問題の影響のない前期の中間決算でも営業赤字を計上することはなかったでしょう。経営はリーダー次第ですが、窪田社長はどこまで真剣に、真剣の上にも真剣に誰にも負けない努力をされたのでしょうか?
また、先手先手に時代の変化や環境変化を読んで柔軟・スピーディに適応するとともに三森久美氏の信念、経営信条である松下幸之助翁の「ダム式経営」を実践されていれば、新型コロナウイルス問題でも今期のような大きな業績悪化をもたらすこともなかったでしょう。その意味でも、窪田氏は三森久美氏の経営のDNAを正しく継承しているとはいえないでしょう。
窪田社長は大戸屋HDのトップとして自らの経営力のなさやリーダーとしての不十分な姿勢を猛省し、最新の株主の皆様のご判断、今回のTOB成立の結果を言葉だけでなく真に真摯に受け止めて、自ら潔く業績悪化の経営責任をとって辞任されるべきではなかったでしょうか。
朝日新聞デジタルの記事の中で「企業価値の向上や株主価値の向上に資することについては、我々としてできることは、すべてやってきた」と窪田社長は述べられていますが、本当にそうでしょうか? まだまだ沢山やるべきことがあったのではないでしょうか。
(出所:https://digital.asahi.com/articles/ASN9K4RHVN9KULFA00R.html?pn=8)
①~⑤、それぞれに様々な指摘事項はありますが、なかでも一番は④で述べている「感謝」という点でしょう。
窪田社長が大戸屋に入社した経緯や窪田氏を社長にした経緯等も三森氏から聞いていましたが、それからすると創業者の三森久美氏は窪田社長の大恩人であるはずです。
にもかかわらず、窪田社長の三森氏やそのご家族への対応は三森氏が亡くなられて以降どうだったのでしょうか?
感謝がないと強く非難されても仕方がない一面もあったのではないでしょうか。
窪田社長に三森久美氏への深い感謝と恩返しの心さえあれば今回のTOBのようなことも起こらなかったのではないでしょうか。
「半沢直樹」で「施されたら施し返す、恩返しです!」と大和田取締役(香川照之氏)が述べた名セリフがありますが、窪田社長はこの点についてどのようにされてきたのでしょうか?
筆者は今シリーズ前半の「半沢直樹」で半沢直樹が述べた「森山、忘れるな。大事なのは感謝と恩返しだ。その2つを忘れた未来は、ただの独りよがりの絵空事だ。これまでの出会いと出来事に感謝をし、その恩返しのつもりで仕事をする。そうすれば、必ず明るい未来が拓けるはずだ」というセリフが心に残りましたが、ここ数年の大戸屋HDの現経営陣の感謝と恩返しはどうだったでしょうか?
「人にかけた情は水に流せ、人から受けた恩は石に刻め」という言葉が三森久美氏の信条の一つでしたが、窪田氏は果たしてどうだったでしょうか?
「心を高める 経営を伸ばす」という稲盛名誉会長の教えがありますが、窪田社長はどうだったのでしょうか?
心を高める日々だったかどうか、その点も疑問です。
その結果、今期の8月までの数字を見ると、看過できないほどの大幅な業績悪化となっていると言わざるをえないのではないでしょうか。
3.コロワイド社による大戸屋TOBについての分析
もしコロワイド社によるTOB成立がなければ、大戸屋はどうなったでしょうか?
