まず、タイトルを読んで「何じゃこりゃ?」と思った方。あなたは正しい。
レイバーキャリアといえば、イングラムなどレイバーを運ぶトレーラーのことですが、みなさんTV版を見てお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが車幅が広い。
それでいて、道路の車線をはみ出しているかといえば一部の区間や地域(四倉村)でははみ出し、走行不能になることもありますが、東京都内においては、はみ出すことはなく、難なく走行しています。
そういう光景を見て思ったんです。いったいパトレイバーの世界の道路事情はどうなっているのかと。
そういう細かくてどうでもいいような点について、ここでは書いていこうと思います。
では初めに、レイバーキャリアの車幅と日本の道路交通法による道路幅について明らかにしていきましょう。
まずレイバーキャリア(99式特型)の車幅は、5.45Mだそうです。
後藤隊長のミニパトのホンダ・トゥデイの車幅は約1.4メートルだそうですから、ミニパトの約3.8倍ということになります。
TVや後期OVAのレイバーキャリアの雄姿を見ると、たしかにトゥデイの2~3倍の幅があるように見えましたので、どうやら縮尺がきちんとしているようです。
では日本の道路交通法によれば、車両通行帯の幅員は三メートル以上(1車線)だそうです。
なので通常の道路(片側一車線の計2車線)の場合、路側帯や歩道を考慮せずに考えれば3M×2車線で6M。
道路交通法の第4条一項によれば「路側帯はその幅員を〇・七五メートル以上」となっていますから、左右に0.75Mを設けて1.5M。
つまり6M+1.5Mで7.5M。日本の道路って結構広いんですね。実際にはこれより狭い道は腐るほどありますが、今回はこれを基準にしましょう。
では、作中での道幅に関する描写をみていきましょう。
TV版40話四倉村でのレイバーキャリア接触事故。
TV版40話「沿岸警備命令」にて、四倉村に向かうキャリアは野明の誘導を受けながら歩道・路側帯なしの片側一車線計二車線の道を道いっぱいの状態で進み、右カーブにてガードレールに接触していました。ということは四倉村に続く道の幅は、5.45M+数10センチ程度でしょう。仮に5.70Mとしても1車線2.85Mですから、日本のスタンダートなセダン、カローラアクシオの車幅の約1.7Mと比べても、十分な幅があるといってよいでしょう。
しかし、これは直線を走る場合で、カーブを回る際には大型車やトレーラーの場合大回りせざ得るを得ません。ですから、車両の左前方をぶつけたのでしょう。
どうやら四倉村のような田舎(もっとも日本のどこかは不明ですが)では、今現在の我々の世界とさして変わらない道路事情なようです。
ではほかの地方、たとえば御殿場や鬼振村にも彼らは出動しています。
そこではどうでしょうか?
TV版5話「レイバーX10」での描写を見ると、レイバーキャリアは1車線にすっぽり収まっていました(余裕はありませんが)。それを証拠に、ミニパトが2台並走できるほど道幅が広くなってました。どうやらパトレイバーの世界の静岡県は道幅がレイバーキャリア仕様なようです。
東京から御殿場ICまでの高速道路(東名高速道路だと思われる)でも、レイバーキャリアはすっぽり1車線に収まっていました。高速道路は一般道に比べ、広めに幅員をとっているそうですから、これは納得ですね。おそらくは、レイバーの移動に多くつかわれており、改修工事もしくは第二東名高速のような新規につくられた高速道路なのかもしれません。
パトレイバー、特にTV放送と後期OVAの世界は好景気な雰囲気があり、そういう可能性が大いにあります。
鬼振村はどうでしょう。
田んぼのあぜ道ですが、レイバーキャリアはぎりぎりですが脱輪することなく走っています。
四倉村よりも田舎な印象ですが、そこの田んぼのあぜ道はレイバーキャリア対応なようです。
これはおそらく、豊作くんのような農業用レイバーが移動することを考慮しているのでしょう。
実際、犯人のレイバーが豊作くんでした。その点を考えると、農業が盛んな田舎の方が道幅は広く取られている可能性があります。
他にも札幌にも出動しているのですが、そこではレイバーキャリアが走るシーンがないので何とも言えませんね。
一方、しょっちゅう走っている東京都内はどうでしょうか?
たいていのシーンではレイバーキャリアは1車線まるまる使用していました。
あるときは、キャリアを斜めにして、逃走車両をブロックすることもしていました(TV37話「安心売ります」)から、都内の道はかなりレイバー対応になっているようです。
これはみなさん想像がつくかと思いますが、バビロンプロジェクトでの建設需要や東京南沖大地震の被害で都内の道路や街が再整備されたなどの要因が考えられます。
このように、パトレイバーの世界の道路インフラは四倉村のような寒村を除けば、大まかレイバーキャリアのような大型車に十分に対応している余裕あるインフラが整っているようです。
このように、レイバーキャリアの車幅というマニアックな視点から世界観について考察できちゃう機動警察パトレイバー。
これは、パトレイバーの魅力であると思うのです。
汎用多足歩行型作業機械、通称レイバーという土木作業機械が普及したことで、社会インフラやライフスタイルまで変えてしまう。
レイバー産業という新たな産業分野が生まれ、それを使用し建設業界では作業方法が変わり、軍事では戦い方が変わり、農作業が変わり、犯罪の手段が変わり、警察の組織が変わり、時にあの筋の方のコレクションの対象になり、レイバー保険という新たな商品が生まれ、レイバー操縦免許が生まれるという社会の変化が見て取れる世界観の奥深さが機動警察パトレイバーの魅力でしょう。
これは、現実世界における携帯電話やインターネットの普及が新たなビジネスを生み出し、ライフスタイルにも影響を与えていることに共通しているように思う。
レイバー産業の新型レイバー開発競争やレイバー保険、建設現場や空港、時にTV局のスタジオで実際に作業するレイバーを描くなど、描かなくても支障がないものを描くことがパトレイバーの面白さの一つなのではないでしょうか。
これは、機動戦士ガンダム(ジオンの前線の兵士が地球は虫が多いとぼやくとか塩がないなど)や新世紀エヴァンゲリオン(第三新東京市の住民がシェルターに避難するシーンなど)に共通しているように思います。
皆さんも、パトレイバーを見るときはレイバーキャリアの車幅に注目してご覧になると面白いですよ。