経営コンサルタント・プロ経営者として多くの企業の成長や経営改革等を実践・サポートしてきた 皆木和義ブログ

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ビッグモーター社の経営計画書と京セラ創業者の稲盛和夫氏の教えと再建について

2023-07-23 21:55:05 | 日記
ここのところ連日のようにビッグモーター社の不正請求問題がTV等で報道されているが、本当にそのようなことが行われていたのだろうかと永野毅東京海上HD会長や十倉経団連会長等々の方々のお話のように感じた。

ビッグモーター社の特別調査委員会の調査報告書を読んだ。内容的には筆者がかつて再建を主導したある上場企業の第三者委員会の調査報告書とほぼ同様の趣旨の傾向性が見られた。
またビッグモーター社の特別調査委員会の委員の一人の方が以前に不祥事を起こしたある上場企業の再発防止委員会で委員としてご一緒した方だった。その意味でも、余計に興味深く調査報告書を拝読させていただいた。
調査報告書の内容はとてもマイルドに婉曲に表現されているが、その言葉や表現の背景にどれほど多くの具体例や様々な実態等々があったかが容易に想像されるようにも感じられた。

TVを見ていたら、ビッグモーター社の経営計画書が紹介されていて、京セラ創業者の稲盛和夫氏の教えである「経営の原点12カ条」が大きく映像として映し出されていた。その中のいくつかの項目が大変強調されていたが、稲盛氏の「経営の原点12カ条」がビッグモーター社で真に正しく実践されていたのだろうか?
もしかするとビッグモータ社の社長かご子息の副社長の方が稲盛氏が以前に主宰されていた盛和塾の塾生をされていたのだろうか?
TVでのその説明を聞く限りでは、稲盛氏の趣旨、本意とは違うようなかたちで運用されていたのではないかと思われた。稲盛氏の真意を含め、現時点の印象を備忘録として残しておこうと考えた次第である。

稲盛氏の教えの「人生・仕事の結果の方程式=考え方×熱意×能力」が、ビッグモーター社の経営計画書の「組織(要因)に関する方針」の「2.能力と考え方」では、変容をされて使われているようにも感じた。それは上記のように「経営の原点12カ条」が記されていることから、そう感じられたのである。
稲盛氏の教えの「考え方」は、利他の心、世のため人のため、公明正大、正々堂々、というのが根幹である。

いずれにしろ、ビッグモーター社の真に立て直しができるかどうかは、信頼の回復、特別調査委員会の提言の再発防止策の実効的な完全なる徹底と経営理念の真の実践徹底が本当にできるかどうかにかかっているであろう。
そのようにして、一手一手を間違うことなく、お客様本位・お客様第一主義の経営、組織(体制)に徹底できれば、過去の経験からの印象であるが、2~3年で十分な再建、復活・新生ができるであろう。
今後の一手一手、最善手の手が打てるかどうか、最善手の対応ができるかがきわめて重要である。

ビッグモーター社の不正問題については、これから様々新しい事実や情報等々が出てくることであろうが、ガバナンス、コンプライアンス、再建を中心に、今後のビッグモーター社に関する展開を注視してゆきたい。





人生と経営の恩師の方々への感謝とアサヒビールの泡が出る生ジョッキ缶について

2021-05-04 13:33:33 | 日記
先週のカンブリア宮殿でアサヒビールのことが放映されていて、泡の出るビールの生ジョッキ缶を中心に紹介されていた。
新型コロナ禍の影響のなかにあってお客様の心をとらえているという。
確かに生ジョッキ缶はいつも飲んでいるスーパードライとは一味違い、ジョッキで生ビールを飲んでいるような雰囲気と味わいであった。


  


カンブリア宮殿を視聴しながら、筆者の経営の師であり、アサヒビール中興の祖といわれた樋口廣太郎元社長のことを感慨深く思い出していた。1987年、アサヒビールが樋口廣太郎氏によって復活、スーパードライで大躍進してからはや20年以上たっている。最近、キリンがシェア1位を逆転、奪回して、アサヒビールはいま瀬戸際に立たされているという趣旨のカンブリア宮殿の番組の取り上げ方だった。

樋口氏のことを思い出しながら、人生の恩師の方々のことが走馬灯のように浮かんできた。様々な方々にお世話になって、今日の自分がある。その方々のことを思うと、感謝の念でいっぱいになる。備忘録として少し書き留めておきたいと思う。

