花粉症の薬、安易に服用し続けることのリスク「急に乱暴に」「認知機能低下」の例も

 
女性セブン2023年2月16日号

花粉症の薬、安易に服用し続けることのリスク「急に乱暴に」「認知機能低下」の例も

1月末に10年に1度の最強寒波が列島を襲った。しかし、すでに「春の使者」に悩まされ始める人が出ている。「花粉」だ。花粉症のピークは例年2〜4月で、2月上旬に九州から飛散が始まるパターンがほとんど。だが、今年は様子が異なる。気象総合サイト「ウェザーニュース」が全国の約7000人を対象にした調査で、今年は1月中旬から花粉症の人の3割以上が「花粉を感じている」と回答したのだ。

しかも、それは序章に過ぎない。スギ花粉は花粉症の原因の約7割を占め、多くの人を苦しめる元凶といえるが、今シーズン、スギ花粉の飛散量は過去10年で最多になる可能性が高い。

これは環境省が昨年11〜12月に34都府県で花粉生産能力のある林齢26〜60年のスギ林で雄花の芽を調査した結果で、関東や北陸、近畿、中国地方など多くの地域で過去10年の最大値が観測されている。昨夏は6月のうちから高温が続き、日照時間も長かったことでスギ雄花の量が増えたと考えられている。

 

ここ10年間で最大級の花粉量が襲ってくる。そう聞いただけで暗澹たる気持ちになる人は少なくないだろう。止まらない鼻水にくしゃみ、目のかゆみ、鼻づまり。すべてを投げ出したくなるようなつらい日々が、今年もやってくるのだから──。

◆のみ続けると認知症リスクが上がる

ひどい症状に見舞われると薬に頼りたくなる気持ちはよくわかるが、安易な服薬は危険だ。そう指摘するのは日本初の「薬やめる科」を開設した松田医院和漢堂院長の松田史彦さんだ。

「花粉症薬は市販薬であっても、長期にわたってのみ続けるのは危険です。目や鼻だけに効くわけではなく、脳をはじめとする全身に薬効が行き渡ってしまうからです」

この時期、ドラッグストアにはさまざまな花粉症の市販薬が並び、テレビCMもその名を連呼する。のめば苦しみから少しの間、逃れられることもあり手軽に使ってしまいがちだが、その花粉症薬で最悪、死ぬこともあるのだ。花粉症薬の副作用で苦しんだ兵庫県のA子さん(41才)が明かす。

「どちらかというとおっとりした性格なのですが、春になるとやたらとイライラして夫に暴言を吐いてしまっていました。夏になるとパタっと収まり、ものすごい後悔の念に襲われるのが毎年のパターン。ところが、たまたま別の病院で診てもらったときにその話をしたら、花粉症の薬が原因だと言われました。使っていた薬には精神錯乱の副作用があったのです」

A子さんは花粉症薬を別の薬に替えてもらい、以降はイライラに襲われることもなくなったという。そもそも花粉症になると体で何が起きるのか。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんが解説する。

「カギとなるのは免疫系を構成する細胞の1つで、全身の身体組織に分布する『肥満細胞』です。特に皮膚や肺、腸の粘膜に多く存在します。この肥満細胞がアレルギー反応や胃酸の分泌に関与する物質『ヒスタミン』を作ってしまう。

花粉はウイルスや菌と比べるとかなり大きいため、肥満細胞は大量にヒスタミンを出します。そのヒスタミンが目や鼻などの神経や血管を刺激し、かゆみや鼻水など不快な症状を引き起こすのです」(長澤さん・以下同)

 

そのヒスタミンを抑えるのが花粉症薬の主力である抗ヒスタミン薬。A子さんがのんでいた薬だ。

「抗ヒスタミン薬に含まれる『d-クロルフェニラミンマレイン酸塩』は神経の活性に影響を与えることがあり、副作用としてまれに精神錯乱を引き起こすとの報告がある。服用後、急に乱暴になった場合は抗ヒスタミン薬の副作用である可能性が考えられます」

第一世代(※1983年以前に発売された薬で、それ以降に発売された第二世代より効き目が強く、副作用も強い)の抗ヒスタミン薬はヒスタミンの分泌そのものを抑制するため、よく効くと感じる人が多い。だが、脳への影響が大きく、強い眠気が出たり、さらには認知機能を低下させるといった副作用もある。

脳の視床下部や脳下垂体という覚醒や睡眠を司る部位の伝達物質をヒスタミンが担っている関係で、ヒスタミンが減ると眠くなるのです。また、ヒスタミンは細胞間伝達物質であり、それが作られないよう薬でブロックすれば、当然ながら認知機能は落ちる。長期にわたってのみ続けると、認知症になるリスクがあります。これら第一世代の抗ヒスタミン薬は市販の花粉症薬のほか、総合感冒薬にも配合されています」

 

花粉症薬で夫が意外な副作用に襲われたというのは、神奈川県在住のB子さん(53才)だ。

「2才年上の夫は、特に持病もなく健康そのもの。ただ唯一、春先に起こす花粉症がひどいくらいでした。その夫が救急車を呼ぶ騒ぎを起こしました。なんと、おしっこが出なくなって苦しいというのです。脂汗をかいて苦しむ夫を前に、かなり動揺してしまいました」

長澤さんが説明する。

「これは尿閉という症状で、前立腺肥大症のある男性が抗ヒスタミン薬をのむと尿の通り道をふさいで排尿がしにくくなることがあります。抗ヒスタミン薬の持つ抗コリン作用が原因で、口の渇きや便秘を引き起こす場合がある。そのほか、眼圧の上昇を起こすこともあり、閉塞隅角緑内障の人は視覚に影響し、最悪の場合は失明することもあるので注意が必要です」

 

※女性セブン2023年2月16日号

 

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