大戸屋の業績悪化が進み、看過できないほどの悪い状況になっていた中でTOBが成立したわけですが、それによって迫りくる大戸屋の経営危機が救済されたと考えられる一面もあるのではないでしょうか。
一方、窪田社長等への心ある(少数)株主による適切なガバナンスがきかず、経営が破綻の危機に向かって進んでしまっていた一面もあったのではないでしょうか。
今年の5月25日の大戸屋HDの株主提案反対表明のニュースリリースで「本株主提案は、コロワイドが、当社株式 19.1%を保有するにすぎないにもかかわらず」と大株主であるコロワイド社を軽視するような表現をされていることからもそれが窺えるのではないでしょうか。これは少数株主軽視はもちろん大株主軽視の兆候、健全なガバナンス軽視の一つの証左、証拠ともいえるのではないでしょうか。
さて、のれんの問題等も含めたコロワイド社の今回のTOBの中長期の総合的な収支決算はまだわかりませんが、大戸屋TOBに関しては、現金、キャッシュフロー的には90億円ほどの支出がありましたが、ここ10日ほどでみれば、時価総額的には約300億円の増額をもたらしました。
具体的には、以下のような収支の状況かと存じます。
コロワイド社の9月18日の株価は 2,080円 で時価総額:1,566億円。
9月8日TOB成立の日の株価は1,711円で時価総額:1,288億円
2,080円-1,711円=369円upで、時価総額278億円の増加。
投下した費用は、約30億円(三森氏の奥様とご子息の持ち株購入費)+約60億円(TOB費用)≒90億円で、時価総額的な収支のプラスに加え、コロワイド社発展への将来への期待感は高まったといえるでしょう。
いずれにしろ、11月4日の臨時株主総会以降、大戸屋は新しいフェーズに入ることになるでしょうが、まだ1カ月以上の期間があり、その間、窪田社長をはじめとする現経営陣の経営でさらに経営が悪化するおそれがあるのではないかとも危惧されます。
また、もし万一、臨時株主総会で現経営陣10人の取締役の解任ができなかった場合は、来年6月の株主総会まで、歪(いびつ)で微妙なバランスの取締役会となり、ベクトルがそろわず、大戸屋の業績悪化傾向がさらに続くおそれがあるのではないでしょうか。
11月の臨時株主総会での株主の皆様の大戸屋HDの抜本的な経営改善に向けた客観的な正しい判断が期待されます。
まだまだ11月の臨時株主総会でどうなるか明確にはわからない、下駄をはくまでわからない点がありますが、正式にコロワイド社のグループ入りした場合でも、大戸屋グループ創業者の三森久美氏の経営理念や高い志等々が良いかたちで継承されて大戸屋が末広がりに発展していくことを願ってやみません。
────────────────────【minagi blog】 ────────────────────
(四半世紀以上にわたって切磋琢磨してきた盟友の三森久美氏と。徳永氏撮影)
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配役の妙、個性的な演技、それらを巧みに操ったディレクション、の、見事なエンターテイメント作品であり、作品価値(福澤克維監督の見事な演出価値も含む)とあわせてワクワクドキドキのドラマ展開の体験価値を堪能させて頂きました。
番組自体が放つ多大な熱量を体感したせいでしょうか、「半沢直樹」を視聴しながら折に触れ心に響く言葉があり、今回のコロワイド社による大戸屋のTOBのことが走馬灯のように浮かんでまいりました。
なぜ大戸屋が今回のTOBのようなことになってしまったか?