中でも、若い頃からプロ経営者を目指してきた筆者には3大恩師ともいうべき方々がいる。
樋口廣太郎氏、京セラ創業者の稲盛和夫氏、もうお一人は日本精工中興の祖といわれた今里廣記氏。お名前を思うだけで様々な思い出が走馬灯のように浮かんでくる。心から有り難いと思う。
樋口氏からは企業再建の経営や逆転のマーケティング、ピンチをチャンスに変える考え方や手法など様々なことを深く学ばせて頂いた。
稲盛氏からは経営理念の大切さやフィロソフィ経営など口には表せないほど多くのことを学ばせて頂いた。

樋口廣太郎氏と稲盛和夫氏のことは本ブログの最初の頃の方でそれぞれ書かさせて頂いたので、今日は今里廣記氏のことを少し書かさせて頂こうと思う。

今月は今里氏の命日の日の月でもあり、つい先日も今里氏の秘書関係の先輩から墓参の会のご連絡を頂いた。
例年その先輩と今里氏とご縁の深いYご夫妻と菩提寺におまいりするのが長年の習わしのようになっている。今里氏は信心深い方で池上本門寺の檀家総代なども務められていた。Y氏は筆者の兄貴的存在で東証一部上場企業の創業社長として活躍されている。

今里氏がどんな人だったかというと、一言で極論するとすると、九州長崎のご出身で、西郷隆盛を尊敬されていて、昭和の西郷さんのようになりたいという志をもって東京に上京され、日本精工の再建とそのグローバル企業化をはじめ日本の戦後の復興と発展に大きく貢献された人物という表現だろうか。今里氏はNTT設立委員長や日経連(現在の経団連)副会長なども歴任され、また、政界・財界などの名調整役として財界の官房長官とも称され、信条は「敬天愛人」で、まさにそのように生きられた方だと思う。今里氏のご自宅の居間には親しくされていた同郷長崎の彫刻家の北村西望先生の大きな「敬天愛人」の書の額が飾られていて、毎日見られて心に刻んでおられたのではないかと思っている。

今里氏は田中角栄元首相や中曽根康弘元首相等とも親しく、作家の井上靖氏の心友で、故郷長崎をこよなく大切にされていた。若い頃のことであるが、今里氏が親しくされていた同郷の北村西望先生の井之頭公園のアトリエに何度か訪問させて頂き、お話をお伺いしたことがある。北村先生の奥様はとても慈愛深い感じの方で、北村先生の観音像などのモデルともいわれていたが、筆者もそのように思った次第である。先生は大変多くの作品を創られているが、作品の一つの「笑う少女」にも奥様の笑顔の雰囲気が反映されているのではないかとも思っている。のちに、1990年頃だったかと思うが、「成功の実現」という哲人中村天風(天風会創始者)の本を読んで感銘を受け、そのときに北村西望先生が中村天風氏の影響を受けられたことを知ったが、先生の作品に天風哲学が直接間接に反映されているのではないかとも感じた次第である。
今里邸のお隣には樋口廣太郎氏の尊敬する上司で樋口夫妻の仲人をされた伊部恭之助住友銀行(現三井住友銀行)元頭取が当時お住まいになられていたのも不思議なご縁である。

今里氏の部下であられた日本精工名誉顧問の朝香聖一氏(日本精工元社長)のお話が2021年4月7日の日本経済新聞(夕刊)「こころの玉手箱」に載っていたので、懐かしく思い、切り抜きをしてスクラップブックに保存させて頂いた。今回、本ブログにも備忘録的に載せさせて頂こうと思う。
それは次の記事で、今里氏の人となりがよく表されていると思う。


   


同記事から引用してみよう。
『まだ日本精工(NSK)の本社が丸の内の郵船ビル(東京・千代田)に入居していた頃、エレベーターで乗り合わせた当時の今里広記社長に「君はどこの社員かね。NSKのバッジをつけていないやつは社員じゃない」と言われた。社員バッジを付け忘れていたことに気づかされた。それ以来、今日まで仕事に出る時は欠かさず付けている。スーツを替えるときもまずは襟のバッジからだ。』
今里さんらしい言い方であり、今里さんらしい部下教育法である。爾来、朝香元社長はNSKのバッジに対する今里氏が込めた思いを大切にされ、また、今里氏の思いをすぐに理解された朝香元社長のお人柄もよく伝わってくる。

