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ドイツ次期政権を待ち受けるメルケルの置き土産「原発容認vs.反原発」の戦い
ドイツ次期政権を待ち受けるメルケルの置き土産「原発容認vs.反原発」の戦い 肝心のメルケル氏はもういない - ライブドアニュース
左派政権成立の先
9月26日の連邦議会選挙で、社民党(SPD)が25.7%で首位に立ち、CDU/CSUが24.1%になった時、どちらが政権を取るかは連立次第というスリリングな気運が満ちていた。
ところが、蓋を開けてみたらCDUの崩壊度は凄まじく、とても政権を担当できるような状態ではなかった。責任のなすりつけあい、仲間割れと、放漫経営で破産した会社の残務整理中のバトルを見るかのような混乱ぶりだ。
党首のラシェット氏は、敗北の全責任を押し付けられた形で早々と辞任に追い込まれたが、まだ後任さえ決まらない。とりあえず意気軒昂なのは青年部だけ。それにしても、このボロボロ状態をよくも今まで隠し通せていたことだと、皆が呆れ返っている。
常識で考えれば、この責任はたった9ヵ月しか党首を務めていないラシェット氏でも、その前に1年ほど不運の党首だったクランプ-カレンバウアー氏でもなく、2000年より18年間党首だったメルケル首相にありそうだが、不思議にも主要メディアからそういう声は上がらない。
それどころか、メルケル首相は自党の混乱などどこ吹く風で、現在、ロシア、イタリア、イスラエル、イギリス、トルコ、ポーランドなどを矢継ぎ早にお別れ訪問し、スペインでは勲章までもらった。そして、ほとんどの主要メディアがそれらを逐次、好意的に報道している。メルケル氏はいまだにアンタッチャブルである。
一方、社民党は、緑の党、自民党(FDP)との予備協議を終え、まもなく正式協議に入る予定。政策の調整が順調にいけば、今年中にドイツには社民党の(中道)左派政権が成立する。
ただ、社民党と緑の党は左派としてまとまりやすいが、自民党はかなり主張が異なるため、どのように落とし所を見つけて3党合意に漕ぎ着けるのかが注目されている。
そんな矢先、自民党の持ち出す連立の条件に、「原子力発電所の稼働延長」が入っているらしいという噂が流れている。
「脱原発」後の電力需給
ドイツは、2011年の福島第一原発の事故の後、メルケル氏のほぼ独断で原発の停止時期を大幅に早めた。ちなみに、40年来、脱原発を主張していたのは社民党で、それをさらに過激にしたのが緑の党だったが、最終的に実行したのが、それまで原発容認を主張していたCDUという構図だったわけだ。そして、その原発停止のリミットが2022年と、来年に迫っている。
現在の計画通りなら、今年の終わりに3基、来年の終わりに残りの3基を止めて「脱原発」が完成する。しかも、ドイツは2030年までには石炭火力もすべて止める予定である(当初は2038年ということだったが、緑の党の強い圧力で2030年になる模様)。
減りつつある原発と石炭火力の穴埋めは、ガス火力が引き受ける。24時間フル回転でベースロード電源を担っている原発の代わりは、再エネにはできないからだ。その他、太陽光や風力といった再エネのバックアップも、やはりガス火力に掛かってくる。
つまり、ドイツではこの10年間で、原発と石炭火力が減り、その代わりに太陽光、風力とガス火力の割合が伸びたが、これからその傾向がさらに強まるわけだ。ただ、当然のことながら、ガスは石炭・褐炭よりはクリーンだとはいえ、CO2は出るので、CO2フリーの原発をガス火力に置き換えている限り、ドイツのCO2は減らない。
そして、そのガスの価格が、現在跳ね上がっている。カーボンニュートラルのプレッシャーが増し、世界各地で石炭からガスへのシフトが起こっていることや、また、ヨーロッパ全体で凪が続いたため風力電気が欠如したことなどが原因だ。プーチン大統領がガスを出し渋っているという説もある。しかし、ロシアからヨーロッパへは、現在、契約量以上のガスが供給されているし、その値段はスポット価格よりも安い。
いずれにせよ、需要が供給に追いつかないのが現状で、英国のガスの値段は今年の初めから9月の半ばまでで250%も上がった。8月から1ヵ月半だけで70%増という常軌を逸した上がり方だ。
また、スペイン・ポルトガル電力共通市場のスポット相場も、10月15日時点で1年前と比べて約6倍の水準だという。AP通信によると、9月時点で家庭向け料金は前年比で35%高くなっている。