一言で極論すると、大戸屋HDの窪田社長や現経営陣に創業者の故三森久美氏に対する「深い感謝と恩返し」がなかったからだろうと思いました。
「半沢直樹」で「大事なのは感謝と恩返しです!」と何度も繰り返されていましたが、まさにその点が窪田社長等に足りなかった、あるいは、窪田社長がないがしろにしてきた点ではなかったかと推察されます。
その結果、三森久美氏が創り上げてきた善循環の流れが徐々に枯渇、立ち消えになってしまい、巡り巡って、三森氏が亡くなられて以降、徐々に業績悪化を続けて赤字に転落、今回のTOBにつながっていったのではないかと考えられます。
窪田社長等にこの感謝と恩返しの気持ちさえあれば、随分様相が変わったのではないかと思われます。
企業の成長や永続的発展にとって、その根幹において、今回のTOBは、まさに「大事なのは感謝と恩返しです!」ということの重要性の一つの証左ではないかとも存じました。
これらの点をいくつかの観点から分析した印象等も含め備忘録として書き残しておきたいと思います。
1.「たらいの水の原理」(例話)の点からの分析
この「たらいの水」の教訓は筆者も盟友の三森久美氏も若いころにモスバーガー創業者の櫻田慧会長(当時)に何度も教えて頂き、大いに薫陶を受けました。
「たらいの水の原理」は、5年、10年、20年という長期のスパンで見ると必ずと言っていいほど妥当するというのが櫻田慧会長の教えの一つでもありました。そして、「たらいの水の原理」は三森さんと筆者の二人の経営に対する重要な姿勢の一つとなりました。
「たらいの水の原理」として櫻田氏がいわれていたのは次のような趣旨です。
「水を張ったたらいで、両手でその水を自分の方にかき寄せようとすると、かえって反対側の方に逃げて行ってしまう。
他方、人のためにと自分とは反対側に水を両手で押しやると、逆に自分の方に返ってくる。私利私欲の欲心を起こして利己的なことを行うとこのたらいの水のようになってしまう。金銭も人の幸福も企業の発展もまた同じことである。
私利私欲や利己的な欲心をなくし、利他の精神で世のため人のためお客様のために尽くすことで廻りまわって自分に返ってくるのである。」
これが櫻田氏が大切にしている考え方であり、モスバーガーの心だったわけです。ギブアンドギブの精神、感謝、利他の心を櫻田氏は大変重要と考えられていました。
そして、「一人でも多くの人を幸せにするのが経営者の使命である」という言葉を胸に刻み、筆者と三森氏は切磋琢磨、研鑽し続けました。
三森久美氏が亡くなって以降TOBが成立するまでの約5年間の窪田社長の言動や経緯を見ると、(たらいに水を張った)三森氏への心からの感謝と恩返しはあまり感じられず、その結果として、”(三森氏が)水を張ったたらいで、両手でその水を自分の方に目いっぱいかき寄せようして逆に水が逃げて行ってしまった”ような窪田社長への印象です。まさに「たらいの水の原理」が約5年たって窪田社長に妥当したといえるのではないでしょうか。
ちなみに、「たらいの水の原理」(例話)は二宮尊徳(金次郎)の言葉と伝えられていますが、筆者はまだその出所を確認できてはいません。「二宮翁夜話」に「たらいの水の原理」と類似の「湯船の教訓」という例話がありますが、わかりやすく伝えることを旨とされていた二宮尊徳翁がどこかで語られていたお話なのかもしれません。
二宮尊徳翁は「至誠・勤労・分度・推譲の実践」と「仁恕」を特に大切にされた幕末の偉大な人物ですが、現代のわれわれも間違いなく範としたい人物の一人といえるでしょう。
「たらいの水の原理」も「湯船の教訓」も二宮尊徳翁の「推譲」の例話で、「これを悟れば奪って益無く、譲って損無し」「それ譲って損なく、奪って益なき根元を案ずるに、見れども見え難し」とも述べられています。
「たらいの水の原理」は「見れども見え難し」という点があるので、私利私欲の欲心ですべてを奪おう、自分のものにしてしまおう、自分だけが得をしようと人は思ってしまうのかもしれません。それを二宮尊徳翁は様々な例話で戒めようとされていたのだろうと思います。
二宮尊徳翁の教えは稲盛京セラ名誉会長も勉強会等でよくお話をされていましたが、二宮翁の「推譲」と稲盛名誉会長の「利他の心」とは軌を一にするといえるでしょう。
易経に「積善の家に余慶あり、積不善の家に余殃(よおう)あり」という言葉があり、古来より「善因を積んだ家には必ず善果があり、悪因を積んだ家には必ず悪果がある」という「善因善果、悪因悪果」の「因果応報の原理」が働いて”幸不幸のめぐり合わせ”があるとされていますので、きれいな善なる心で善行、利他の善き行いを積み重ねて行きたいものです。そして、きれいな水の流れのごとき善循環の流れをつくり上げて、企業を発展させるとともに社会の発展の一助になりたいものです。
2.稲盛和夫京セラ名誉会長の「六つの精進」からの分析
稲盛名誉会長には企業が永続的に発展するために重要な経営者のための「六つの精進」という教えがあり、筆者自身もとても大切に考えています。内輪の勉強会を始めるときにはいつもみんなで唱和していました。
稲盛名誉会長の「六つの精進」は以前のブログでも書きましたが、次の6つです。
①誰にも負けない努力をする
②謙虚にして驕らず
③反省のある毎日を送る
④生きていることに感謝する
⑤善行、利他行を積む
⑥感性的な悩みをしない
この6つの完璧な実践を目指したいところですが、完璧を常に実践・継続するのは難しい点もあるかもしれませんが、あすなろの木の如く、日々前向きに完璧を目指して精進し続けることが極めて重要です。
さて、大戸屋HDの現経営陣の代表である窪田社長はこの「六つの精進」に照らしてどうだったでしょうか?