同記事の次のエピソードも今里氏らしい。
『個人として営業成績を上げたいがために頑張るのには限界がある。でも自分の好きな会社を良くしようという心があれば、人は動ける。その原体験が今里さんとのやり取りにあった。
大手電機メーカーを20代で担当したとき、どうしても受注したい案件があった。会社の手薄な分野で、開拓できれば大きな仕事に結びつくが、自分の力だけでは受注できなかった。最後の切り札として今里社長の部屋に駆け込み、直接かけ合ってほしいと直訴した。
今里さんは話に耳を傾けて「そうか」と言いながら電話機のダイヤルを回した。「いまうちの若いのが社長室に飛んできた。どうしても受注してほしい案件がある」と切り出すと、10分後には先方の役員が駆けつけ、受注への商談が動き出した。顧客や会社のためになる話であれば、どんな手を尽くしてでも実現を目指すことは間違っていないと学んだ。』
朝香元社長の営業マンとしての素晴らしさとスピードをモットー、信条にする今里氏らしさがよく伝わってくる内容である。

そのようなことから、朝香元社長は『2002年に社長に就いた際、社員に求めるものとして「挑戦・執着力・NSK愛」を掲げた。挑戦や執着心の源は会社への愛や誇りで、そのシンボルの一つがバッジだと考えている。』と述べられている。
この朝香氏の言葉を今里氏が聞けば本望と喜ばれるだろうし、朝香氏はまさに今里氏の薫陶を受けられた愛弟子といっても良いのではないだろうか。

筆者もよく今里氏に「スピード」の大切さを教えて頂いた。
筆者には経営の大切さとして、『スピード、スピリット、システム』の3S主義とよく言われていた。
爾来、この3Sを心に刻んでいる。
今里氏の高い志や信念、情熱と決断力、経営者としての姿勢、国家百年の計を考えたグローバルな視野の広さ、人との縁を大事にする姿勢等々を間近で学ばせて頂いたたことは何物にも代えがたい財産である。
筆者が今里氏の知遇を得たのは、大学3年の時、今から45年以上前である。初めてお会いした日に「君、今日からうちに来なさい」と言われ、その日の夜から今里氏のご自宅に住み込みの内弟子的な生活が始まり、家族同様に大事にしていただいた。今思えばまことに不思議なご縁であり、感謝の思いでいっぱいである。
以来、今里氏から学んだことを今も大切にして生きている。
また、これからも今里氏の教えを胸に、ご縁を頂いた企業をはじめとして社会に恩返しをしていきたい、優れたガバナンスの魅力的な成長企業の育成や素晴らしいIPO企業等を育成して市場に良いかたちで送り出すなど、強い良い企業の育成、最強・最善の企業の育成とともに世のため人のために積極的に活動を続けて行きたいと考えている。


   
   (今里氏は自宅では和服で過ごされていて、20代の頃に今里邸の庭で撮った写真)







2021年2月7日の「がっちりマンデー」に登場されたエリーパワーの吉田博一会長の「青春の詩」的ご活躍を拝見して

2021-02-11 10:05:55 | 日記
2月7日の「がっちりマンデー」(TBS)は『何歳からでもいける!儲かる「遅咲き社長」』というタイトルで特集されていて、高齢者といわれるような年代に入った筆者とすると、大変元気を頂く素晴らしい内容の番組でしたので備忘録として少し書き残しておきたいと存じます。
番組の中で、エリーパワーの吉田博一会長が登場されていて、どこかでお見かけしたような印象もありましたので、ネットで会社のご住所を拝見すると、とてもご近所の会社でした。

60代半ばを過ぎると、元気で頑張っておられる人生の先輩を見ると、自分もなぜか不思議と嬉しくなるし、また、大いに学ばなければと励みに思う今日この頃です。
やはりご近所でハローキティで知られるサンリオの辻信太郎会長は93歳で現役の会長として働かれていて、ときどき近くのサンリオショップの前などでお見かけしますが、背筋がピンと伸びてかくしゃくとされていて、そのたびに「ますますお元気でご活躍を」と心の中で呟いている自分を感じております。初めてお会いしたのは確か筆者が学生時代の頃、軽井沢の旧軽銀座にあったサンリオショップではなかったでしょうか。あれからはや40年余、まさに光陰矢の如し、と思う次第です。

さて、「がっちりマンデー」ですが、83歳のエリーパワーの吉田会長のTVを見て、何歳になっても「夢」を持つことの大切さ、「熱き心」や高い「志」を強く持つことの素晴らしさをあらためて感じました。
吉田会長はサミュエル・ウルマンの「青春の詩」を大切にされているとのこと、まさに同感に思う次第です。




(出所:2021年2月7日「がっちりマンデー」、番組HP:https://note.com/gacchiri/n/n724a221cf2dd)



