加計騒動・やっぱり官邸より文科省の方がよっぽど「問題アリ」

告示で門前払いにしているのは、そもそも法に違反している。役所にそんな権限はない!  これは よく指摘してくれました

長谷川 幸洋

加計騒動・やっぱり文科省の方が問題アリ!
トンデモ言い分・責任逃れを許していいのか 

「告示」という奇妙なルール

加計学園問題がくすぶっている。真偽が定かでない文書問題とは別に、いくつかの論点については安倍晋三政権が今後、しっかり対応する必要がある。正すべきは文部科学省の専横と責任逃れの姿勢だ。

まずは、文科省が獣医学部などの新設を「告示」で門前払いしている問題である。加計学園が愛媛県今治市に獣医学部を設置できるからといって、文科省のトンデモ規制が消えてなくなったわけではない。それはいまも残っている。

文科省が獣医学部の新設を告示で門前払いしていた事実は、「現代ビジネス」の同僚筆者である高橋洋一さんが繰り返し指摘してきたように、2016年9月16日の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)のヒアリング議事録で浮かび上がった(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h28/shouchou/160916_gijiyoushi_2.pdf)。

そこで、文科省の担当者は「(獣医学部の)設置等に係る認可基準という文部科学省の告示の第1条第4号で、獣医師の養成に係る大学等の設置もしくは主要定員増は除外されている」と説明している(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h28/shouchou/160916_shiryou_s_2_3.pdf)。

「除外されている」というのは「審査する以前で門前払いしている」という意味だ。私はそんな具合になっているとは知らなかった。それも獣医学部だけではない。歯科医師と船舶職員を養成する大学、それに医師を養成する大学、つまり医学部も同様なのだ。

告示の名称は「大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準」である。これだけ読めば「これこれの条件を満たせば認可する、満たさなければ認可しない」という話かと思ってしまう。

ところが獣医学部や歯学部、医学部については、わざわざ別立てにしていて、最初から認可対象にしていない。なぜそうなのか、理由も説明していない。おそらく、ほとんどの読者も知らないだろう。これこそが大学設置をめぐる許認可行政の真の問題と私は思う。

法律でもないのに、なぜ?

そもそも告示とは何か。憲法や法律、その下の政省令までは法令だが、さらに下の通達や告示は法令ではない。言ってみれば、役所の国民に対する「お知らせ」のようなものだhttp://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201209_11.pdf)。

つまり、文科省は役所の勝手な判断で「とにかくダメ」と言ってきた。大本である学校教育法や関係政省令をすっ飛ばして、告示で門前払いにしているのは、高橋さんも指摘しているように、そもそも法に違反している。役所にそんな権限はない。

日本では、こういう例が山ほどある。法律が規制していないのに、国民の目が届きにくい通達や告示といった手段で役所が実質的に強い規制を課しているのだ。

問題の告示は国家戦略特区の導入によって「特区に認定された地域については適用しない」という新たな告示が出て、特区については帳消しになったhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/170120goudoukuikikaigi/sankou3.pdf)。だが、特区以外は以前のままだ

最低の仕事

そもそも告示という手段を残していいのか。私は文科省告示第4号の規定を廃止すべきであると思う。理由は簡単だ。学校教育法は「大学の設置は文科相の定める設置基準に従って、これを設置しなければならない」(第3条)と定めているからだ。

つまり、法は「設置基準に従って設置しなさい」と言っているのであって「設置してはいけない」とは言っていない。文科省が獣医学部や歯学部、医学部などについて認可基準が必要というなら、合理的な理由とともに基準を明示すべきである。これが1点。

文科省は獣医学部の需要見通しについて農林水産省に丸投げしていた実態も明らかになった。高橋さんも書いているが、2015年6月8日の国家戦略特区WGのヒアリングで、原英史委員が文科省担当者に対して(需要見通しを提示するのは本来、許認可権限を持つ文科省の仕事なのだから、農水省に丸投げしているのは)「挙証責任がひっくり返っている」と指摘していた(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/150608_gijiyoushi_02.pdf)。まったく原委員の指摘通りである。

これは閣議決定で決まった話でもある。日本再興戦略改訂2015(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0630/shiryo_02-1.pdf)は次のように書いている(原文の121ページ)。

獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討

・現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。

ここには「文科省が検討する」とは書かれていない。だが、文科省の仕事である。私が高橋さんに確かめたところ「役人なら、閣議決定で決まった話をどの役所がいつまでに責任をもって実行するかはだれでも分かる」のだそうだ。

マスコミがきちんと指摘すべきだ

実際、文科省が出している閣議決定資料には「関連部分抜粋」として書かれているのだから、文科省自身が当然「ここは自分たちの仕事」と認識していると分かる(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu22/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/09/02/1361479_14.pdf)。

つまり、文科省は挙証責任が「農水省にある」と言い、前川喜平・前文部事務次官も会見で「農水省が作ってくれなかった」などと発言したが、実は「自分たちの仕事」と分かっていて責任逃れしているのだ。

こんな事態を放置すれば、閣議決定が空文化しかねない。分かっていながら開き直っているのだから、役所としては最低である。放置すれば、また同じような事態が起きるだろう。ここも政権としてきちんと対応すべきである。これが2点目。

このあたりは本来、マスコミがきちんと指摘すべき話でもある。

残念ながら、私を含めて素人には、なかなか閣議決定の裏側をそこまで読めない。「本年度内に検討する」という部分も「文科省が2016年3月末までに検討しなければならない」と読み込めないのだ。単に検討すればいいのか、と思ってしまい、本年度内に検討が終わらなかったら文科省の負け、とまでは考えが及ばない。

マスコミはよく「政府を監視するのが役割」というが、本来はこういう文書をしっかり読み込んで「だれがサボっているのか」を見極めるのが仕事であるはずだ。

一連の文書問題でも「執筆者が課長補佐」という点で信頼性を疑うべきではないか。総理から直接話を聞いたわけでもない課長補佐が「総理の意向」などと書いたとしても、そもそも伝聞か推測である。それで政権を批判しても、残念ながら詰めが甘い。

いまからでも遅くはないから、ぜひしっかり文科省を監視してもらいたい 

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