何が不足、不十分だったから業績が悪化し、大幅な赤字転落につながってしまったのでしょうか?
筆者の学生時代から数えると40年以上にわたって大戸屋を見てきましたが、窪田社長に関しては、「六つの精進」の①~⑤が不十分、足りなかったのではないかという印象です。
①の(「一人でも多くの人を幸せにするという経営者の使命」の実現のために)「誰にも負けない努力」をされていれば、新型コロナウイルス問題の影響のない前期の中間決算でも営業赤字を計上することはなかったでしょう。経営はリーダー次第ですが、窪田社長はどこまで真剣に、真剣の上にも真剣に誰にも負けない努力をされたのでしょうか?
また、先手先手に時代の変化や環境変化を読んで柔軟・スピーディに適応するとともに三森久美氏の信念、経営信条である松下幸之助翁の「ダム式経営」を実践されていれば、新型コロナウイルス問題でも今期のような大きな業績悪化をもたらすこともなかったでしょう。その意味でも、窪田氏は三森久美氏の経営のDNAを正しく継承しているとはいえないでしょう。
窪田社長は大戸屋HDのトップとして自らの経営力のなさやリーダーとしての不十分な姿勢を猛省し、最新の株主の皆様のご判断、今回のTOB成立の結果を言葉だけでなく真に真摯に受け止めて、自ら潔く業績悪化の経営責任をとって辞任されるべきではなかったでしょうか。
朝日新聞デジタルの記事の中で「企業価値の向上や株主価値の向上に資することについては、我々としてできることは、すべてやってきた」と窪田社長は述べられていますが、本当にそうでしょうか? まだまだ沢山やるべきことがあったのではないでしょうか。
(出所:https://digital.asahi.com/articles/ASN9K4RHVN9KULFA00R.html?pn=8)
①~⑤、それぞれに様々な指摘事項はありますが、なかでも一番は④で述べている「感謝」という点でしょう。
窪田社長が大戸屋に入社した経緯や窪田氏を社長にした経緯等も三森氏から聞いていましたが、それからすると創業者の三森久美氏は窪田社長の大恩人であるはずです。
にもかかわらず、窪田社長の三森氏やそのご家族への対応は三森氏が亡くなられて以降どうだったのでしょうか?
感謝がないと強く非難されても仕方がない一面もあったのではないでしょうか。
窪田社長に三森久美氏への深い感謝と恩返しの心さえあれば今回のTOBのようなことも起こらなかったのではないでしょうか。
「半沢直樹」で「施されたら施し返す、恩返しです!」と大和田取締役(香川照之氏)が述べた名セリフがありますが、窪田社長はこの点についてどのようにされてきたのでしょうか?