TVでの吉田会長の人間的魅力に大変興味を持ちましたので、エリーパワーのHPを拝見したり、ネットで検索すると、吉田会長に関する本が出版されていることがわかりましたので、直ちに取り寄せて、拝読させて頂きました。
本のタイトルは「燃えない電池に挑む! 69歳からの起業家・吉田博一」で、著者は日本経済新聞編集委員の竹田忍氏です。
拝読して、吉田会長とエリーパワー社のことがよくわかるとても良い本だと存じました。



 


本を拝読すると、筆者の経営の師であり敬愛する樋口廣太郎アサヒビール元会長のこと(「おいあくま さあほとけ」や樋口流経営、気配りやスピードに対する考え方など)が随所にご紹介されていて、吉田会長と樋口元会長とが、住友銀行(現三井住友銀行)での上司と部下以上の深いご交流を感じました。
また、大学時代からの友人の黒岩神奈川県知事や漢方の権威の根本先生のことなどもご紹介されていましたので、あらためて吉田会長との不思議なご縁を感じました。

TVの番組内では吉田会長は社長とご一緒に三輪神社に参拝をされていましたが、その理由も本書から伺われました。
根本先生を通じて三輪神社を崇敬されるようになられたと理解いたしました。
根本先生は大変親切な方で、樋口廣太郎アサヒビール元会長の一周忌の際に森川敏雄住友銀行元頭取と3人で撮った写真などをすぐに送ってくださったりしました。
森川元頭取には何回かお目にかかる機会がございましたが、いつお会いしても大変温厚な方ですが、芯のしっかりした筋を通される方のように思いました。樋口元会長が亡くなられる1週間ほど前に樋口様の奥様からお電話を頂き病院にお伺いさせていただきましたが、筆者の前にお見舞いに来られていたのが森川元頭取でございました。

TVで拝見した吉田会長のエネルギッシュなお姿に深く感銘を受け、あらためてサミュエル・ウルマンの「青春の詩」を読み直しました。
還暦半ばも過ぎるとより心にぐっと響いてくる内容です。
この詩のことを筆者が知ったのは、40年以上前の新入社員のときの合宿研修です。富士山のよく見える研修所で、研修修了時のはなむけの言葉として講師の方から「青春の詩」のコピーを頂きましたが、爾来、長く筆者の心の指針となってきました。
最近は以前のように手帳にはさんで朝夕毎日読み返していませんでしたので、83歳の吉田会長の理想に燃えた情熱的なお姿、まさに「青春の詩」そのもののような挑戦心とご活躍を見て、若輩の小生はなおさらこの詩から大いに学ばなければならないと思いました。


【ある日の富士山】



「青春」    サミュエル・ウルマン

青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。
優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦を却ける勇猛心、
安易を振り捨てる冒険心、こう言う様相を青春と言うのだ。

年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。
歳月は皮膚のしわを増すが、情熱を失う時に精神はしぼむ。
苦悶や、狐疑や、不安、恐怖、失望、こう言うものこそ恰も長年月の如く
人を老いさせ、精気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。

年は七十であろうと、十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。
曰く驚異えの愛慕心、空にきらめく星辰、その輝きにも似たる
事物や思想に対する欽仰、事に処する剛毅な挑戦、小児の如く
求めて止まぬ探求心、人生への歓喜と興味。

  人は信念と共に若く 疑惑と共に老ゆる。
  人は自信と共に若く 恐怖と共に老ゆる。
  希望ある限り若く  失望と共に老い朽ちる。

大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、そして
偉力の霊感を受ける限り人の若さは失われない。
これらの霊感が絶え、悲嘆の白雪が人の心の奥までも蔽いつくし、
皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至れば、この時にこそ
人は全くに老いて神の憐れみを乞うる他はなくなる。



本当に素晴らしい詩ですね。
読むたびに、40年以上前に新入社員研修で受けた青春の感動が蘇ってくるような気がいたします。
パナソニック創業者の松下幸之助翁が感動されて、短くまとめられて自分自身の心の指針とされていたのもうなづけます。


また、この詩で述べられている考え方や姿勢、心や言葉は、まさに経営者・リーダーに必須のものが凝縮されているのではないかと存じます。
何歳になっても、60歳だろうと、70歳、80歳、90歳だろうと、いつも、「青春」の詩の心で、また、利他の心で世のため人のために、情熱をもって経営に人生に仕事に大いに頑張りたいものです。








