なんてことない日々…

何気ない日々の出来事や趣味のお話をしてみたいな♪
あと、いつも作ってる簡単手抜きレシピとか(笑)

文学少女と飢え渇く幽霊(ゴースト)

2009年12月25日 | 本のこと

【著者】 野村 美月

【イラスト】 竹岡 美穂

【内容】 文芸部部長・天野遠子。自称“文学少女”。
     彼女は、実は食べ物の代わりに物語を食べる妖怪だ。
     彼女の後輩・井上心葉は、常に彼女に振り回され、
     「おやつ」を書かされている。
     そんなある日、文芸部の「恋の相談ポスト」に「憎い」
     「幽霊が」などと書かれた紙片や、数字を書き連ねた
     謎の紙が投げ込まれる。文芸部への挑戦だと、
     心葉を巻き込んで調査をはじめる遠子だが、
     見つけた「犯人」は、「わたし、もう死んでるの」と笑う少女で!?
     学園ミステリー、ビター&スイートな第2弾!

 

 

今回のネタ本は、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』が題材です。

愛することにひたむきで、臆病で、正直で、我侭な、そんな
弱い人々のそれぞれの心のすれ違いから生まれる悲劇・・・

過去からずっと紡がれてきた憎しみ(愛情)の連鎖。
それに振り回されながら、やはりひたむきに愛を貫く少女。

もっと素直に相手に想いを伝えられていたなら・・・
もう少し相手の気持ちを理解するキャパがあれば・・・
逃れられない運命と諦めていなければ・・・
こんな悲劇は生まれなかったのに。


ずっと裏切られたのだと、復讐心にとらわれてしまった男。
復讐の餌食にされた少女。
しかし、それでも愛おしいと・・・誰よりも大切だと・・・
他には何を失ってもいいと願うほどのひたむきな愛が
切なくて、苦しくて・・・


愛しているからこそ言えない事もある。
でも、相手にはそれが伝わらない。
伝わらなくても良い。それが自分の究極の愛の証。
だけど、それは相手にとっては裏切りに相当するほどの屈辱。

愛しているからこそ選んだ道だったはずなのに・・・
それが彼らを、そしてその子供達をも苦しめる。


そんな憎しみに絡めとられ、雁字搦めに縛られた
彼らの暗く沈んだ心に、天野遠子が優しく光をともす。

暖かくて、優しくて、懐かしくて、柔らかな・・・

今まで地獄だと思っていた風景が、
瞬間、色鮮やかな愛のあふれる風景に変わる。
憎しみを愛情に変えていく。
悲しみを優しさに変えていく。
痛みを暖かさに変えていく・・・
そんな遠子マジックに、今回もドップリと嵌りました♪

読んでいて本当に涙が止まらなくなりました。
こんなふうにひたむきに人を愛せたら・・・
こんなにも真っ直ぐに思いを貫けたなら・・・
不器用だけど深い愛に涙があふれる。

ほんの少し、環境が違ったなら、
ほんの少し、自分の想いを口に出していたなら、
ほんの少し、相手を思いやることが出来たなら・・・
小さなすれ違いが心にヒリヒリと擦り傷をつけていく。

もっと素直になりたい。
もっと優しくなりたい。
もっと大きくなりたい・・・柔らかく包み込むことが出来るように。