筆者は今シリーズ前半の「半沢直樹」で半沢直樹が述べた「森山、忘れるな。大事なのは感謝と恩返しだ。その2つを忘れた未来は、ただの独りよがりの絵空事だ。これまでの出会いと出来事に感謝をし、その恩返しのつもりで仕事をする。そうすれば、必ず明るい未来が拓けるはずだ」というセリフが心に残りましたが、ここ数年の大戸屋HDの現経営陣の感謝と恩返しはどうだったでしょうか?
「人にかけた情は水に流せ、人から受けた恩は石に刻め」という言葉が三森久美氏の信条の一つでしたが、窪田氏は果たしてどうだったでしょうか?
「心を高める 経営を伸ばす」という稲盛名誉会長の教えがありますが、窪田社長はどうだったのでしょうか?
心を高める日々だったかどうか、その点も疑問です。
その結果、今期の8月までの数字を見ると、看過できないほどの大幅な業績悪化となっていると言わざるをえないのではないでしょうか。
3.コロワイド社による大戸屋TOBについての分析
もしコロワイド社によるTOB成立がなければ、大戸屋はどうなったでしょうか?
大戸屋の業績悪化が進み、看過できないほどの悪い状況になっていた中でTOBが成立したわけですが、それによって迫りくる大戸屋の経営危機が救済されたと考えられる一面もあるのではないでしょうか。
一方、窪田社長等への心ある(少数)株主による適切なガバナンスがきかず、経営が破綻の危機に向かって進んでしまっていた一面もあったのではないでしょうか。
今年の5月25日の大戸屋HDの株主提案反対表明のニュースリリースで「本株主提案は、コロワイドが、当社株式 19.1%を保有するにすぎないにもかかわらず」と大株主であるコロワイド社を軽視するような表現をされていることからもそれが窺えるのではないでしょうか。これは少数株主軽視はもちろん大株主軽視の兆候、健全なガバナンス軽視の一つの証左、証拠ともいえるのではないでしょうか。
さて、のれんの問題等も含めたコロワイド社の今回のTOBの中長期の総合的な収支決算はまだわかりませんが、大戸屋TOBに関しては、現金、キャッシュフロー的には90億円ほどの支出がありましたが、ここ10日ほどでみれば、時価総額的には約300億円の増額をもたらしました。
具体的には、以下のような収支の状況かと存じます。
コロワイド社の9月18日の株価は 2,080円 で時価総額:1,566億円。
9月8日TOB成立の日の株価は1,711円で時価総額:1,288億円
2,080円-1,711円=369円upで、時価総額278億円の増加。
投下した費用は、約30億円(三森氏の奥様とご子息の持ち株購入費)+約60億円(TOB費用)≒90億円で、時価総額的な収支のプラスに加え、コロワイド社発展への将来への期待感は高まったといえるでしょう。
いずれにしろ、11月4日の臨時株主総会以降、大戸屋は新しいフェーズに入ることになるでしょうが、まだ1カ月以上の期間があり、その間、窪田社長をはじめとする現経営陣の経営でさらに経営が悪化するおそれがあるのではないかとも危惧されます。
また、もし万一、臨時株主総会で現経営陣10人の取締役の解任ができなかった場合は、来年6月の株主総会まで、歪(いびつ)で微妙なバランスの取締役会となり、ベクトルがそろわず、大戸屋の業績悪化傾向がさらに続くおそれがあるのではないでしょうか。
11月の臨時株主総会での株主の皆様の大戸屋HDの抜本的な経営改善に向けた客観的な正しい判断が期待されます。
まだまだ11月の臨時株主総会でどうなるか明確にはわからない、下駄をはくまでわからない点がありますが、正式にコロワイド社のグループ入りした場合でも、大戸屋グループ創業者の三森久美氏の経営理念や高い志等々が良いかたちで継承されて大戸屋が末広がりに発展していくことを願ってやみません。
────────────────────【minagi blog】 ────────────────────
(四半世紀以上にわたって切磋琢磨してきた盟友の三森久美氏と。徳永氏撮影)
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