大戸屋に関する「ガイアの夜明け」と日経ビジネスの「コロワイドのTOB成立 大戸屋HD、企業防衛は1日にして成らず」などを読んで

2020-10-11 15:38:07 | 日記
2020年10月6日(火曜日)の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)で「大戸屋"買収劇の真相 〜人気定食チェーンはなぜ狙われたのか?〜」が放映されました。
視聴した印象などを備忘録的に書き留めておきたいと思います。
放送内容については『大戸屋VSコロワイドの真相 独自取材!外食初…「敵対的買収」の裏側』と紹介されていました。6ヵ月の間、独自追跡をされていて、この6ヵ月間の出来事を上手にまとめられているのではないかと存じました。
この番組からも、創業者の故三森久美氏への深い感謝と恩返しと三森氏のご家族を大切にする真心や配慮が窪田健一社長や現経営陣に真にあれば、このようなTOBなどは起こらなかっただろうと思いました。


      
      (出所:https://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber4/preview_20201006.html)


余談ですが、筆者も以前「ガイアの夜明け」の制作の方から小生の仕事についての番組をつくりたいとのオファーを頂いたことがあり、以来、「ガイアの夜明け」は毎回のように視聴させて頂いております。


この週は、大戸屋に関連していくつかの記事を読みましたので、その中の2つの印象などを書き留めておきたいと思います。

一つ目は、日経ビジネスの2020年10月12日号の「ケーススタディー」の大戸屋の記事です。その小見出しのタイトルは「コロワイドのTOB成立 大戸屋HD、企業防衛は1日にして成らず」です。
タイトルにある「企業防衛は1日にして成らず」という角度からその経緯などが上手に紹介されていました。
水面下で、ホワイトナイト(白馬の騎士)探しを大戸屋HDのアドバイザーのフロンティア・マネジメントを中心に必死にやっていたことが書かれていて、候補先としては、アークランドサカモト、神明ホールディングス、投資ファンドなどが挙げられていました。
またコロワイド社のTOBの三段構えの戦略などについても的確に触れられていました。


二つ目は、毎日新聞「経済プレミア」の町野幸記者の記事です。
記事のタイトルは『「リアル半沢直樹」大戸屋買収劇で見た従業員の悲哀』で、従業員の観点からアプローチされた良い記事と存じました。
(出所:https://news.yahoo.co.jp/articles/daa040294a2e9358824daa5afa8c710c6d23de35)

町野記者の記事のなかに『買収が決まった今、大戸屋の社員からは現経営陣への恨み節が聞かれる。ある社員は、「現経営陣はもともと三森久実氏のイエスマンで、自分の頭で物事を考えてこなかった。無能な連中のせいでこんなことになった」と不満をぶちまけた。』とありましたが、窪田社長と現経営陣の経営責任、特にトップの窪田社長の責任は極めて重いといえるでしょう。
このような発言になったその根本原因は、『半沢直樹』で何度も述べられていた言葉ですが、創業者の三森久美氏と三森氏を支えたご家族に対する窪田社長等の「感謝と恩返し」がなかったからだといわざるを得ないでしょう。

三森久美氏は経営理念の徹底とお客様第一主義経営の徹底には厳格な経営者でしたが、三森氏にはパート・アルバイトさんを含め全ての従業員の皆さんへの深い愛情がありました。その辺を窪田社長をはじめとする現経営陣はどのようにされてこられたのでしょうか。
もし三森氏のような深い愛情をもって従業員の方々に接していれば、上記のある社員の方のような発言も出なかったのではないでしょうか。



大戸屋が将来どのようになっていくかわかりませんが、盟友の三森氏が作った本の心もご理解いただいて、大戸屋がさらに良いかたちで進化し発展していくことを願っております。

これが三森氏が深く思いを込めた『一心精進』という本です。
三森氏の志や理念や思いがよく伝わってくるとても素晴らしい本と存じております。


      
      (2011年に三森氏が心をこめて出版された本)


      
 (三森氏から本書の「あとがき」を頼まれ、「おもてなしのあり方」というテーマで執筆いたしました。)


本書の最後の頁は三森久美氏からのメッセージです。
 『「飲食業を志す若い人達に」
   これからの飲食業の環境は、益々厳しさが増してくると思います。しかし、この三人の名匠達の経験を参考に志を立て、
   懸命に努力を行っていけば必ず、成功すると確信しております。』

現在もまだ新型コロナウイルス問題の影響を受けて、外食産業、飲食業は厳しい環境にありますが、志を立てて、ウィズコロナ時代の経営とHDCとは何かをゼロから見直して、環境変化に柔軟に適応するとともに、環境を自ら変革していく懸命な努力をされていかれることを三森氏はきっと願っていることでしょう。
  cf.《H:ホスピタリティ(おもてなし)、D:デリシャス(美味しさ)、C:クレンリネス(清潔さ・快適さ))


本書は2011年というウィズコロナ時代以前の本ではありますが、いささかも古びることなく、今もあとに続く若い方々への熱いメッセージ、特に飲食業を目指す若い方々への心を込めた三森久美氏のメッセージになっていると存じております。