ドイツもその例に漏れず、物価の上昇は電気やガソリンだけでなく、食料品や日用品などにも及んでおり、インフレならぬ、ガスフレなどという新造語まで飛び交っている。
さて、こういう状況下でドイツの抱えている最大の問題は、今年最後の日に3基の原発を止めなければならないことだ。そうなると、不足したベースロード電源を引き受けるため、来年からはドイツのガス需要がさらに増える。しかも、1月といえば、極寒の時期だ。つまり、一歩間違うとブラックアウトという危険までが浮上してきた。
自民党が「稼働延長」を取り出したら
実は、脱原発で電力の安定供給が崩れる危険というのは、今、出てきた話ではない。
電力供給の責任者は、10年間ずっと警告を発し続けてきた。しかし、原発嫌いのドイツ国民は聞く耳を持たず、脱原発は倫理的に正しいと胸を張り、メディアはそれを礼賛(日本メディアも!)。「脱原発」を掲げた政治家が、ポピュリズムの最先端を肩で風を切って進んだ。
唯一、ドイツで脱原発の無謀さを堂々と主張していたのはAfD(ドイツのための選択肢)だったが、AfDはどのみちあらゆる政治家とメディアから攻撃を受けている政党だ。脱原発の無謀さを説いても、「またAfDが良からぬことを言っている」と思われて終りだった。
ただ、その中で、実は自民党も、原発の必要性を認識していたと思われる。言葉の端々にそれが現れることがよくあったが、しかし、ドイツには、それを堂々と口にできる土壌が皆無だった。下手に口に出すと票を失う。あるいは、「AfDと同じじゃないか」と言われては、大きなマイナスだ。
だから結局、皆で危険は無視したままここまできてしまったわけだが、今ようやく、ブラックアウトが現実味を帯びてきたのを見て、自民党が「稼働延長」を取り出しても不思議ではないかもしれない。
現在残っている6基の原発はコンディション良好で、まだまだ運転を継続できる状態だという。これを動かせば、ガスに比べて膨大なCO2を削減することもできるし、また、現在すでに50%を超えてしまっているロシアガスへのさらなる依存も軽減できるだろう。もちろん、電気料金やガソリン価格も下がるだろう。
ただ、もし、本当に自民党が声を上げ、国民の意見が変化し、原発の稼働延長に「ノー」を言わなくなったとしたら、袋小路にはまり込むのは緑の党だ。「原発も火力も要らない。ドイツの電気は再エネで賄える」という主張を曲げるのは、ほとんど自殺行為に等しい。かといって、主張を貫けば、自国をブラックアウトに導くことになるかもしれない。
メルケル政権が積み上げた瓦礫の山
原発容認vs.反原発の戦いは、ドイツ国内だけでなく、EUでも炸裂している。
10月11日、フランスはチェコと共に原発建設促進のための「共同宣言」を発表。政府や民間の投資を、再エネだけではなく、原発にも呼び込むことが目的だ。この動きには、その他8ヵ国のEU国が賛同している。ほとんどが、EUの過度なカーボンニュートラル政策に懐疑的な東欧の国々である。
それに対してドイツの環境大臣はこれまで、「原発は超危険テクノロジーだが、風力は危険ではない。この違いを考慮するべき」として、原発をEUのグリーン・リストに入れることに真っ向から反対してきた。それどころか同大臣は、風車をドイツ国土の立てられるところには隈なく立てろとか、新築の建造物には太陽光パネルの設置を義務化すべきなどと主張していた人だ。
ただ、エネルギーの高騰は、各国首脳の考えを急速に変えさせている。電力不足には、再エネ原理主義では太刀打ちできない。英国は、電力確保のため、大慌てで石炭火力を再稼働させ、原発の新設まで考え始めた。岸田首相は産油国に増産を促すという。そんな中で開催となる11月の英グラスゴーのCOP26では、各国の環境大臣は何を主張するのだろう。
現在ドイツでは、社民党が次期政権奪取を目前に高揚しているが、彼らが引き受けようとしているのは、メルケル政権が16年掛かって積み上げた瓦礫の山だ。エネルギー政策しかり、難民政策しかり。修復はよほど覚悟して取り掛からないと失敗するだろう。
風運急を告げるドイツ。しかし、肝心のメルケル氏はまだドイツの首相であるはずなのに、すでに雲隠れしてしまっている。
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