<正論>動物行動学からみたトランプ氏 エッセイスト、動物行動学研究家・竹内久美子

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<正論>動物行動学からみたトランプ氏 エッセイスト、動物行動学研究家・竹内久美子

もし」から「ほぼトラ」へ

この数カ月というもの、「もしトラ」なる言葉をよく耳にした。私はてっきり、「もしトランプ氏が大統領に返り咲いたなら、米国は、ひいては世界はこんなにもよくなる」という意味だろうと思っていたら、なんと、「もしトラ」に続くのはたいていの場合、否定的な言葉だ。

3月5日、米国は11月の大統領選に向けて予備選などが集中する、いわゆるスーパーチューズデーを迎えた。共和党ではトランプ氏が15州中14州で勝利し、対抗馬であるヘイリー元国連大使は、共和党予備選からの撤退を表明。トランプ氏は事実上の共和党大統領候補となった。

これを受けて世間は「もしトラ」から「ほぼトラ」になったと騒ぐ。まだ大統領に決まったわけではないのに、まるで世界を脅かす悪者が、米大統領になったかのように危機感をあおっているようにみえる。

結局、「もし」「ほぼ」のどちらの言い回しも、トランプ氏に大統領になってほしくない勢力によるプロパガンダ(宣伝)のようにみえる。

トランプ氏は2016年の大統領選に勝利する前後からメディアのネガティブキャンペーンに晒(さら)されてきた。

粗野で短気で尊大な人物などという印象操作だ。

大統領就任後も、たとえば17年11月にトランプ氏が大統領として来日した際のことだ。東京・元赤坂の迎賓館の池のコイにエサをやるトランプ氏がエサ箱をひっくり返し、いっぺんに大量に与えるという短気極まりない人物であるかのような写真が報道された。

ところが実際には、箱からスプーンですくって与えていたが、その場にいた安倍晋三首相が、秘書から時間が押しているとの報告を受け、急ぎ箱をひっくり返して与えた。トランプ氏もそれに倣っただけの話である。

実はこの来日時、彼は北朝鮮による拉致被害者家族17人と面会し、安倍氏と協力してこの問題に取り組むことを表明している。こんな真摯(しんし)で誠実な米大統領がかつていただろうか。

私がトランプ氏を支持するのは、このような当たり前の心、人間として当然の心を持ちつつ政治に携わっているからである。それは彼が、ウォール街の金融家から献金を受けるなどの縛りがあまりないからで、大富豪であればこそ実現する話であろう。

私が注目したいのは

経営の世界、政治の世界での成功と並んで私がトランプ氏に注目したいのは、繁殖の世界での大成功である。彼は3度の結婚によってそれぞれ3人、1人、1人の子を得ている。しかも奥さんはすべてモデルという華やかさだ。

いわゆるトロフィーワイフをとっかえひっかえ妻にしてきた男という印象だが、少なくとも現在の夫人であるメラニアさんについては、ただのトロフィーワイフではないことがわかる。頭の良さ、性格の良さ、思慮深さが行動の端々からうかがえるのだ。

考えてもみれば夫婦は似たもの同士でつがうというのが基本である。似ているのは顔やスタイルなどの外見もさることながら、物の考えかたや学力までも含まれる。

大リーグ、ドジャースの公式SNSで大谷翔平選手と奥さまの写真が公開されたが、顔と笑顔、身長のつりあいなどあまりの似方に皆納得するしかなかっただろう。そんなわけでトランプ氏の歴代の夫人たちも、トランプ氏と同様の知性の持ち主だったと推測する。

ではなぜトランプ氏が同じ夫人と添い遂げず、3度も結婚したか。これこそが氏の繁殖成功の最大のポイントだ。

もし最初の夫人と生涯にわたって仲良く添い遂げたなら、子は3人で終わっていたに違いない。しかし2番目、3番目の妻を得、それぞれ1人ずつの子を得た。そうして子の数を5人に増やしただけでなく、遺伝的バリエーションをつけた。ここが最も重要な点だ。

もしただ1人の妻の間に5人の子をもうけていたらどうか。何らかの伝染病がはやったとき、遺伝的にバリエーションがないと全員が助からないという可能性がある。しかし子に遺伝的バリエーションをつけていれば、少なくともその危険性は避けられるのだ。

「常識」が左右する世界

一夫多妻が許される社会であれば、トランプ氏のような富豪は同時に複数の妻を持っただろう。しかし一夫一妻しか許されていない社会では、結婚、離婚を繰り返す、シリアルモノガミー(連続的一夫一妻)が子に遺伝的バリエーションをつけるためのとっておきの方法だ。トランプ氏は経済的、政治的に成功するだけでなく、このような意味で繁殖にも成功しているのである。

トランプ氏はただの粗暴で特殊な人物なのか。トランプ氏のようなリーダーとどう向き合うか。力がものを言う厳しい国際社会で、日本には平和ボケから覚め、常識ある自律した戦略が問われているように思う。(たけうち くみこ)

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