大戸屋TOBと「半沢直樹」の「大事なのは感謝と恩返しです!」と盥(たらい)の水の原理(例話)との関係性について

2020-09-21 17:25:00 | 日記
昨日の日曜劇場「半沢直樹」第9話も出演者の方々の素晴らしい演技に引き込まれるようにして楽しませて頂きました。
配役の妙、個性的な演技、それらを巧みに操ったディレクション、の、見事なエンターテイメント作品であり、作品価値(福澤克維監督の見事な演出価値も含む)とあわせてワクワクドキドキのドラマ展開の体験価値を堪能させて頂きました。
番組自体が放つ多大な熱量を体感したせいでしょうか、「半沢直樹」を視聴しながら折に触れ心に響く言葉があり、今回のコロワイド社による大戸屋のTOBのことが走馬灯のように浮かんでまいりました。

なぜ大戸屋が今回のTOBのようなことになってしまったか?
一言で極論すると、大戸屋HDの窪田社長や現経営陣に創業者の故三森久美氏に対する「深い感謝と恩返し」がなかったからだろうと思いました。

「半沢直樹」で「大事なのは感謝と恩返しです!」と何度も繰り返されていましたが、まさにその点が窪田社長等に足りなかった、あるいは、窪田社長がないがしろにしてきた点ではなかったかと推察されます。
その結果、三森久美氏が創り上げてきた善循環の流れが徐々に枯渇、立ち消えになってしまい、巡り巡って、三森氏が亡くなられて以降、徐々に業績悪化を続けて赤字に転落、今回のTOBにつながっていったのではないかと考えられます。
窪田社長等にこの感謝と恩返しの気持ちさえあれば、随分様相が変わったのではないかと思われます。

企業の成長や永続的発展にとって、その根幹において、今回のTOBは、まさに「大事なのは感謝と恩返しです!」ということの重要性の一つの証左ではないかとも存じました。

これらの点をいくつかの観点から分析した印象等も含め備忘録として書き残しておきたいと思います。

1.「たらいの水の原理」(例話)の点からの分析
 この「たらいの水」の教訓は筆者も盟友の三森久美氏も若いころにモスバーガー創業者の櫻田慧会長(当時)に何度も教えて頂き、大いに薫陶を受けました。
「たらいの水の原理」は、5年、10年、20年という長期のスパンで見ると必ずと言っていいほど妥当するというのが櫻田慧会長の教えの一つでもありました。そして、「たらいの水の原理」は三森さんと筆者の二人の経営に対する重要な姿勢の一つとなりました。

「たらいの水の原理」として櫻田氏がいわれていたのは次のような趣旨です。
「水を張ったたらいで、両手でその水を自分の方にかき寄せようとすると、かえって反対側の方に逃げて行ってしまう。
 他方、人のためにと自分とは反対側に水を両手で押しやると、逆に自分の方に返ってくる。私利私欲の欲心を起こして利己的なことを行うとこのたらいの水のようになってしまう。金銭も人の幸福も企業の発展もまた同じことである。
 私利私欲や利己的な欲心をなくし、利他の精神で世のため人のためお客様のために尽くすことで廻りまわって自分に返ってくるのである。」
これが櫻田氏が大切にしている考え方であり、モスバーガーの心だったわけです。ギブアンドギブの精神、感謝、利他の心を櫻田氏は大変重要と考えられていました。
 そして、「一人でも多くの人を幸せにするのが経営者の使命である」という言葉を胸に刻み、筆者と三森氏は切磋琢磨、研鑽し続けました。

 三森久美氏が亡くなって以降TOBが成立するまでの約5年間の窪田社長の言動や経緯を見ると、(たらいに水を張った)三森氏への心からの感謝と恩返しはあまり感じられず、その結果として、”(三森氏が)水を張ったたらいで、両手でその水を自分の方に目いっぱいかき寄せようして逆に水が逃げて行ってしまった”ような窪田社長への印象です。まさに「たらいの水の原理」が約5年たって窪田社長に妥当したといえるのではないでしょうか。

 ちなみに、「たらいの水の原理」(例話)は二宮尊徳(金次郎)の言葉と伝えられていますが、筆者はまだその出所を確認できてはいません。「二宮翁夜話」に「たらいの水の原理」と類似の「湯船の教訓」という例話がありますが、わかりやすく伝えることを旨とされていた二宮尊徳翁がどこかで語られていたお話なのかもしれません。

 二宮尊徳翁は「至誠・勤労・分度・推譲の実践」と「仁恕」を特に大切にされた幕末の偉大な人物ですが、現代のわれわれも間違いなく範としたい人物の一人といえるでしょう。

 「たらいの水の原理」も「湯船の教訓」も二宮尊徳翁の「推譲」の例話で、「これを悟れば奪って益無く、譲って損無し」「それ譲って損なく、奪って益なき根元を案ずるに、見れども見え難し」とも述べられています。 
 「たらいの水の原理」は「見れども見え難し」という点があるので、私利私欲の欲心ですべてを奪おう、自分のものにしてしまおう、自分だけが得をしようと人は思ってしまうのかもしれません。それを二宮尊徳翁は様々な例話で戒めようとされていたのだろうと思います。
 二宮尊徳翁の教えは稲盛京セラ名誉会長も勉強会等でよくお話をされていましたが、二宮翁の「推譲」と稲盛名誉会長の「利他の心」とは軌を一にするといえるでしょう。

 易経に「積善の家に余慶あり、積不善の家に余殃(よおう)あり」という言葉があり、古来より「善因を積んだ家には必ず善果があり、悪因を積んだ家には必ず悪果がある」という「善因善果、悪因悪果」の「因果応報の原理」が働いて”幸不幸のめぐり合わせ”があるとされていますので、きれいな善なる心で善行、利他の善き行いを積み重ねて行きたいものです。そして、きれいな水の流れのごとき善循環の流れをつくり上げて、企業を発展させるとともに社会の発展の一助になりたいものです。


     



2.稲盛和夫京セラ名誉会長の「六つの精進」からの分析
稲盛名誉会長には企業が永続的に発展するために重要な経営者のための「六つの精進」という教えがあり、筆者自身もとても大切に考えています。内輪の勉強会を始めるときにはいつもみんなで唱和していました。

稲盛名誉会長の「六つの精進」は以前のブログでも書きましたが、次の6つです。
 ①誰にも負けない努力をする
 ②謙虚にして驕らず
 ③反省のある毎日を送る
 ④生きていることに感謝する
 ⑤善行、利他行を積む
 ⑥感性的な悩みをしない

この6つの完璧な実践を目指したいところですが、完璧を常に実践・継続するのは難しい点もあるかもしれませんが、あすなろの木の如く、日々前向きに完璧を目指して精進し続けることが極めて重要です。

さて、大戸屋HDの現経営陣の代表である窪田社長はこの「六つの精進」に照らしてどうだったでしょうか?
何が不足、不十分だったから業績が悪化し、大幅な赤字転落につながってしまったのでしょうか?

筆者の学生時代から数えると40年以上にわたって大戸屋を見てきましたが、窪田社長に関しては、「六つの精進」の①~⑤が不十分、足りなかったのではないかという印象です。

①の(「一人でも多くの人を幸せにするという経営者の使命」の実現のために)「誰にも負けない努力」をされていれば、新型コロナウイルス問題の影響のない前期の中間決算でも営業赤字を計上することはなかったでしょう。経営はリーダー次第ですが、窪田社長はどこまで真剣に、真剣の上にも真剣に誰にも負けない努力をされたのでしょうか?
 また、先手先手に時代の変化や環境変化を読んで柔軟・スピーディに適応するとともに三森久美氏の信念、経営信条である松下幸之助翁の「ダム式経営」を実践されていれば、新型コロナウイルス問題でも今期のような大きな業績悪化をもたらすこともなかったでしょう。その意味でも、窪田氏は三森久美氏の経営のDNAを正しく継承しているとはいえないでしょう。
 窪田社長は大戸屋HDのトップとして自らの経営力のなさやリーダーとしての不十分な姿勢を猛省し、最新の株主の皆様のご判断、今回のTOB成立の結果を言葉だけでなく真に真摯に受け止めて、自ら潔く業績悪化の経営責任をとって辞任されるべきではなかったでしょうか。
 朝日新聞デジタルの記事の中で「企業価値の向上や株主価値の向上に資することについては、我々としてできることは、すべてやってきた」と窪田社長は述べられていますが、本当にそうでしょうか? まだまだ沢山やるべきことがあったのではないでしょうか。
(出所:https://digital.asahi.com/articles/ASN9K4RHVN9KULFA00R.html?pn=8)

①~⑤、それぞれに様々な指摘事項はありますが、なかでも一番は④で述べている「感謝」という点でしょう。

窪田社長が大戸屋に入社した経緯や窪田氏を社長にした経緯等も三森氏から聞いていましたが、それからすると創業者の三森久美氏は窪田社長の大恩人であるはずです。
にもかかわらず、窪田社長の三森氏やそのご家族への対応は三森氏が亡くなられて以降どうだったのでしょうか?
感謝がないと強く非難されても仕方がない一面もあったのではないでしょうか。
窪田社長に三森久美氏への深い感謝と恩返しの心さえあれば今回のTOBのようなことも起こらなかったのではないでしょうか。

「半沢直樹」で「施されたら施し返す、恩返しです!」と大和田取締役(香川照之氏)が述べた名セリフがありますが、窪田社長はこの点についてどのようにされてきたのでしょうか?

筆者は今シリーズ前半の「半沢直樹」で半沢直樹が述べた「森山、忘れるな。大事なのは感謝と恩返しだ。その2つを忘れた未来は、ただの独りよがりの絵空事だ。これまでの出会いと出来事に感謝をし、その恩返しのつもりで仕事をする。そうすれば、必ず明るい未来が拓けるはずだ」というセリフが心に残りましたが、ここ数年の大戸屋HDの現経営陣の感謝と恩返しはどうだったでしょうか?

「人にかけた情は水に流せ、人から受けた恩は石に刻め」という言葉が三森久美氏の信条の一つでしたが、窪田氏は果たしてどうだったでしょうか?

「心を高める 経営を伸ばす」という稲盛名誉会長の教えがありますが、窪田社長はどうだったのでしょうか?
心を高める日々だったかどうか、その点も疑問です。
その結果、今期の8月までの数字を見ると、看過できないほどの大幅な業績悪化となっていると言わざるをえないのではないでしょうか。


3.コロワイド社による大戸屋TOBについての分析
もしコロワイド社によるTOB成立がなければ、大戸屋はどうなったでしょうか?
大戸屋の業績悪化が進み、看過できないほどの悪い状況になっていた中でTOBが成立したわけですが、それによって迫りくる大戸屋の経営危機が救済されたと考えられる一面もあるのではないでしょうか。

一方、窪田社長等への心ある(少数)株主による適切なガバナンスがきかず、経営が破綻の危機に向かって進んでしまっていた一面もあったのではないでしょうか。
今年の5月25日の大戸屋HDの株主提案反対表明のニュースリリースで「本株主提案は、コロワイドが、当社株式 19.1%を保有するにすぎないにもかかわらず」と大株主であるコロワイド社を軽視するような表現をされていることからもそれが窺えるのではないでしょうか。これは少数株主軽視はもちろん大株主軽視の兆候、健全なガバナンス軽視の一つの証左、証拠ともいえるのではないでしょうか。

さて、のれんの問題等も含めたコロワイド社の今回のTOBの中長期の総合的な収支決算はまだわかりませんが、大戸屋TOBに関しては、現金、キャッシュフロー的には90億円ほどの支出がありましたが、ここ10日ほどでみれば、時価総額的には約300億円の増額をもたらしました。
具体的には、以下のような収支の状況かと存じます。

コロワイド社の9月18日の株価は 2,080円 で時価総額:1,566億円。
9月8日TOB成立の日の株価は1,711円で時価総額:1,288億円
2,080円-1,711円=369円upで、時価総額278億円の増加。
投下した費用は、約30億円(三森氏の奥様とご子息の持ち株購入費)+約60億円(TOB費用)≒90億円で、時価総額的な収支のプラスに加え、コロワイド社発展への将来への期待感は高まったといえるでしょう。


いずれにしろ、11月4日の臨時株主総会以降、大戸屋は新しいフェーズに入ることになるでしょうが、まだ1カ月以上の期間があり、その間、窪田社長をはじめとする現経営陣の経営でさらに経営が悪化するおそれがあるのではないかとも危惧されます。

また、もし万一、臨時株主総会で現経営陣10人の取締役の解任ができなかった場合は、来年6月の株主総会まで、歪(いびつ)で微妙なバランスの取締役会となり、ベクトルがそろわず、大戸屋の業績悪化傾向がさらに続くおそれがあるのではないでしょうか。
11月の臨時株主総会での株主の皆様の大戸屋HDの抜本的な経営改善に向けた客観的な正しい判断が期待されます。


まだまだ11月の臨時株主総会でどうなるか明確にはわからない、下駄をはくまでわからない点がありますが、正式にコロワイド社のグループ入りした場合でも、大戸屋グループ創業者の三森久美氏の経営理念や高い志等々が良いかたちで継承されて大戸屋が末広がりに発展していくことを願ってやみません。


────────────────────【minagi blog】 ────────────────────


        
       (四半世紀以上にわたって切磋琢磨してきた盟友の三森久美氏と。徳永氏撮影)



 

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